第32話

 俺は全員の『円卓の闇騎士ブラックナイトラウンズ』の相手をし終わり、フランも続けて抱いた。


 エヴァやアリア達は満足そうに惚けて俺を見つめてきている。


 俺は苦笑いを浮かべている。



 フランとのエッチがとりあえずヤバかった……。


 フランの魅力が高すぎるせいなのか、それとも加護の効果なのかわからないが、俺は一心不乱に腰を振り続けた気がする……。


 そんなフランは幸せそうに俺に抱きついている。


 だが、目は笑っていない。


 そして俺に話しかけてくる──


「エル──なんかよりずっと良いでしょ? 知ってるのよ?」


 フランには俺が隠れて娼館に行っていた事がバレていたようだ。


 俺の情報操作をしていたであろうアリアを見るとウインクされたので苦笑いを浮かべる。


 こんなどうでも良い情報だけを教えるとか勘弁してくれ……こんな事を教えるから『円卓の闇騎士ブラックナイトラウンズ』を発足したのかもしれない。


 お陰で現在、フランから浮気を問い詰められている気分だ。射殺すような視線を俺に向けている。


 フランとは恋人ではないが、疎遠になるまでは体を何回も重ねていた。


 だが、やはり俺だって男だ。


 会えなくなり、嫌われたと思った俺は心の隙間を埋めるかのように娼館に通った。


 まぁ、下半身の欲求に勝てなかっただけだが……。


 そういえば行きつけの娼館にいた、俺の一推しのミランちゃんは元気だろうか?


 いつもサービス満点のミランちゃん……とても優しく癒してくれるミランちゃん……。


『──待っています。私は他のお客は取りません。貴方だけを待っています。エルク様を……お慕いしております……』


 そういえば、ミランちゃんと出会ってエッチした後はこんな感じだったな。


 この子の最初の客は俺だった……しかも処女だった……。


 いつか、娼館から身請けしようと思っていた。


 そうすれば俺はいつでも心を癒やして貰える。


 そんな事も考えていたなぁ……。



 おっと、現実逃避している場合じゃないな。


 このままここに残れば──


 俺は間違いなく毎日、フランとエヴァ達の相手をする羽目になる。


 さっきの感じだと、たぶん普通に死ぬと思う。


 何より残れば──俺が『円卓の闇騎士ブラックナイトラウンズ』の筆頭になるのは間違いないだろう。


 ギルドマスターに手も足も出なかった弱い俺に務まるとは到底思えない。


 それに正体不明の『蜃気楼』がいきなり表舞台に立って指揮を取れば反感も買うだろうしな。


 フランに迷惑をかけてしまう事になる。


 他にも俺はリーシェさんにお礼を告げなければならない。


 後、フランが昔と違って闇が深い気がするから怖いのもある……。


 やはり抜けよう。


 強くなって戻れば──


 きっと文句言う奴もいなくなるだろうし、『円卓の闇騎士ブラックナイトラウンズ』もフランを守る為の精鋭にするように念押ししておけば、ハーレムは自然解体されるはずだ。



 とりあえず今は言い訳だ──


「フラン、娼館の件は男なら当たり前に行くだろう」


 別に結婚しているわけでもないし、恋人もいないから問題ないはず。


 これでフランが俺に幻滅してくれないだろうか?


「……娼館の件は水に流してあげるわ──確かに私達は恋人同士じゃなかったもんね……なら──私と結婚してッ! 私は──エルの事大好きだから! もう寂しい思いもさせないし、にもさせないからッ!」


 いや待て待て、いきなり結婚!? 普通は恋人とかじゃね!?


 欲求不満にさせない……つまり、このハーレムは継続するという事か……。


 このハーレムがなかったら俺も素直に残ったかもしれないが、命の危機があるハーレムは勘弁願いたい……既に全員抱いた後だから無かった事に出来ないだろうし……。


「──気持ちはありがたい。だが、今のフランに俺は必要ないと思っている。俺は弱い──」


 俺は弱いんだ──そう言おうとすると。フランが声を被せてきた。


「知ってるよ。そんなの……でも弱くても必死にずっと守ってくれたし、私の為にずっと汚れ仕事をしてくれてたのもわかってる……こんな別れた方嫌だよ……ずっと一緒にいてほしいよ……」


 知ってたのか……。


 それでも一緒にいてほしいと言われると俺も決意が鈍りそうだ。フランも実は俺と結ばれたかったのかもしれないと思うと罪悪感しかない。もっと早くにこんな話をしてれば良かったな……。



「なら、せめてハーレムはやめないか?」


 ハーレムがかなりネックだ。皆を抱いた後で申し訳ないが、これだけは譲れない。


「──ダメです」


 なんでやねんッ!?


 お前まさか闇落ちしてるんじゃね!?


 目が座ってるんだけど!? なんなの!? これは既にハーレムが決定事項なの!?


