第68話
俺はゆっくり街に戻りながら『鑑定』──いや、加護になった【
「なぁ、【
ピコンッ
『加護の簡易版であるスキルを持ってるだろ? お前が持っているスキルを私がサポートする感じだな。試さないとよくわからん』
やっぱスキルって加護の簡易版なんだ……。
「お前もよくわかんないの?! それより、スキルって加護より劣るのか?」
ピコンッ
『そんな事はないぞ? 加護は確かにスキルの寄せ集めみたいな物が多くて強力だ。しかし、それと似たような事も出来る。単独で使い勝手が悪いスキルでも組み合わせ次第では1つの加護より有用だったりするし、ユニークスキルに分類される物は加護並だな。加護に無い力も多いぞ?』
「マジかッ! これは俺の時代が来たなッ!」
スキルが【
ピコンッ
『お前の場合は何が当たるかわからんから強くなれるか不明だがな』
「水差すなよなッ! あと、加護って複数持つ事が出来るのか?」
それより気になる事を聞いておかなければ。
ピコンッ
『出来る。魂の器に余裕が無ければ体が弾け飛ぶがな。加護は魂に同化されるから自然に使う事が出来る。スキルは『アーカイブ』に保存されていて、そこから魂と接続する感じだから無理して使うと脳に負担がかかる。だが、私がいればこの間『幻影魔法』使った時みたいにフォローしてやれるから余程の無茶をしない無い限りは大丈夫だろう。これは余談だが──お前の元パーティメンバーは加護を複数持ってるぞ?』
こわッ! なら俺は加護を2つ持てるだけ魂に余裕があったわけか……。
スキルも一応リスクはあったんだな……まぁ、フォローしてくれるなら安心か……。
しかし──『慈愛の誓い』も複数持ちかよ!?
「加護の習得方法はあるのか? 【深淵】の1人と戦闘になったんだが、そいつは最低でも2つの加護を持ってたんだが?」
ピコンッ
『普通は生まれた時に何かしら与えられている。複数与えられる者もいるのも確かだ。ただ、目覚めるかどうかは本人次第だがな。成長途中で強い想いがあれば今回のように神からの気まぐれで贈られる事もあるし、ダンジョンの攻略ボーナスで貰える事もある。他にも習得する方法はあるぞ?』
マジかよ……じゃあ、加護の複数持ちも珍しくないのか?
それに加護無しと呼ばれてる人にも目覚めてないだけでちゃんとあるのか……。
もしかして、【絆】の連中が加護持ちばっかなのってフランがあのヤベェ加護で目覚めさせたのか?
「そうか……お前は自我のある加護みたいなもんなのか?」
ピコンッ
『……お前を助けた事でな……まぁ、元々仕事に飽きてたし丁度いいタイミングだった。お前が死んだ後は消えるだけだが、それも良かろう』
「なんか、すまんな……でもお陰でメリルちゃんは助かった。ありがとうな?」
ピコンッ
『ふん、別にお前の為にやったわけじゃないんだからねッ!』
「ツンデレがいる?!」
ピコンッ
『うっさいわ!』
「そういや、何で一人称が私なんだよ? 気持ち悪いぞ……」
ピコンッ
『言っておくが、私は女だからな?』
「女だと?! 文章から欠片も感じられないんだが?!」
ピコンッ
『失礼な奴だな』
「お前に言われたかねーよッ! 既に『鑑定』じゃないんだろ? スマートサポートとか呼びにくいんだが? 名前とかねぇの?」
ピコンッ
『……ミカとでも呼べ』
「……ミカね……」
なんか神様に仕える偉い天使様にそんな名前のやつがいた気がするが、気のせいだろう。
そんな奴が仕事サボって俺なんかとやり取りしてるわけないしな……それに俺のせいで今じゃ意識だけの存在になってるしな……。
ピコンッ
『おい、絶倫王。考え丸わかりだからな?』
「絶倫王言うなってッ! 俺は普通だッ!」
ピコンッ
『いやいや、お前のナニはもはや世界最強レベルだぞ? 誇れ、ドラゴン級のエルクよ』
「誰がドラゴン級やねんッ?! 俺のナニも普通じゃッ!」
ふと、気付けば──
子供の声が聞こえてきた。
「ねぇねぇ、ママ。あのお兄ちゃん、誰もいないのに誰かに話してるよ? 絶倫王って何? ナニが普通なの??」
しまった──既に街の中だった……。
周りの視線は俺に集中している。
「今聞いた事は忘れなさい。あの人はね……きっと女の子に振られて、頭の病気になったの……あんまり関わらない方が良いわ。さぁ行くわよ──」
子供の母親はそそくさとその場を去って行った。
とんでもない誤解を生んでしまった……。
周りの人達も──
「あいつのナニがドラゴン級だってよ……しかも絶倫か……」
「でも、女の子に振られたっぽいわよ? 夜が激しすぎたからかしら?」
「人は見かけによらないもんだな……」
「今はきっと振られたショックで幻覚見てんだよ……優しい目で見てやろうぜ?」
「「「そうだな」」」
とか言っている。
穴があったら入りたい……。
ピコンッ
『これだから揶揄うのはやめられんな! 頭の中で話せばいいのにわざわざ声に出すなよ(笑)ここから噂は広まり──お前の伝説が始まるッ!』
それ絶倫王の伝説だろうがッ!
