第67話

 5日経ち、薬の作成と配布は順調に進んでいる。


 2日前にフランから薬が届いた。


 そして、回復した街の住人やスラムの住人から配るのを手伝いたいと言われたので、冒険者と同じように報酬を支払ってやってもらった。


 その事もあって、薬を配る人手が多くなり予定よりも大分早い速度で配れている。



 街を出歩く人が少しずつ増えてきた。それだけ、回復した人が多いのだろう。


 徐々に石化病の脅威は薄れてきた気がする。


 もう少し頑張れば日常が戻ってくるはずだ。



 日常と言えば、『鑑定』だ。


 スキルとしては使えるが──


 いつもの文字は出てこない。


 揶揄ったり、悪態をついたりしてきたが──なんやかんやで俺の為にアドバイスやヒント、情報をくれたりしてくれた。


 鬱陶しい事もあったが、毎日やり取りをしていただけにいなくなると寂しく感じるな……。


 意外と俺はあいつとやり取りするのが気に入ってたのかもしれない。


 やはり、メリルちゃんを救う時──上司に見つかって左遷させられたのだろうか?


 このまま現れないのだろうか?


 やっぱ、あいつがいねぇと調子が出ねぇな。


 それに俺のテンションと比例するかのように【祝福ログインボーナス】では5日連続でタオルしか当たっていないしな……。


 この間までかなり良い物が連続で当たった反動なのかもしれない。



 そして──


 それから更に5日経過した。


 街に以前の活気が戻って来た。今は昼だが、通常通り店が開き、笑顔で買い物をする人達で溢れている。


 先程、街全体に薬は配り終えた。感染者以外にも薬を配布しているから、発症したとしてもすぐに服薬出来る状態にしてある。


 余剰分の薬は用意しているから、仮に配布漏れがあったとしても十分対処可能のはずだ。再発の可能性もあるが、今の所その報告は無い。


 石化病は終息したとしても良いだろう。


 何かあった時の為に【絆】の構成員が指揮を取るように手配した。


 もう俺達が動く必要は無いだろう。


 やっと、俺達は激務から解放されたのだ。


 その事をさっきマイ、ティナ、アリア、ロッテに伝えたら大層喜んでいた。


 そして、緊張の糸が切れたようでそのまま倒れ込むように寝た。


 ちゃんと寝るように伝えてはいたが、皆無理していたのだろう。


 皆が寝ている間に俺はギルマスを孤児院に呼び出して、謁見の許可を取るように伝えた。


 これで後は貴族の情報収集とロッテを奴隷から解放するだけだな……。



 その後、孤児院を出て当てもなく歩いていると──


 気がつけば、以前ライクさんとメリルちゃんがいた花畑まで来ていた。


「あいつと最後にやり取りした場所だったな……」


 俺は仰向けに寝転がり──


「──『鑑定』、何か情報くれないか?」


 俺は最近の日課になった『鑑定』への呼びかけを行う。


 だが、文字の表示は無い。



 しかし、これで10日連続で『鑑定』と音信不通だ……。


 あれ以降も【祝福ログインボーナス】はタオルしか当たっていない……。


 さて、夕暮れだし帰るか──



 起きあがろうとすると、目の前に


祝福ログインボーナスをご利用頂きありがとうございます。今回特別に多くの命を救った報酬ボーナスが付与されます]


 ん?


 報酬ボーナスとかあるのか?


 でも、今はそんな事より──


「なぁ──『鑑定』でアドバイスくれてた奴はどうなったんだ?」


 あいつが気になる。聞くだけ無料ただだしな。教えてくれないかな?


 上司って、確かこの文字を表示させてる神様だったはずだしたな。



[禁則事項に触れた為、存在を消去されました]


 ……え?


 俺の為に動いたが為に消された?


 嘘…だろ……。


 あいつ左遷されるぐらいって言ってたじゃねえか……。


「……なんとかならないのか? あんた神様だろ? 俺の報酬ボーナス使ってくれてもいいからさ──なんとかしてくれよッ!!!!」


[手は尽くしましたが、残念ながら消去された存在を元に戻す事は不可能でした]


 それ以降──


 神様は文字を表示してくれなかった。



 俺は脱力する──



 まさか……こんな事になるなんて……。


 本当にいなくなったのか?


 俺の命を救う為に嘘を言ったのか?


 何でそもそも手を貸してくれたんだ?


 あいつは神様を上司と言っていた事から、それに類似する存在のはずだ。


 確かに暇潰しとは言っていたが、そこまでする義理はないはずだろ?


「──勝手にいなくなるなよな……お礼や謝罪すら言えないじゃねぇかよ……」


 どんな奴だって死ぬ時は簡単に死ぬ。


 それぐらいは知っている。嫌というほど経験してきたからな。


 だから後悔しないように精一杯できる事をしてきたつもりだ。


 今回の件だって、最初はスラムだけをなんとか出来れば良かった。全てを救うのは無理なのはわかっていたからな……。


 だが、俺に救う力──いや、救うがあったから行動しただけだ。


 それは『鑑定』がいたからだと言っても過言ではない。


 あいつがヒントをくれなかったら、今回の成功はなかっただろうし、【深淵】との戦いで俺は命を落としていただろう。


 それぐらいお世話になった。


 あいつこそが──


 今回、1番の功労者だ。



 だから礼ぐらいは言いたかった……。



 すまない────



 俺は心の中で謝罪する。



「今日は久しぶりに酒飲むか……」



 そう言いながら立ち上がると──


 目の前にルーレットが現れて回り出す──


 俺は何もしていない。


 そして──


高性能支援スマートサポート】』


 と文字が表示される──



 加護?


 こんなもんいらねぇよ……。



 どうせなら──



 ピコンッ


『いらねぇとか言うんじゃねぇよッ!』


「へ? お前……生きてたのかよッ!?」



 ピコンッ


『死んでたわッ! というか体がなくなったわッ! 生きてたら悪いのか!? どうせ私がいなくてピーピー泣いてたんだろ? この寂しがり屋の絶倫王めッ!』


 ぐぬぬ、こいつ……。


「……相変わらずのへらず口だな……だが、戻ってきてくれて嬉しいよ。俺にはやっぱお前が必要だ。よろしくな?」



 ピコンッ


『やけに素直じゃないか……まぁ、加護にされたお陰でこうやってまた会う事が出来たしな。お前が死ぬまで暇潰しさせてもらうさ』


「そっか……加護にされたお陰でこうやってまた会えたのか……暇潰しはいいが、ちゃんと助けてくれよ? 



 ピコンッ


『加護になった今なら禁則事項が多少緩和されてるからやりやすいし──それなりに助けてやるさ。



 こうして、俺に相棒が出来た──



 神様はあー言ってたけど、ちゃんと助けてくれてたんだな……。



 最高の報酬ボーナスだよ──



 ピコンッ


『そんで、助けた娘ちゃんはハーレム要員にしたのか? その為に命張って助けたんだろ? このロリコン』


 してるかッ!


 俺の感動を返してくれねッ!?

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