第46話
全員が気絶した頃合いを見て、俺は『幻覚魔法』を使って、他の人にバレないように2人をギルドの外まで連れ出す。
「お前ら何してんの?」
とりあえず、2人に事情を聞く事にした。
「エルク様ッ! あの人達がいきなり私の胸を揉んで来たんです! 男の機能を失えば、こんな事をしないだろうという結論になりました!」
「そ、そうか」
俺はそれしか言葉が出なかった。
「マイ姉、まずは避けられないように手足を折る方が先決」
「ティナちゃんさすが! 次はそれで行くねッ!」
ティナも変なアドバイスするなよ……というか、受付嬢、止めろよッ!
まぁ、俺がやられるわけじゃねぇし、いいか……。
「エルク様の方は情報収集出来ましたか?」
「あぁ、既にギルドは動いている。緊急依頼で薬の薬草採取依頼が出ていたからな。それと──住民に発症している人がいるのも確認出来た。不味い状況だな」
「エル兄、それどこ情報?」
ティナはガセだと思っているのかもしれんな。
「Aランク冒険者からだな。その人の娘さんが『石化病』を発症しているようだ。会話の様子からおそらくギルドからは何も聞かされていない。ギルドに聞いても無駄だろうな」
「そう……エル兄はこれからどうするつもりなの?」
「とりあえず、これから戻ってアリアと情報のすり合わせをする。そして、明日からは俺達も緊急依頼を受ける予定だ。異論はあるか?」
「薬が足りてないんですか?」
「マイ、この街には数万という人達がいる。足りなくなる想定で動いた方がいいだろう」
2人は頷く。
俺達は一旦孤児院に戻る為に歩き出す。
俺はふと思う──
もしかして……ロッテってこの為に必要だったんじゃ……。
あいつって確か宮廷薬師だったよな?
仲間にしとけば良かったか?
いや、あんなヤバい奴はごめんだな。
まぁ、既に顔見知りになったんだし、最悪は優先的に薬を作ってもらえるように交渉するか。
◇◇◇
「──という感じだったな。既に感染はけっこう広がっているだろうと予想出来る。薬が確保出来るように【絆】が手配してるんだろ? どれぐらい入手出来る?」
現在、アリアが孤児院に戻ってきたので情報のすり合わせを行っている。
「やはり……相当不味いですね……。フラン様からはもしもの時用に薬は預かっているのですが、せいぜいスラムの子供達を救う程度の数だけです……」
「そうか。緊急依頼を受けた方が良さそうだな……フランに追加で薬を寄越すように連絡しといとくれ」
「わかりました。手配しておきます。採取依頼ですか…… それしか手がありませんね。薬草1つから作られる薬は5個ですから──現実的じゃありませんけど……何万という人が街にいますから……」
「まぁな……」
俺達でどうにかなるレベルじゃねぇな……。
「更に悪い報告があります」
「これ以上に悪い話があるのかよ……」
「えぇ、この間──薬草を調合する薬師ギルドが何者かに襲われて怪我人が出ている為、薬草を手に入れても調合する人手が足りません。既に貴族は薬を買い占めているようで市場に流れていないようです。おそらく、そのAランク冒険者の方も手に入らなかったのはそれが理由かと……」
「……最悪だな」
貴族はろくな事をしねぇな。
「不幸中の幸いは──私の集めた情報では従来の『石化病』よりも病状の進行が遅く、感染する人も体の弱い人ぐらいな事ぐらいな事ですね……まぁ、広がるのは時間の問題ですが……」
従来の病状の進行が遅い?
「そうか、なら手遅れになるまでになんとかしないとな。他に何か変わった事はなかったか? 何故『石化病』が流行っているかとか──調べたんだろ?」
俺が気になっているのは、何で『石化病』が流行っているのか? だ。
アリアの顔を見るに裏の情報網で何かを掴んでいる可能性がある。
「えぇ、──【深淵】が関与しています」
「……よりよって【深淵】かよ……何でだ? あいつらがここを襲う理由なんかねぇだろ……という事は──『病魔』のカインが関係してるのか?」
【深淵】は裏組織でも最悪な武闘集団だ。
構成員は少数精鋭で頭のネジがぶっ飛んでいるのが特徴だろう。
特に『病魔』のカインは殺しの依頼を受けると無差別に病気を蔓延させて殺す事で有名だ。
「間違いなく『病魔』が関係しています。どうやら──雇った側がニールソン王国の王子らしく、少し前にこの国の令嬢に目を付けてお見合いしたそうです。しかし、何かあったようで破談したと聞きました。その令嬢を殺す為に雇われたようです」
ん? なんか聞いた事がある話だな……そういやロッテから聞いたんだったな。
……なんか薬を盛ったとか言ってた記憶がある。
相手は貴族って聞いてたが──王子?
「ちなみにその令嬢の名前聞いてもいいか?」
「確か──ロッテとかいう名前でしたね」
あいつ、馬鹿じゃねぇの!?
王子相手に何してんだよ!?