いらねぇよッ!!!!
俺は『幻影魔法』で身を隠してその場を後にした──
◇◇◇
俺が孤児院に戻ると──
マイ、ティナ、アリア、ロッテが出迎えてくれた。
皆、一眠りして疲れが取れたようだった。
それに俺が元気になったと喜んでくれていた。
どうやら『鑑定』──いや、ミカの件で相当凹んで見えていたようだった。
ミカは俺を絶倫王と言う。だが、俺自身はそんなつもりはない。
だから気になったので皆に思い切って「俺は絶倫と知り合いから言われたんだが、そんな事はないよな?」と聞いてみた。
すると──
「「「絶倫です」」」
──その言葉で俺の時が一瞬止まった気がした。
ピコンッ
『諦めろ。見苦しいぞ?』
う、嘘だっ!
ほ、本当にこいつらも俺が絶倫だと思っているのか?
いや、待てよ。
まだアリアはわかる。抱いているからな……あの時はがむしゃらに抱いていたが、あれはフランの加護のせいだ。
マイやティナも『慈愛の誓い』との事を教えているから、そう勘違いしていてもおかしくはない。
ここで気になるのはロッテだ。
ロッテにはそんな話はしていないし、当然ながら抱いてもいない。
だが、そう思われているのは何故だ?
いや、今はそんな事より──
このままでは俺が『絶倫』のレッテルを貼られてしまう!
ちゃんと言っておかなければ──
「お前らよく聞けよ? 俺は絶倫ではない」
「あんなに熱く何回も抱いて下さったのに?」
「あれはフランの力だ」
まずはアリアを封殺する。
「エルク様は元パーティメンバーのハーレムで毎晩してましたよね?」
「毎日何十回も普通は出来ない。エル兄は間違いなく、絶倫。それは疑いようがない」
くッ、マイとティナからの反撃が来た。
だが──
「あれもいかがわしい薬や魔術を使われていただけだ。決して俺が絶倫というわけではない」
そう、俺は『慈愛の誓い』のメンバーが満足するまであらゆる手を使われていたのだ。
「しかし、エル君は私に『魔力譲渡』した時、硬いのが当たっていたのは気づいてますよ? その後に必ずトイレに行って抜いてましたよね? 何回も抜いてるのはわかっています。特有の匂いがしてましたから」
ガハッ
ロッテにトドメを刺された──
バレていたのか……。
ここで黙れば認める事になるッ!
「しかし、それだけで絶倫というのは早計ではなかろうか?!」
「普通は抜いて、あんな短時間で回復して勃ちません」
ピコンッ
『完全敗北ッ!』
「…………しばらく1人にしてくれないか?」
部屋から皆が出て行き、1人になった俺は四つん這いになる──
ピコンッ
『正真正銘の絶倫王だから安心しろ』
安心出来るかッ!
せめて女抱かせろよッ!
この魔契約なんとかしてくれッ!!!!
それなら絶倫王でも何でも構わんわッ!!!!
ピコンッ
『……さっき調べたが──これ解くの無理だぞ? まず、何重にも魔術式が組まれていて私でも骨が折れる。普通の人ではまず無理だ。そして、この契約を破れば──爵位持ちの大悪魔が現れる。更に言うと破った瞬間に契約を施した者が自動召喚されるな』
…………は?
なんかヤバい契約とは思ってたけど、爵位持ちの大悪魔が出てくんの?
しかも、これ契約施した人──ミゼリーさんも自動召喚されるとかどんなダメ押しだよ!?
『戦力が揃ったら契約を破ろう』計画が台無しじゃんッ!
ピコンッ
『まだ諦めるには早い。これを解くには術者本人が解除するか、ユニークスキル『解呪』で解除出来る。他にもダンジョンとかにそれと同じ効果のある魔道具があったりもする』
おぉ!? ナイスだッ!
ピコンッ
『だから、安心して絶倫王(極)になって──私を精一杯笑わせてくれ』
結局そこかよ!?
というか、骨が折れるぐらいって事は解除出来るんだろ!? お前が解除してくれよ?!
ピコンッ
『面倒臭いから断るッ!』
お前ってば、俺をサポートするのが仕事だよな!?
ピコンッ
『解除出来るのは以前の私ならって事だが? 今は厳しいぞ?』
期待させんじゃねぇよッ!!!!
その後、ミカと不毛な言い合いがしばらく続いた──
そして、その途中でギルマスが孤児院に訪れたと報告を受けた。
おそらく内容は謁見の件だろう。
さて、今後の話をするか──
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