第33話

 マイとティナが薄いシチューを頬張る姿が、ラウンズや『慈愛の誓い』との激しい夜を思い出させてくれる……。


 しばらくは白い液体の食べ物は遠慮したいな……。


 さて、2人とも食べ終わったようだ。


「──続きは本当に聞くのか?」


「「(コクコク)」」


 ピコンッ


『……お前の情事でもうお腹いっぱいなんだが?』


 いや、俺も腹いっぱいなんだが!?


 出来れば俺もこんな話なんかしたくねーよッ!



 この2人を見てみろよ!? 早く話せと言わんばかりの真剣な眼差しをッ!


 沈黙が苦痛だッ!


 とりあえず続きを話すか……。


「確か──フランとの賭けだったな────」



 フランとの賭けは壮絶な戦いだった。


 まず、相手はラウンズ6人から始まる──


 普通にエッチをするだけでは負けていたはずだ。


 何より、フランの『イきなさい』の命令で幾度となく俺は果てさせられたからな。


 だが『精力増進』のお陰で踏みとどまる事が出来た。


 そして俺はこの時、裏組織を生き抜いた分析力を元に全員の弱点を見つけて攻め続けた。


 しかし、さすがは精鋭。さっきまで処女だったのに快楽に溺れていくラウンズ達はエロい喘ぎ声で誘いながら俺を陥落させようとしてきた。


 ここで『慈愛の誓い』のメンバーのように襲われていたら確実に負けていただろう。



 途中で敗北の2文字が頭を過ったが、それでもなんとか奮起し全員を屈服させる事に成功した。


 これはアリアのお陰だろう。


 ミランちゃんの暴露話で俺の闘志に火が付いた。


 負けたらヒモになる気がしたからな……。


 もはやこの時には抜ける理由が変わっていた気がする。



 ちなみにラウンズの足腰を立たせなくするのに5日かかった。



 そして、俺の体力がガリガリ削られた後──


「さすが、エル──来て♡ 優しくしてくれなきゃ、やーよ♡」


 ついに俺の目の前に大ボスであるフランがベットで股を広げて挑発しながら俺を誘う。



「任せろ──」


 俺はラウンズ同様、フランも焦らした。これは弱点を見つける為だ。


 前戯に時間をかけまくった。


 その結果──


「あッ、あぁん…んんッ──そ、こ…良いん……エル…キス……して……」


「ダ、ダメ…そこ──ダメぇぇぇッ……はぁはぁ……ん、んぁ」


 そんな声を連続で上げる凄まじくエロいフランが出来上がる。


 こんなフランは見た事がない。


「────ふぁッ!? ──んは、ふぉん、ぐぅぅ……もう…ダメ……お、願い……きて──は、やく♡」


 声を出さないように耐え続けた後、涙ぐむフランの懇願に俺の理性は爆発した──


 そこからはあまり覚えていない。


 かつて愛したフランを貪った記憶しかない。



 ただわかったのは──


 フランは俺との戦いでは使だ。



 俺は数年間の空白の時間を埋めるように何度も何度もお互いに求め合った──


「──エル……私の負け……よ……」


 フランは大粒の涙を流していた。


 俺は抱きしめる。


 フランは俺との勝負には加護を使わなかった。


 それはおそらく、命令という手段を使って俺を繋ぎ止めなくなかったからだろう。


「──フラン……」


「何も言わなくていい……」


 涙を流しながら顔を背けるフラン。


「フラン、俺はいつになるかわからないが──また。それまで組織は預けたぞ? 俺は約束通り、サポートはする。影からお前を。だからラウンズだったか? ちゃんと精鋭で固めてお前が死なないようにしろ。わかったか?」


 俺はフランの両肩を掴みこちらに向かせて告げる。


 今回の件はアリアの妨害もあったが、お互いのすれ違いが原因だ。


 いつか、俺が戻って来た時にフランの気持ちが変わっていなければ俺はフランに告白しようと思っている。


 その間にフランが誰かと結婚しても構わない。フランが幸せなら──



「──!? うん……わかった……帰ってくるの? じゃあずっとね? 泣いてるの?」


 フランの言葉に俺は涙が流れた──


「ばーか、泣くわけないだろ? お前も、もう泣くな……いつか気が向いたら帰るからな? 依頼はいつもの奴に伝えてくれたらいい。スラムの住人にだって価値がある事を【絆】が証明しようぜ? そうだ依頼の時の合言葉でも決めるか?」


