第42話

 ロッテは口を開く──


「…………実はお見合い相手がけっこう好みの方で……彼も私の胸に興味津々でした……」


 お互いに好印象だったという事だろう……お見合いとしては成功する部類だと思うんだがな……。


 男からしたらロッテの爆乳は揉みたくなるだろう。


 しかし、破談したという事はがあったんだろうな……。


「ふむふむ、破談になる理由がわかりませんね。何があったんですか?」


「──私は薬師なんです」


「さっき聞いたので知ってます」


 何が言いたいんだろう?


「──相手様の調ようでしたので飲み物にを入れたんです。そしたら──豹変されてになったんです♡」


 ん?


「…………それで?」


「私は襲われてしまったんです……でも、が入って止められてしまって……うぅ……」


 ……邪魔?


「も、もういいです。お辛い事をお聞きしました」


「そして、彼は私の服を破り捨てて……私の胸を──」


「いや、本当にもう結構です」


 話の流れはロッテが豹変した相手貴族に襲われたが、なんとか手遅れになる前に助け出されたという感じではあるが──



 俺の分析では違う。


 スラムに住んだり、裏社会で生きているとは良く聞いた。


 ロッテは起こった事実を言っているが、言葉の節々に自分の心が投影されている。



 おそらくだが──


 ロッテの入れた薬は『』だ。


 相手の貴族に一服盛って、襲われるように仕向けている。


『鑑定』からの事前情報と照らし合わせれば一目瞭然だろう。


 間違いなく、ロッテは既成事実を作ろうとした。


 しかし、これで破談になったとは考えられないんだが……むしろ向こうが悪くなって責任を取る形になる。弱みを握った形だと思うんだが……。


 何で破談になったんだ?



 ピコンッ


『名探偵、中々冴えてるじゃないか! これは余談だが、この使われた『媚薬』は『慈愛の誓い』のミゼリーが持っている物と同じ効果がある。どうなるかわかるだろ?』


 それは冗談抜きでやべぇな……。


 あの『媚薬』は三日三晩ヤり続けないと正気に戻れないはずだ。


 間違いなく、その貴族は自我を失っているのが容易に予想出来る……破談になっててもおかしくねぇな……。



 ピコンッ


『その通り。現在その見合い相手は牢獄で拘束されています。女性を見たら手当たり次第に犯そうとするからな! 見合い相手の親はロッテのせいで息子がおかしくなったと疑い、婚約の話は無かったことにして欲しいと破談になりました。そして今ロッテはこう思っています──「彼が好みだったからつい薬を盛ってしまいましたわ♡ 私が無茶苦茶に犯されれば全て丸く収まったのに……邪魔さえなければ──」と』


 うわぁ……これがと破談の真実か……ドン引きなんだがッ!?


 そんで、次のターゲットが俺って事か?


 最悪じゃん……絶対仲間にはいらねぇな……断固拒否するッ!



 ピコンッ


『今回の【祝福ログインボーナス】の意図はポーションなどの薬が簡単に手に入るメリットがある。我が上司からのオススメの一品だ。材料費だけでポーションが手に入るのはありがたいぞ? 宮廷薬師なだけあって他にもと作れるからな』


 いや、それなら多少高くても普通に薬を買うわッ!


 それに色々作れるってヤバい系の薬の可能性が高いだろッ!


 デメリットが酷すぎるッ!


 あと、お前の話し方──統一感無さすぎだろ!?



 というか、今も文字越しに見えるロッテは舌舐めずりして俺を見てるんだが!?



 身の危険しか感じねぇよッ!



 あわよくば、おっぱいを吸えたらなぁとは思ったが、絶対我慢だなッ!



