第64話

 俺はメリルちゃんに薬を飲ませる事に成功した。


 正直、『鑑定』のサポートは予想以上だった。


 俺の頭痛を和らげるだけでなく──


 俺が使う幻影よりも現実かと間違うぐらい遥かに完成度が高かった。


 話す内容や行動は『鑑定』から指示を受けていたが、声が事にも驚いた。


 それに話す内容もまるで──が話す内容だった。


 性別はわからんが『鑑定』もきっと親なのだろう──


 とか思っていたら、薬を飲むシリアスなシーンなのに突っ込みを頂いた。


『子持ちじゃねぇしッ! メリルの母親の魂と通信して、話す内容を聞いたのと、声を再現しただけだしッ! って、上司に見つかりそうだからまたな!』


 かなり良い仕事をしてくれたと思う。


 これがツンデレか! いや、違うか……。


『鑑定』がサポートをやめると頭痛が復活したので『幻影魔法』を解除する──


 メリルちゃんはかなり満足そうな顔をしていた。


「良い夢を──」


 俺は眠るメリルちゃんにそう声をかける。



 これで、ひと段落だな……後は帰って薬を作る作業に戻るか……。


「ライクさん、なんとか飲んで貰えました……」


 俺は驚いているライクさんにメリルちゃんを渡す。


「本当にありがとう。さっきのはエルクがやったのか?」


 さっきというのは『幻影魔法』の事だろう。


「そう、ですね。まぁ、加護みたいなものですよ。内緒にしといて下さいね」


「もちろんだ。加護は切り札だからな……。そんな加護が存在するとは……世の中は広いな……。それよりも──エルクはポックル草を集めていたが、もしかして薬を作る為だったのか? ギルドにはあれ以降来ていないと聞いたからな」


「そうですね。俺の仲間が薬を作れるので集めてました。出来れば今後、ポックル草を集めたら俺に売ってくれると助かります」


「お前はさっき無償で薬を配っていると言ったはずだ。それでは大損だろう。娘の恩人だ。無料ただで渡す。それぐらいはさせてくれ。お前は──王都を救うつもりなんだろ? 出来る事があるなら協力する」


「あー、それは助かります。じゃあ、ポックル草はこっちに回して下さい。他にも頼む事があるかもしれませんが、よろしくお願いします」


「わかった、何でも言ってくれ。借りは必ず返す」


 おぉ、是非とも返して頂こう。

 当面はポックル草の採取をしてもらうつもりだ。


 そして、ある程度薬の目処が立ったら、薬を配布する冒険者達の指揮を任せたいとこだな。


 ギルマスより、ライクさんの方が冒険者から信用ありそうだし、薬を配るのがスムーズになるだろう。


「俺の借りは高いですよ?」


「ふん、我が子の命よりは安いもんだ」



 その時、視界の片隅に距離はあるがマイが駆け寄ってくる姿が見えた。


「──どうやら仲間が来たようです。俺達はスラムにある孤児院にいますので、また明日にでも来て下さい」


「わかった。エルク──」


「何ですか?」


「俺はお前のを王城のパーティで聞いた事がある……お前と同じ名前の冒険者だ。最近そいつが死んだと聞いたが──」


 けっこう前にこの国の王城のパーティに参加した事がある。その時にライクさんはいたのだろう。


 これを言われるという事は──


『先見』のエルクだとほぼ確信しているはずだ。


 俺は人差し指を口の前に出して、内緒だとジェスチャーする。


「……無粋な事を聞いた。何か理由があるのだろう。絶対に他言しない事を約束しよう。それじゃあ、また明日会おう」


 ライクさんは盛大に勘違いしている気がする。


 何か理由があると言えば確かにあるが──それは『慈愛の誓い』から逃げるというだけの理由だから、そこまで深い意味はない。


 他言しないのは助かるけどな……。


「えぇ、また明日に。あ、メリルちゃん──大分弱ってたので、容体が変わったらさっき言った場所まで連れて来て下さいね? 優秀な薬師がいるから他より安心ですよ! 後、薬はライクさんもちゃんと飲んで下さいよ」


 ライクさんは了承し、お礼を告げるとメリルちゃんを抱き抱えて去って行く。



 すれ違いにマイが到着した。


「あの方々はお知り合いですか? 男の方は大事そうに子供を抱いていましたが……親子ですか?」


「すまんすまん、あの人が冒険者ギルドで情報をくれた人だ。親子で石化病になってたから薬を渡したんだ。助かって嬉しいんだろ……。ここにはマイ1人で来たのか? というかその手に込めた魔力はなんだ? 物騒過ぎるだろ……」


 簡単に説明したが、別に問題ないだろう。


 それよりも、マイの手に込めている魔力量が問題だ。


 この辺りを消滅させるぐらいの魔力が篭っている気がするぞ?


