第61話

 俺はあの後、1号におんぶされて孤児院に戻ると──


 ティナはベッドに寝かされており、その横にマイとロッテが付き添っていた。


「エルク様ッ! ご無事ですか!?」


 俺に気付いたマイは心配そうに駆け寄ってきた。


「あぁ、なんとか敵は撃退してきたぞ? ロッテ、ティナの容体は?」


 ティナに使われたのは強力な麻痺毒だ。命には関わらないが、後遺症が心配だ。


「ティナちゃんに使われた毒は強力でしたが、既に解毒はしていますのでご安心して下さい。処置も早かったので後遺症を心配する程ではないです」


 ロッテのお陰でこっちもなんとかなったな。


「そうか、ロッテのお陰で助かった。ありがとうな。こっちもロッテを狙ってる奴はしばらく動けないはずだから安心しろ」


「すいません……私のせいで危険な目に合わせてしまって……」


「気にするな。ロッテがいないと街が救えないからな」


 確かにこの状況はロッテが招いてはいるが、腑に落ちない所がある。


 ロッテの奴隷落ちは他国の王子に毒を盛ったというのが理由だったはずだ。


 奴隷落ちした時には


 奴隷商の牢屋にいた時もそんな事を言っていたから間違いないだろう。


 街を救う為にはロッテ程有能で適任な薬師はいないだろう。


 俺なら間違いなく薬を作らせてから処罰を下す。


 王は石化病が流行っている事を知らなかったのか? それとも何か裏があるのか?



 そんな事を考えていると、ティナがベッドから起き上がる。


「ティナ、大丈夫か?」


「エル兄……足引っ張った……ごめん……」


 ティナに声をかけると、泣きそうにそう答える。


「何言ってんだ? 足は引っ張ってないぞ。今回は俺を庇ったせいで傷を受けたんだ。お陰で助かった。ありがとうな。不甲斐無い俺をこれからも助けてくれ」


 俺は頭を撫でながらお礼を伝える。


 俺が油断していた結果、ティナが傷ついたんだ。初めから『身体強化(極)』を使っていれば防げた可能性が高い。


 そうすればカインにもっと有利に立ち回れたはずだ。


 しばらく、日常が緩かったから危機感が薄れていた。


 これからは気をつけなければならない。


「エル兄……もっと私強くなる」


「そうだな。暇が出来たら皆で訓練をしよう。さて、もうすぐ朝だな……これからの予定を話す。皆聞いてくれ──」


 俺は予定を話していく──


 分身体にはポックル草の採取。


 俺とロッテは出来る所まで薬を作り続ける。俺なら魔力切れを起こしても『魔力自動回復』スキルの効果で休めば回復するからな。


 傷が酷かった俺は基本安静だからマイ達も素直に頷いてくれた。


 その他はスラムと街の住民に薬の配布だ。



 話を伝え終わると各自、行動に移す──



 俺とロッテも薬を作る準備を整える。


「ロッテ、頼んだぞ。街を救うんだ」


「はい! いっぱい抱きしめて下さいよ?」


「わ、わかった……」


 2号から報告にあった爆乳を触る事になるのか……。


 ロッテは薬を錬成していく──


「魔力をお願いします……」


「じゃあ、失礼して──」


 俺はロッテを前から抱きしめると──


 むにゅん、とおっぱいが顔に当たる。


 ロッテは俺より背が高い……なので爆乳は俺の顔を包み込んでいる。


 おっぱいに埋もれるという表現が1番しっくりくるだろうッ!


 あぁ、柔らかい……とても至福だ──


 でも息が出来ない……しかもロッテから「うぅん…あん、アッ──ひもち…良い…です……」とか喘ぎ声が聞こえてくるので変な気分にさせてくる。


「──ぷはッ、はい、終わり──」


 俺はなんとか平静を保つ事に成功する。


 俺は吸い付くようにくっ付くおっぱいから顔を離すとロッテが話しかけてきた──


「──あん♡ いけず……やはり、とても…良い……です──そのまま分身さんのようにおっぱい揉んだりしてくれても良いんですよ?」


 ──?!


 分身2号、お前なにしてんだよ!?


「へ? 分身がおっぱい揉んでたのか??」


「はい♡ それはもう赤ちゃんみたいに喜んでくれましたよ??」


 ……こっちはガチの赤ちゃんプレイしてるじゃん……。


「いや、さすがにそれは──」


 断ろうとすると、ロッテが話を遮る。


「──大丈夫です! 呪いの事情はお聞きしています。絶対に襲いません。気持ち良くても我慢します」


 いや、それ俺が我慢出来ねぇかもしれないじゃん!?


「いや、ダメだ。俺は紳士だからな。分身とは違う。次は背後から抱きつく事にする」


 分身も俺だから、その行動を取ったのは理解出来る。だが、本体である俺は魔契約がある。


 絶対に過ちは犯せない。


「そ、そんな……」


 ロッテは悲しそうな表情をしているが、これは仕方ない事だ。


 本当は俺だって爆乳を揉みまくったり、パフパフしたり、挟んだりしてみたいさッ!


「とりあえず今は薬を作ってくれ……」


「──完成しましたッ! 強く抱きしめて下さいよ?」


 作るの早ッ!?


「わかった──」


 俺はロッテの後ろから抱きつく──


 ふぉッ?!


 あーあかん、これあかんやつや……。


 まずロッテは体を鍛えていないせいか、とても体が柔らかい。


 そして、俺の腕は前に回しているのだが──完全におっぱいに触れている。というか埋もれている。いつでも揉める位置に手がある。


 しかも、更に不味い事に──


 後ろから抱きついたせいで、ロッテの柔らかいが俺のナニにジャストフィットしている。


 まるで後ろから立ってヤってるみたいになっている。


 まさかこんな罠があるとは……不覚だ。


 動かしたら俺の下半身が暴発するかもしれん……。



 これは理性との戦いになりそうだ────




 俺は夕方までひたすら薬を作り続けた。


 これは余談だが、マイ達は俺が手を出していないか確認する為に薬を頻繁に回収しに来ていた。



 ────


 ────────


 ────────────



 夕方になり、俺達は一旦休憩する事にした。ロッテはさすがに疲れたのか爆睡している。


 俺は現在はの為に外にいる。


 今日ほど、魔力が枯渇するのを望んだ日はないだろう……『魔力自動回復』で魔力が中々尽きないせいでロッテを抱きしめ続ける事になった……。


 それに分身体が次々と薬の材料を追加で持ってくるから終わりが来なかった……。



 なんとか俺はあの生殺しの状況を切り抜けた……俺の精神力を誰か褒めてくれ……。



 …………あれ?


 いつもならここらで『鑑定』が勝手に発動するんだが、ピコンッて音と文字が出ないな……。


 たぶん、仕事をしてるのかもしれんな。



 それより、もう限界だ……どこかで発散したい……。


 ちなみに俺のとある目的とはアリアの捜索だ。


 アリアを探して抜いて貰おうと思っている。



 さて、『マップ』を使うか──



 おっ、いたいた。けっこう近くにいるな。



 俺はアリアの元に向かうと──



「お願いします……薬を分けて下さい……お願いします……」


 と言いながら頭を地面に擦り付ける冒険者のギルドマスターがいた──


 ちなみにアリアはそのギルドマスターの頭を踏みつけている。



 …………これ──



 どんな状況だよ!?

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