「あ、喉渇きませんか?? これどうぞ♡」


 コップを持ちながら俺に近寄るロッテ。その目は


 すかさず『鑑定』を使うと──


『媚薬入り』


「要りません。大丈夫です」


 俺は即答する。


「遠慮せず飲んで──その後はここも召し上がって下さいませ♡」


 ロッテはおっぱいを揉みながら持ち上げる。


 これは罠だな。


 ……貴族の令嬢ならば時と場所を考えてくれ……これ飲んだら──


 護衛中なのに馬車の中でズッコンバッコンする事になるだろがッ!


『慈愛の誓い』にいた魔術師のミゼリーさんもそうだったが、目的の為に手段を選ばないのは研究者気質だからなのだろうか?



 早くここから抜け出したい──


 おっ、『索敵』に反応あり!


「おっと、魔物が迫っていますので俺も外に出ますね?」


 俺は逃げるように馬車の外に出る──


「マイ、ティナッ! けっこう大量の魔物がこっちに向かってきているッ! 迎撃するぞッ!」


「「はいッ!」」


 俺達は魔物が来る方向に構える。




 そういえば、ミゼリーさんといえば──


 普段は凄く知的で落ち着きのある人だったな。ただかなりの恥ずかしがり屋さんで外を出歩く時はフードや仮面とかしてたけど……こっちも陰キャだな……。


 そんなミゼリーさんのおっぱいは──いや慎ましく、体型はスレンダーだった。


 エッチの時は、俺は無理矢理『媚薬』や副作用の少ない怪しい薬を飲まされていたが、ミゼリーさんも同じ物を服用していた。その結果、本能のままに抱き合っていた記憶がある。


 他にもエッチで新たな快楽求めて色々と薬の実験もやらされたけど……。


 エッチが終わった後、デレながら──


『篭って実験や研究ばかりやっているとストレスが溜まる──たまに発散したくなるものだ。以前は魔物を消し炭にしてストレス発散をしていたが、今では無理矢理付き合ってもらってるけど、エルがいる……私に魅力はないけど──こうやって一緒にいてくれるのは落ち着くし、幸せだ。──ありがとう……』


 そんな事を言われた事もあったなぁ……。


 懐かしい。


 ちなみにデレたミゼリーさんが可愛くて、薬無しで普通のエッチをしたら、顔を真っ赤にしながら完全に受け身で俺好みだった記憶がある。


 声を押し殺す仕草は最高だったなぁ……その後は快楽を倍増する薬を飲まされて仕返しされたけどな……。


 そういや、この人に魔契約をさせられたんだよな……たぶん、俺に対する執着心は『慈愛の誓い』でもかなり強かったなぁ……。


 今は俺とヤってないから、また魔物狩りという名目で焼け野原にしているかもしれんな……。


 まぁ、賢い人というのはたまに本能を剥き出しにしなければ自分を保てないのだろう。


 ロッテもきっと同じ部類だと思う。


 見境が無い分、タチが悪い気がするが……。




 さて、魔物が見えてきたな……多い……。


「エルク様、魔物はゴブリン、オーク、オーガの混成です」


「エル兄、どうする?」


「んー、大した事もないし、各個撃破で。俺は分身作ってから行くから先に行ってくれ」


「「了解ッ!」」


 俺の言葉に2人は魔物に向かって駆け出す。


 俺は分身を作り──


「お前らはロッテを守れ」


「「「あいよ」」」


 ──ロッテを守らせる。



 さぁて、俺も向かうか。



 しかし、襲われる頻度が高くないか?


 普通、魔物が混成して襲ってくる場合は何か原因がある事が多い。


 有名なので言えば──魔力溜まりが原因で起こる氾濫スタンビートとかな。


 だが、目の前の魔物数は氾濫スタンビートにしては少ない。


 他に考えられるとすれば──



 人為的な可能性だな。



 ピコンッ


『ロッテちゃん──見合い相手の親から恨まれて命を狙われてる件について♪ エルドラン王国までは大変だけど、まぁ頑張れ』


 いや、そういう情報はもっと早く教えてくれねぇかな!?

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