「なるほど。エルク様が血相を変えて街から出ていったとアリアさんに聞いたので追いかけて来ました。【深淵】とかいう組織の連中が現れたのかと思って、いつでも魔法を放てるように魔力を込めてました……子供がいなければ問答無用で放つ所でした……危なかったです……」


 …………怖いなッ!


「……つまり、アリアから聞いてここに来たのか。ティナは?」


「ティナちゃんはアリアさんの指示でロッテさんの護衛をしてもらっていますよ」


「そっか、なら早く戻らないとだな──ありゃ──」


 俺は立ち上がるが──


『幻影魔法』の負担が大きかったようで上手く立てずに倒れ込む。


「──エルク様ッ?!」


 マイは俺が倒れないように抱き抱えてくれる。


 俺はおっぱいに不時着した!


「……いや、加護を使った反動だろうな……ちょっと、無茶な使い方したからな……一旦、座らせてくれ……」


 頭痛は治まっているが、上手く体が動かせない。


 この感じだと、しばらくは無理かな……。



「おんぶしましょうか?」


「……いや、格好悪いからヤダ。少し休んでから帰る……」


「わかりました。では失礼して──」


「──?!」


「膝枕です♡ アリアさんは良くて、私はダメとかないですよね??」


 何故、膝枕された事を知っている!?


「はぁ……好きにしろ……どうせ動けんからな」


 俺は仕方ないな、という感じで言った。


 だが、内心では──


 むしろ、ありがとうございますッ!


 最高ですッ!


 もはや拝んでも良いぐらいですッ!



 ──と感謝の言葉でいっぱいだった。


 頑張ったご褒美というのはあるものなんだな……。


 ここで粗末ながら感想を言おうと思う。


 マイのふとももは細身のアリアよりも肉付きが良くて包まれるようだ。


 張りもあり、頭を動かせば程よい弾力がとても気持ちが良い。


 さ・ら・に・だッ!


 俺は仰向けなのだが夜空は全く見えずにの至近距離でマイのおっぱいが見えているッ!


 手を伸ばせば確実に持ち上げる事が可能──いや、揉めるだろう。


 欲を言えば──


 でサンドされたいッ!



 これはアリアではなし得ない事だ。別にアリアが劣るわけではない。



 だが、今はどうにかして、サンドされたい──


「エルク様いかがですか?」


「そうだな……膝枕は良い物だな。マイ、悪いが少しベルトを緩めてくれないか? 力が入らん」


 嘘だが、サンドされるにはこれしかあるまい。


「あ、わかりました──」


 マイはベルトに手を伸ばすと──


 むにょん、とおっぱいが俺の顔に当たる。


 ウオォォォォォォォッ!!!!


 ダブルむにょん頂きましたァァァッ!!!!


 おっぱいが口に当たっているから多少呼吸はしにくいが、それを凌駕する満足感があるッ!


 至福だ……これぞまさしく至福。


 しかし、ベルトは直ぐに緩められて至福の時間は数秒だった。



 だが、この数秒で俺は気付いた──



 マイのおっぱいが少し成長している事にッ!



 別にやましい意味で言っているわけではない。


 これは親が子の成長を喜ぶ気持ちと同じだ。


 ライクさんが守りたいと思った気持ちが少しわかった気がするなッ!


 そういえば、メリルちゃんに言った言葉の中に『』とあったが──


 あれはどういう意味なんだろうか?


 死んだら会える、いつも見守っている──ならまだ理解出来ない事もない。


 大きくなったら会えるものなのだろうか?


「マイ──大きくなったら母親に会えるものなのか?」


「ん?? 言ってる意味がよくわからないんですが……」


「あーすまん、唐突だったな。実はさっき──」


 メリルちゃんに薬を飲ませる時に言った言葉を告げる──


 俺が言ってる言葉なのに意味がわからず言った事になっているがそこら辺はスルーする。



 一通り話終わるとマイは口を開く──



「あー、なるほど。それならわかりますよ。メリルちゃんでしたっけ? お母さんと似てるんですよね? なら


「ん? どういう意味だ??」


「成長した姿が母親そっくりになるんですよ。母親の面影を自分に感じると言った方がいいかもしれませんね。いつか自分の姿を鏡とかで見た時に気付くと思います」


 ──?! そうか、そういう事か……だからと言ったのか……。


 おそらくだが、メリルちゃんがまた死にたいと思わないようにする為に言ったのだろう。


「そっか……母親って偉大だな……」


「私の親は私を売り払おうとしましたけどね?」


「そうだったな……失言だった。すまん」


「冗談です。でも、エルク様が言った言葉はメリルちゃんの生きる希望になったと思いますよ? 私がもし──子供を残して死んだなら、同じ事を言いそうです」


「そっか……」


「そうですよ」


 メリルちゃんの生きる希望になってたらいいな。



 しかし、おっぱいが目の前にあるからとても揉みたいな──

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