 俺は茶化すように言う。



「スラムの住人だって生きる価値があるって証明しようッ! は裏から頑張るッ! だから──冒険者になってもまた力を貸してねッ! 合言葉は──『救いの手を』だよッ!」


「あぁ、わかった。というか──って何だよ……なんか小さい時のフランみたいな喋り方して……」


「むぅッ! 良いじゃないか……エルの前だと自然と昔みたいになるのッ! ねぇ……最後にもう一度満足するまで優しく抱いて?」


「わかった。とびっきりに優しく抱いてやるよ────」


 フランと俺は泣きながら2人で体を重ね続けた──




 次の日の朝、俺はフランを起こさずに部屋を出る──


 お別れは昨日済ませたからな。



 俺の前にラウンズ達が並ぶ──


 既に足腰は復活しているようだ。


 そしてエヴァが代表で俺に話しかけてきた。


「エル……本当に行くんだな?」


「エヴァ……それに皆済まない。フランを頼む。またいつか会おう」


 本当すまん……俺が処女奪った上にフランを頼む事になるとは思ってもいなかった。


「「「はッ!」」」


 お前らにもいつか良い人が見つかる事を祈っている。



 俺は拠点の外に出る──



 フラン、いつか必ず会おうな。



 お前がピンチになったらいつでも駆けつけて守ってやる。


 俺も冒険者になってフランに恥じない強さを身につけてくる。



 俺は歩き出す──



「──エルッ! 絶対帰ってきてねッ! 待ってるからッ! いつまでも待ってるからッ! 全然帰ってこなかったら──今度はで監禁しちゃうからねッ!」


 後ろからフランがそう叫んできた。


 最後の言葉に頬が引き攣る。


 そういえばフラン……闇落ちしてたんだった……。帰るのが少し怖くなったな……。



 こうして俺達の誤解は解けた。


 一旦別れる事になったが、フランとの絆は今も続いている。


 俺が友達だちって呼んでるのは恋人じゃないからだな。



 これは余談だが──


『慈愛の誓い』に入ってから、【絆】の仕事を手伝っていた時──


 帰りたく出来事があった。

 確か、裏組織との抗争だったな……フランがめちゃ怖かった……まぁ、これは機会があれば語るとしよう。



 そういえば、これまで【絆】──いやフランから帰ってくるように仲介人を通して言われる時はあった。しかし、『慈愛の誓い』という防波堤があったから表立って動けなかった。


 しかし、現在俺はフリーだ。


 その為、フランは俺をラウンズにさせる事により、既成事実を作って取り込みに来ていると推測出来る。


 俺にはわかる……闇落ちしたフランはきっと──『もう、エルは私の物よ? 早く帰ってきなさい♡』──そう言っているだろう事が……。



 フランはしたたかに裏社会で生きているのがよくわかるな。




 更に余談だが──



 ある日、『慈愛の誓い』と共に依頼で俺とフランがいた孤児院のある街に来たんだが──


 が代わっていた……。


 情報を集めると、裏で【絆】が動いたと聞いた。


 フランもどうやら恨みがあったのだろう。俺が去る前にフランを売った奴らを殺したせいで矛先が領主に向かったようだった。


【絆】の力は権力者をも凌駕している事に驚きを隠せなかったが……。




「これで──俺が裏組織いた理由と抜けた理由がわかっただろ?」


「「……ぐずっ……切ないよぉ……」」


 マイとティナはまた号泣していた。


 ピコンッ


『仲直りしたんなら一緒にいとけよ……切ねぇ……』


 お前も!?



「まぁ、なんだ……人ってのは会って話さなきゃわからん事も多いって教訓だな……。まぁ、最後らへんはエッチのしすぎで死ぬかと思ったから抜けたかっただけだが──結局、『慈愛の誓い』で同じ目に合った──いやそれ以上の目に合ったがな……さぁ、寝よう。明日は国境を越える為にけっこう歩くからな? 見張りは俺がする。ゆっくり休めよ?」


「「はい……」」


 2人は大人しく高級テントの中に入って行った。



 俺は1人焚き火をしながら、さっき言った事を振り返る──


 ぶっちゃけ、今の俺があるのはフランのお陰だし、どちらにせよ同じ運命を辿るなら【絆】に残っても良かったなと思っている。


 今となっては既に終わった事だがな……。



 たらればの話になるが──


 俺が『慈愛の誓い』に育てられた未来もあったかもしれない。


 いや、実際のところは俺を救出した時にそんな話が出ていたそうだ。


 だが、Sランクパーティというのは相当、危険な依頼が多い。俺を連れて行くのは困難という事で冒険者ギルドに預けたと聞いた。


 仮に俺が連れて行かれていれば──


 違う加護を授かったかもしれないし、もっと強くなっていたかもしれない。


 しかし、その場合──


 フランと俺は再会出来ていなかっただろう。


 それにフランは娼館で働いていたかもしれない。それが悪いとは言わない。


 だが──


 今は俺を育てて『慈愛の誓い』に感謝している。



 どんな過去であっても、俺とフランの絆が出来た事に変わりはない。


 まぁ、蹂躙だけは勘弁してほしいから逃げるけどな。



 さぁて、俺も少しだけ仮眠を取るか──


 目を瞑ろうとすると──



 ピコンッ


『上司から贈り物があるそうです』


 と『鑑定』から表示された。



 え!? マジ!?


 何で何で!? 1日1回しかもらえないんじゃないの!?



 ピコンッ


『今回のエピソードを伝えたら、今回特別にスキルを授けるそうです……もうすぐ表示されます』


 うおぉぉぉぉぉぉぉぉッ!


 ありがてぇ、ありがてぇ。



『鑑定』に感謝していると、目の前に文字が羅列する──



[この度はご愁傷様です。部下より話を聞き、大変致しました……。つきましては今回、祝福ログインボーナス】をお贈り致します。貴方のこれからにです。これからも幸? 多からん事を────]


 ……ん? ……同情?


 しかも最後の『幸? 多からん事を』の『?』いらなくね?


 まぁ、いいや。



 目の前にスキル名が表示された──


『身体強化(極)』


 ──だった。



 やっほぉォォォォいッ!!!!



 念願の『身体強化』スキルだぜ♪



 後ろに『極』と書いてあるという事はかなり良いスキルだろう事が予想される!


 神様ありがとうございますッ!




 ピコンッ


『上司からの追伸──このスキルは全身だけでなく、する事が可能です。これでを強化すればどんなハーレムでも生き残れます。健闘をお祈りします──』


 …………え?


 まさかのハーレム用スキル!?


 これでズッコンバッコンしろと?


 いやいや、今の俺は魔契約で出来ないんですよ……出来ればそっちの方をなんとかしてほしかったんですが?



 ピコンッ


『絶倫王(極)の誕生だな……まぁ、いつ夜で使うかわからんが頑張れ……ちゃんと戦闘にも使えるから安心しろ……』


 最後の一文を見て内心少し安心した。



 だが──



 お前の説明の仕方が悪いせいで神様に同情されちまったじゃねぇかァァァァッ────

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