祝福された冒険者は平凡を望む〜毎日が"エロくてハード" なSランクパーティを力不足なので抜けたら元パーティメンバーや元いた裏組織が放っておいてくれない件。責任取れ？体が持たないので勘弁して下さい〜

第36話

　最後の決着をつける為、俺とティナは動く──

　ティナは速度を活かした突きを仕掛けてきた。

　渾身の一撃なのだろう。全く見えんが──

　俺はギリギリ避ける事に成功する。

　それと同時に横に回り、『幻影魔法』を使いながら『気配遮断』で気配を希薄にし、普通に剣を振るう──

「遅いわッ！」

「まだ終わりじゃないぞ？」

　俺の腕と剣は『幻影魔法』により増え、ティナを襲う──

「──！？」

「──『朧（おぼろ）』──」

　現実の攻撃と幻影を混ぜた攻撃──これが俺の新技だ。

「これぐらい──」

　しかし簡単に弾かれる。

　まぁ、リーシェさんやレイラに通用しない時点でティナに通用しないのは予想の範囲内だ。

　勘の鋭い人には気配を遮断しても効果が無いのはわかっていたからな。

　そもそも全身に『身体強化（極）』を使っていても、今の俺の地力は怪我をしているティナより遥かに下だ。

　普通の速度の攻撃なんて当たるわけがない。所詮は初見殺しの技だ。しかも強者には通用しない。

　だから、今の攻撃はただの布石だ。

　俺はもう一度『朧（おぼろ）』を放つ──

「同じ技なんか──ッ！？　…………」

「──終わりだ」

　ティナの首筋に剣を当てる。

　ティナは何が起こったのかわかっていなかったようで固まっていた。

　俺がやった事は一緒だ。

　ただ、気配が感じ辛い状態での攻撃、そして『幻影魔法』で増やした後の攻撃の動作に入った時に『身体強化（極）』の部分強化を足から腕に変えただけだ。

　それにより、俺の攻撃速度は倍になる。

　予め、俺の最大速度を見せていなかった事もあるが──

　いきなり高速になった剣筋に対応出来なかった為に、この状況が生まれた。

　今回で新技が形になったのは収穫だった。

　まぁ、ティナは剣筋は捉えていたようだから万全なら避けられた可能性が高いがな。

　とりあえず勝ちは勝ちだ。

　俺は放心しているティナの頭を撫でる。

「──強くなったな。頑張ったご褒美だ」

『無限収納』から飴を出して渡すとむすっとしながらも無言で舐め始める。

　子供はお菓子を与えると元気が出るからな。

　しかし、数年前までは普通のスラムの少女だったとは思えないぐらいの強さだ。加護の力があっても努力を惜しめば強くはなれない。

　努力をすれば身を結ぶ加護ってのは羨ましいなとは思う。

　俺なんて試行錯誤しねぇと通用すらしねぇからな……。

「……エル兄……手を抜いてた……」

「ん？　抜いてねぇよ。ここぞという時に力は使うもんなんだよ。全力で突っ走っても疲れるだけだろ？　ティナはもっと力を抜け。そうすればもっと強くなれるはずだ」

　緩急をつければ、ティナの戦術の幅は広がって更に強くなれるだろう。

　次は勝てなくなるだろうな……まぁ、元から勝てないだろうが……。

「むぅ……エル兄はやっぱり昔と変わってない……ただのハーレム野郎じゃなかった……」

「失礼な。好きでハーレム野郎になってたんじゃねぇよッ！　俺は昔も今も変わらない。ティナに暗殺者は似合わない。もっと世界を見てみたらどうだ？　裏組織に入ったと言っても暗殺稼業は辞めたんだろ？　自由に生きてみろ」

　こうやって飴を頬張る姿を見ていると裏社会で恐れられた『無音（サイレンサー）』とは全く思えん。

　スラムで育ち、辛く過酷な仕事をしてきたんだ……そろそろ自由に生きても良いだろう。

　子供は子供らしく笑って過ごすのが1番だ。

　最悪、俺の仲間にならなくても別に構わない。

　ティナであれば冒険者でも十分食っていけるだろう。

「確かにここ数ヶ月は殺しの仕事はしてない……私が──自由に？」

「そうだ。ティナはまだダンジョン潜ったり、旅行したりした事ないだろ？　きっと楽しめる。もし冒険者になれば新しい仲間が出来るかもしれないぞ？　さっきは誘ったが、別に俺と来なくても大丈夫だ。お前は自由に生きたらいいんだよ」