「……ちなみにその王子ってどんな奴なんだ?」
「見た目は幼く見えるらしいですよ? あと、女癖が悪いらしく、女性が壊れるまで弄ぶ事で有名ですね……何があったかは知りませんが個人的には破談になって良かったと思いますよ? 今回の件は逆恨みみたいなものでしょう」
いや、逆恨みではないと思うぞ?
ピコンッ
『真実を知りたいか?』
何、その意味深な言い方……。
知りたいと言えば知りたい。何か解決の糸口になるかもしれんからな。
ピコンッ
『では教えましょう。今回のお見合いはニールソンの王子が一方的にロッテの爆乳を気に入って実現しました。脅しもあったようで受け入れるしかなかったようです。ロッテはお見合いとしか知らされていませんでした。元々はエルドラン側が用意していた使用人を使って破談させる予定だったんですが……ロッテが王子をロックオンした結果、暴走して薬を盛ったというところですね。結果的に破談になりましたが……』
つまり、ロッテは相手が王子と知らなかったのか?
それと、そこまでしてロッテを守りたかった理由があるのか?
ピコンッ
『ロッテはエルドラン国王の隠し子ですからね。加護の関係でマクマリーン家に養子になっています』
……知りたくなかった事情だな……。
つまり今回の件は──
ニールソン王国の王子がロッテの爆乳に惚れて、政治的な脅しをした結果、エルドラン王国はお見合いを受け入れた。
だが、エルドラン国王は隠し子であるロッテを噂の良くない王子に渡さないように破談させてやろうと画策する。
しかし、その王子がロッテの好みだったから、暴走して薬を盛ってしまった事により予想以上に酷い結果になったわけね……ロッテが王子だと知らなかったのもあるが……。
その結果、ニールソン側は激おこになって、【深淵】を雇った。
ロッテがやけに魔物に襲われていたのも【深淵】が関与しているなら納得出来る。
こんなくだらねぇ事に関係ない奴ら巻き込むなよなッ!
これ問題山積みじゃねぇか!?
ピコンッ
『そんなエルク君に朗報。今回の『石化病』は通常の『石化病』とは違う。敵の持ってる加護【病魔】が原因だ。これは自分が罹った事がある病気にさせる事が出来る凶悪な加護だが、欠点もある。オリジナルの病気よりも症状が軽く、感染力が低い事だ。薬も通常の半分もあれば助かるだろう。ちなみに元凶を殺せば広がった病気は消える。しかし、それまでに消える命があるのも事実だ。薬はあって損はない』
つまり、採取依頼をしつつ──『病魔』を殺せばいいか──
しかし、とんでもねぇ加護もあったもんだな。
まぁ、薬草1つにつき、5個の薬が出来て、その半分の量でいいなら──10人救える計算だな。作り手が足りていればなんとかなるか?
「アリア──お前は『病魔』の居所を探れ、奴を殺せば終息するはずだ」
「──!? わかりました。殺せば終息出来るですか?」
「奴の加護はそういう加護だからだ。もし殺せなかったら場合、『石化病』は広まるが──あいつの仕業なら薬は通常の半分で効果が出るはずだから倍の人を救えるはずだ」
「──エルク様……貴方はいったいどこまで知っているのですか? 『病魔』の加護は謎に包まれているのに……」
「まぁ──色々とな?」
「──エルク様……格好良いです……エルク様がいればなんとかなる気がします」
「なんとかしようぜ? 俺達なら出来るさ──!?」
俺が言い切る前にアリアは優しいキスをしてくる。
そのまま俺の唇を優しくはむはむしたり、舐めなたりしながらキスをしている。
ヤバい……我慢が出来ん……。
この誘われるようなキスのやり方……まさしくミランちゃんだ。
本当にアリアとミランちゃんは同一人物なんだな……。
アリアは俺のおでこにキスをして俺を見詰める。
「──惚れ直しました♡ 今から吸い付くしますね? 出たのは全部ごっくんします♡ 嫌なら言って下さいね? 初めてやるんですけど、自信あるんですよ?」
気遣いも出来てええ子や……是非溜まってる分を吸い出してほしい!
しかし──
「マイ達が近くにいるしバレるだろ……」
2人にバレたら特攻してきそうだ。
「シスターに子供達で足止めするように言ってますから大丈夫ですよ♪」
おぉ!? ナイスだッ!
「そうか……なら頼もうかな?」
「任せて下さい♡ あちらへ行きましょう♡」
アリアはベットに俺を誘う──
明日からは忙しくなる……今日ぐらいはゆっくりしても良いだろう……『石化病』も原因が判明し、対処も可能だとわかったしな。
とりあえず、やる事は──採取依頼、ロッテと会う、『病魔』カインの捜索と暗殺の3つだな。
ロッテとは出来れば会いたくないが、この状況だ……宮廷薬師だし、腕は良いはずだ。頑張ってもらおう。
というか、原因作った奴にはしっかり働いてもらわんとな……。
今日はもう何も考えずにアリアに気持ち良くしてもらうか──
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます