第39話

『鑑定』の言われるままに急いで進んだ結果──



 もう少しで国境付近の街に到着するところまでやって来た。


 ここ3日程、ほとんど走っていた気がする。しかも『鑑定』が獣道とか走らせるから疲れた……。


 お陰で道中は魔物ともけっこう出くわしたが、ティナが1人でほとんど討伐し、マイは補助をしていた。


 俺は見物人に成り果てていたな。


 相変わらずティナの攻撃は全く見えず、俺のおっぱい感知器がなければどこにいるのか全くわからなかった。


 万全のティナは確実にSランク相当だろう。


 ちなみにティナの怪我はマイが午前中に治したと聞いる。


 けっこうな怪我だったはずなのだが、完治させるとは、マイは何でもありだなと思った。


 1人で回復、補助、戦闘──何でもこなせるタイプだ。成長すればリーシェさんを凌駕するかもしれん。


 おっぱいは確実に勝てるだろう。


 俺にはわかる。おっぱいが少しずつだが毎日成長しているのがッ!



 ピコンッ


『おい、変態ッ、休憩だッ!』


 こいつから休憩の指示が入るという事は追っ手は大丈夫なのだろう。


 いつも通り偉そうだがな。



「2人とも休憩しよう」


 俺はマイとティナに休むように伝える。


「ふぅ、疲れましたね〜。追っ手は大丈夫なんですか?」


「エル兄、これからどこに行くの?」


「ん、あぁ、追っ手はとりあえず大丈夫だろう。行く宛は全く無いな……この先って──確か、エルドラン王国だったよな?」


「私は詳しくないのでわかりません」


 まぁ、マイは村娘だったから知らなくて当然だろうな。


 俺はSランクパーティに居たから依頼でこの1年は大体の国に行ったから問題ないが。


 すると、ティナがぶっ込んできた──


「エルドラン王国で間違いない。昔に性根の腐った大臣を殺した記憶がある」


 理由が物騒な上にバレたら不味いやつだな。


「そ、そうか……あんまり他言するなよ?」


「わかってる。まずは国境付近の街で休んでから行く?」


「そうだな。少しゆっくり休みたいぜ……。とりあえずはエルドラン王国目指す方向で動こう」


「ゆっくり休んだら追いつかれませんか?」


 それだよ……さすがマイさん。鋭いねッ!


 問題はどれぐらいの猶予があるかだが──



 ピコンッ


『私の思惑通り──追っ手は正規ルートで既にエルドラン王国にいるからしばらくは安全。後はゆっくり行けば問題ない』


 おぉ!? お前ってば超有能じゃんッ!


 つまり、最短距離を進んでたんじゃなくて、遠回りして追っ手を先に行かせたわけねッ!


 無駄に走らされたわけじゃねぇんだなッ!


 戻ってきたら教えてくれよ!?


 頼れる相棒ッ!


 ピコンッ


『お前って暇潰しにもってこいだからな(笑)』


 うおぃッ!!!!


 俺を暇潰しに使うんじゃねぇよッ!



「まぁ、街に着いたらゆっくり出来そうだぞ? なんせ『慈愛の誓い』のメンバーとは違うルートで逃げるようにしたからな」



 ピコンッ


『手柄横取りされた(泣)』


 いや、だってどう説明したらいいかと思ったが、お前の存在を教えても信じて貰えんだろうし、仕方ないだろ?


 それにお前のお陰で俺の株は上がった。見てみろよ。2人とも『おぉ〜』って顔してるぞ?



「さすが『先見』のエル兄」


 そういや、俺の冒険者での二つ名ってそれだったな……忘れてたわ。


 それより──


「え?! 『先見』って凄い有名ですよ!? というか──エルク様って『慈愛の誓い』にいたんですか?!?!」


 マイが凄く驚いていた。


 今更?! って、そういやマイにはSランクパーティにいたとは言ったが、パーティ名言ってなかったな……。


「実はそうなんだ……」


「最強パーティの一角にエルク様がいたなんて……そりゃー強いはずですよッ! 私も冒険者になったらいつか入りたいと思ってたパーティですよ!?」


 確かにマイの強さは底知れないからな……あそこなら間違いなく強くなるだろうなぁ……そして肉食系になるのも間違いないだろう。


「まぁ、そいつらが追いかけて来ている追っ手だがな……」


「……それ、本当に逃げれるんですか? 確か──『先見』のいない『慈愛の誓い』は猛獣と変わらないと噂されてましたが……」


 聞くな……俺だってかなり無茶だと思ってるんだから。


 俺の尊い犠牲によって、なんとかあいつらの手綱を握っていたからな……。


「普通なら無理だろうなぁ……俺も幾度となく逃亡に失敗してお仕置きされたからな……今回は念入りに準備して成功したんだ。あの時の1号の様子から捕まれば俺は犯される……失敗は許されん……」


「……どんな仕事も『先見』がいれば問題なく終わると言われたエルク様でも?!」


 お前どんな噂聞いてんの!?


