第37話

 私は朝の訓練中だが、エル兄はまだ寝ている。


「エル兄……強かったなぁ……」


 確かに私は怪我をしていたけど、負ける気は全くなかった。



 でも、それ以上にエル兄の技──『おぼろ』だったかな? それの使い方が絶妙に上手かった。


 ただ幻影を混ぜるだけの技ではあったけど、緩急をつけた攻撃に対応が出来なかった。


 これが実戦であれば私は間違いなく死んでいた。


 何より、あの『金獅子』ですら私の攻撃は完璧には避け切れていなかったのに──エル兄は完全に攻撃を把握して弾いたり、避けたりしている事が信じられなかった。



 エル兄は腑抜けてなかった。



 私の英雄は英雄のままだった。


 助けてもらった時のように飴を渡されて頭を撫でられて懐かしい気分になった。



 しかも、私をにしてくれるって言った。


 エル兄はスラムの住人は家族同然だと言った。


 これが裏組織【絆】の仕事を手伝うだと思った。



 私はそう思うと、更にエル兄が好きになった。


 ハーレムには嫌悪感があった……だけど、エル兄は自分の意志でハーレムを作った訳ではない事を知った。



 私は数年間ずっと独りぼっちだった。


 だからこそエル兄が家族になってくれると誘ってくれた事が嬉しかった。


 その反面──


 失う事を経験している私は。大事な人はもう失いたくない……。


 それに私の手は既に血で汚れてしまっている。これまで散々人を殺してきた……そんな私が今更普通の生活なんて送っていいのだろうか?


 そう思った。



 エル兄は過酷な過去があったけど、【絆】を手伝いながらも普通に暮らそうとしている。


 その時、エル兄も裏社会で生き抜き、手は汚れている事に気付く。


 そして、昔も今も変わっていないと言っていた。つまり、が変わっていないという事。


 そう思うと、私の中にあったエル兄への蟠りがほどけて無くなったような気がした。


 どんな過去があっても、大事なのは


 エル兄は私の幸せを本当に願ってくれている気がした。


 そして、私はハッと気付く。


 助けてもらったあの頃感じた気持ちは──


 憧れではなく──



 だったと。



 そう自覚すると、顔が熱くなった。


 でも、エル兄は反応が良くない私に1人で世界を見て回るように言う。



 私はエル兄と離れたくないッ!


 どうすれば一緒にいれる?!


 そして私はエル兄の言葉を思い出す──


『スラムの人は俺にとってだと思っている』


 そう言っていた。


 娼館のお姉ちゃんから『大好きな男がいたら、エッチをするとほいほい依存してくるわよ?』と聞いた事がある。


 つまり、つがいになればエル兄は私から離れないッ!


 えっちぃ事も頑張るッ!


 銀狼族にはハーレムはないけど、他の獣人ならハーレムは普通だったような気がするッ! エル兄のように優しくて強い男の人にハーレムが出来るのは仕方ないことなのかもしれない。



 その結果──



 私はエル兄から家族になる事を許してもらえた。



 とても幸せな気分になった。



 その後、マイお姉ちゃんも起きてきて色々と教えてくれた。



 そして──疲れたエル兄はもう一人自分を作り出して見張りを任せ、テントで休んだ。


「これってエル兄なの?」


 私は気になったのでもう一人のエル兄に聞いてみる。


「ん? あぁ、分類するとしたら偽物かな? 本体ではないが俺と言っても過言じゃない分身体だ。情報の共有が出来るから、非常事態が発生したら知らせられる。俺の事は1号とでも呼べばいい」


 私の戦闘の時は使わなかったけど、これを使われてたらもっと厄介だっただろうな。

 見た感じそのまんまエル兄なのに偽物なんだ……。


「1号ね? その情報共有は常にしてるの?」


 マイお姉ちゃんが1号に聞く。


「俺は自我が目覚めたから意図的に共有しない事も出来そうだな。本体の負担は出来るだけ減らしたいからな」


「ふむふむ、じゃあここで話した事も内緒に出来るの?」


「本体が寝ているから可能だろうな。なんだ? 内緒話するなら席を外すぞ?」


「エルク様を為にこれから話をします。これには1号の協力が必要です」


「ほほぅ。言ってみろ。本体が死ねば俺も死ぬ。内緒にしておくだけで本体を救う事になるなら協力してやる」


「では──まず、眠り薬が必要です────」


 マイお姉ちゃんはどんどん話していく──


 1号はふむふむと聞きながら「それは確かに本体を救う事になるだろう。必ず黙っておく」と言っていた。


 マイお姉ちゃんがあそこを舐めるのがエル兄を救う事になると話していたけど、私には意味がわからない。


 疑問符を浮かべているとマイお姉ちゃんが説明してくれた。


「ティナちゃん……エルク様は呪いのせいでずっとエッチな事をしていないの。男の人は白い液体を定期的に出さないと病気になるのよ。ティナちゃんはエルク様とずっと一緒にいたいよね? これをしてあげればずっと元気でいてくれるわ。それにこれはエッチの時にもしてあげると、喜んでくれる事よ? 一緒にやらない?」


「やる」


 私は即答する。


「絶対にエルク様には内緒よ? バレたらきっと優しいエルク様は止めるように言うわ……」


 私は強く頷く。


「マイ姉って呼んでもいい?」


 マイ姉は博識だ。これからも頼りにしたい。


「いいよ、私はティナちゃんって呼ぶね! さぁ、ヤるわよッ! 1号は見張りをお願い──」


「任せておけ。本体のあそこはもう限界だ。楽にしてやれ。そうすれば俺も楽になる──任せた」


 私達は1号に見張りを任せて、テントに忍び込む──



 そして、手や口でくちゅくちゅしながら舐めると、昨日食べたシチューのような白い液体がいっぱい出た──


 そこかしらベトベトになったけど、エル兄を見ると笑っていた。凄く幸せそうな笑顔だった。


 なんか嬉しくて、どんどん2人で出してあげた。


 途中からマイ姉とどっちが早く出せるか競ってたら、エル兄が途中で起きそうになった。


 すかさずマイ姉が1号から受け取った眠り薬を嗅がせてに寝させていたのでバレていない。



 ちなみに20回から先は数えていない──



 マイ姉が途中で「なんという絶倫……いえ、これは王の器か……覚醒したら私達2人では対応ができないかも……」とか呟いていた気がする。



 ────


 ────────


 ────────────



 そして、私は朝から訓練をし──今に至る。



 既に昼前だというのにエル兄は眠っている──



 これからはエル兄にバレないように私達が白いのをいっぱい出してあげようと思う。



 呪いが解けたら──



 本当の家族になれるかな?

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