　生きるなら楽しい方が良いだろう。

　義妹のフラグはここで折る。万が一にもボコデレとかヤンデレとかだったら最悪だからなッ！

　そんな事を思っていると文字が表示された。

　それは『鑑定』ではなく、【祝福（ログインボーナス）】からの表示だった。

［所定時間内にルーレットが施行されなかったので勝手に回します］

　へ？

　ルーレットが勝手に回り始める──

　ちょ、ちょっと神様、待ってくれませんかねぇ！？

　そんな制限時間があるとか初耳なんですけど！？

　ピコンッ

『わくわく』

　うっさいわッ！

　ルーレットが止まる──

　刺した選択は『義妹』だった。

　おぉ、なんとかセーフだ。

　ピコンッ

『ちッ、いやまだわからんぞ？　ボコデレは確定として、他のデレとのハイブリットかもしれん』

　不吉な事を言うなッ！

　というかよく考えたら、俺が最終的に決めるから問題ねぇなッ！

　そんな事を考えているとティナが口を開く──

「──なら、私はエル兄が大好きだから家族になりたい」

　グハッ

　ティナから会心の一撃をくらった。

「──理由を聞いても？」

「エル兄さっきスラムの人は家族だって……私はずっと独りぼっちだった……私を変えたのはエル兄……だから新しい世界をエル兄に見せてほしい……」

　俯き、震えながらティナは話す。

　なるほど、家族ってそういう意味か……確かに俺はそう言った。ティナも同じ考えなのだろう。

　つまり、家族＝仲間の認識のはずだ。

　ティナの反応は怯えもある。俺から勧誘はしたが、話の流れから断られると思っているのかもしれない。

　だが──

「わかった。俺に任せろ。ティナに世界を見せてやるよ」

　ここで断れば男が廃る。

　まぁ、元々仲間にはなってほしかったし問題ない。

　そう、俺は仲間を手に入れたんだ。決して義理の妹ではないッ！

　ピコンッ

『草』

　茶々入れんなよ！？

　草って何だよ！？

「エル兄──家族になるんだよね？」

「ん、あぁそうだな。スラムの人は家族同然の仲間だからな」

「私にもえっちぃ事するの？」

「は？」

　────いやいやいやいや、何言ってんのこの子！？

「だって家族同然の仲間っていうことは本当の家族も同然──つまり、交尾をするッ！？」

「一気に話すっ飛ばしたな！？　何故そうなる！？」

「家族同然ならえっちぃ事するよね！？」

「いや、家族だからってするわけじゃないからな？！」

「交尾しないと子供作れないもんねッ！」

　いや、話聞けよ！？

　あと、女の子が交尾言うなッ！

　どうしてこうなった！？

　ピコンッ

『義妹ゲットだぜ♪　ちなみにティナはハーレムを嫌ってたけど、エル兄のせいで許容しちゃったよん♪　今まで寂しかったんだろうね〜エッチしないと他に取られると思ってるみたい♪ 可愛がってあげなよ？』

　何故お前が楽しそうなんだよ！？

　あと、エル兄言うなッ！

「あ、私も混ぜて混ぜて♪」

　その後、マイも起きて加わり、更にカオスになった。

　内容を簡単に言うと──

　俺はティナに何度も説明するが、最後には「交尾はいつするの？」と言われた。説明するのが嫌になった……。

　そして、マイがティナに何やら熱く語っていた。

「いいですか？　交尾も大事ですが、その前に色々と知らなければならない事がありますッ！　それを今から教えます────」

　最初はハーレムとは何か？　から始まり、性知識について散々語っていた気がする。

　正直、疲れが酷くてあまり覚えていない。

　なんせ俺は途中で寝る事を伝えて、分身に見張りを任せた。

　これは余談だが、出した分身体はリーシェさん達と対峙した分身1号だった。

　ちなみに次の日の朝はとてもスッキリして快適だった。相当疲れが溜まっていたのだろう。

　なんせ起きたら昼前だったからな……。