 確かに後始末とかめっちゃやってたけどさッ!?


「マイ姉……あいつらは完全な人外……どんな策も通用しない……私も本気で戦ったけど、勝てる未来が見えなかった」


 ティナの言う通りだな……どんな敵の罠も策も全て物理で潰してきた奴らだ。


「つまり、見つかれば終わりだな。今回みたいに2人ならなんとかする自信はあるが、それ以上は無理だ。成す術なくヤられるだろう」


 2人ならば今回みたいに分身を生贄にすれば俺の安全は確保されるからな。人数が多いと時間稼ぎも出来んッ!


「さすがは『先見』の二つ名持ちですッ! 格好良いですッ!」


「エル兄は最強ッ! 『金獅子』達のルートを予想出来るなんて凄いッ!」


「まぁな」


 2人が俺を持ち上げてくれるのが気持ちいいぜ。


 たまには『先見』の二つ名も役に立つじゃないかッ!



 ピコンッ


『無様な姿を見せて幻滅されないといいな? それにストーカーはそいつらだけじゃないかもしれんぞ?』


 ……お前のその一気にどん底に叩き落とす発言やめてくれね?


 不安しかなくなるからッ!



 さて、とりあえず──油断は禁物だが『慈愛の誓い』がこっちに気付かずに通り過ぎてくれたお陰で安全に抜けるルートは決まった。


 とりあえず──


「飯にするか」


「「賛成」」


 俺達は昼飯を食う事にした。



 メニューはマイの作った、フレンチトーストとかいうパン料理だ。


 俺は感動した。保存食のあのクソ硬いパンを柔らかくした上に味付けをして美味しく仕上げる事が出来るなんてな。


 戦闘も料理もやり方次第でいい方向に行くんだなと再認識した。



 満腹になった俺は──


 本日分の【祝福ログインボーナス】を使用する事にした。


『義妹』が当たった次の日は『ミスリルの剣』が当たった。


 これはマイの武器として渡した。


 ミスリル製の武具はとても高級品だ。買えない事はないが、無料で手に入ったのはありがたかった。


 俺は最近運が良いのではないかと思った。


 だって、激強のティナが仲間になった上に、将来強さもおっぱいも有望なマイの武器だろ?


 なにより、俺の股間も以前に比べると痛くないしッ!


 今日もきっと良い物が当たる気がする──



 さぁやるぞッ!



 発動すると、目の前に紐が吊るされる──



 なにこれ? 初めての仕様だな……。


 これ引っ張ればいいのか?



 おっ、文字が表示されたな。


[引っ張れば紙が落ちてきます。そこに今回の報酬が明記されています]


 やっぱそうなんだな。


 良し、引っ張ろう。


 俺は紐を引っ張る──


[尚、今回のお題は『くじ引き』です。仲間にするかしないかはご自由に♪]



 え?


 神様ァァァァッ、言うのがおっせぇよッ!!!!


『鑑定』みたいにフランクに話してんじゃねぇよッ!?


 ヒラヒラと落ちてくる紙が俺の手元に来た。


 中身には──



『令嬢』



 ──と書かれていた。



 令嬢?


 貴族の令嬢か?


 面倒事の臭いしかしねぇ……。



「きゃあァァァァァァァァッ」


 少し離れた所から叫び声が聞こえてくる。



 このパターンはマイと同じじゃん……。



 ピコンッ


『ミッション発令ッ! 陰キャの令嬢を助けろッ!』


 いや、これミッションなの!?


 しかも爆乳を強調してるしッ!



 ピコンッ


『だってお前──性欲が獣並で絶倫王(極)だろ? 助けたくなるように付加価値をつけただけだしッ』


 しっつれいなッ!!!!


 あと、絶倫王言うなッ!


 そんな情報なくても普通に助けるわッ!



「マイ、ティナ行くぞッ!」


「「はいッ!」」


 俺達は叫び声が聞こえた方向へ走る──

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