 あぁ、ダメだ。もう何を言っても無駄そうだ……仕方ない──


「じゃあ──賭けをしよう」


「賭け?」


「そうだ。俺が勝てば組織を抜ける。と言っても抜けた後もいつもの伝令の奴を寄越してくれたら、フランのサポートはするつもりだ。俺達のは切れない。そして、フランが勝てば何でも出来る範囲で言う事を聞く。結婚だってする。どうだ?」



「うふふふふふふふふふふふふふふ……(エルが手に入る、ついに手に入る──体だけじゃなくて心も私の物になる)……」


 小声の部分が聞こえてきて、俺は背筋が凍った。


 フランの顔は完全に闇落ちしていた。


 会えない時間がここまで人を変えるとは……まさかハーレムまで作ってるとは思わないだろ……。


 少し前の自分にアドバイスが出来るなら間違いなく無理をしてでも会いに行けと言っただろう。

 そうすれば歪まなかった可能性もある。


 今のフランと一緒になるのは正直どんな未来になるのか想像が全く出来ない。フランから逃げ出したい……。



 だが、これは提案が了承されたと取ってもいいだろう。


「賭けの内容はフランが決めろ。直接戦闘以外なら何でも良い」


 これは俺の我儘だ。


 内容ぐらいはフランに決めさせた方が良いだろう。それに直接戦闘でなければ俺にも十分勝ち目はあるからな。


 伊達に裏社会を生き残ってきたわけじゃないッ!



「──なら、これからで決着をつけましょう」


 俺は自分で言った事を後悔した。


 まさかエッチで決着をつけるとは……。


 既に俺の体力は半分以上削られている上に全員を足腰立たなくするとかどんな拷問だよ……。


『精力増進』スキルが無かったら既に敗北が決定していただろう。


 ちなみに『円卓の闇騎士ブラックナイトラウンズ』は6人いる。そいつらとフランをなんとかせねばならない。



 そして、俺はハーレムの洗礼を受けた──



 その時の戦いはもあったが、俺が『慈愛の誓い』で生き残る為の自信に繋がった事は言うまでもないだろう。


 ちなみに内容としては、基本的に俺が攻めで、他は受けだった。


 恥ずかしそうにする『円卓の闇騎士ブラックナイトラウンズ』はとても可愛かったとだけ明記しておく。


 ロリなエヴァを何回も抱けたのが特に印象強いが……。


 今では『慈愛の誓い』よりこっちのハーレムの方が俺的には最高だと思っている。


 それも俺が勝った事で、今では無くなったとは思うがな……。



 1番の強敵はフランだった……向こうも負けないという意志が強くて消耗線になった。


 なんせ、この戦いは食事休憩はあったが、それ以外はずっと抱いていた。



 それが5日続いた──



 俺は限界を超え、そして勝利した。




 あーこんな話してたら俺の股間が破裂しそうだ……。


「とまぁ、結果的に勝負には勝ったんだが、試合には負けた感が半端なかった記憶があるな……」


「「……けだものッ!」」


 マイとティナから今度は罵倒されてしまった!?


 一応言っておくが、俺が賭けの内容を決めたわけじゃないんだぞ!?


 ピコンッ


『……夜の帝王の爆誕か……』


 うぐッ、否定出来ねぇ……。



「まぁ、あれだ。とりあえずこうしてフランと約束して別れた感じだな」


「「エッチの途中の絶望って?」」


「あーそれか……ミランちゃんの事を途中で話しただろ?」


「えっと、娼館にいた子ですよね?」


「それとエル兄が関係あるの?」


「大いにある。なんせがミランちゃんだったからな……初期メンバーのラウンズを抱いた時はどうやら血を用意して処女と誤魔化したみたいだな……変装や演技が抜群に上手かったからわからんかったな……」


 この時には既に俺を落としにかかっていて、俺を依存させようとしていた事が衝撃だった。


 同時に怖いと思って、限界だった俺を奮い立たせてくれだが……。


「「…………それがなんで絶望?」」


 いや、絶望だろ!?


「俺の心の拠り所だった場所は仕組まれていたんだぞ?!」


 この戦いが終わったら、俺はミランちゃんに癒してもらう気満々だったんだぞ!?


 それがまさか目の前で抱いてる途中でアリアからカミングアウトされてみろよ!?


 ドン引きだよ!?


 しかも、俺の癒やしの場所と思っていた場所が俺の裏の二つ名と同じく『蜃気楼』だったんだぞ!?


 この時、俺は絶対に負けられない戦いだと思ったからなッ!


「「あー……」」


 ピコンッ


『まぁ、この事があったからお前は夜の帝王になれたんだ……誇れ……この事である程度免疫がつき、『慈愛の誓い』の蹂躙に耐えたお陰で誰にも負けない夜の男になれたはずだからな。絶倫王という二つ名をくれてやる。お前には負けたよ……』


 ぜんっぜんッ、嬉しくねぇ二つ名なんだけど!?


 しかも勝手に負けるなよな!?



「さぁ、シチュー食おうぜ……」


 もうそろそろマジで食おう。


 過去を思い返して凹んだぜ……。



「「ここまで来たら別れの最後まで聞きたい」」


「えぇ……飯食ってからじゃねぇと続きは話さないぞ? ……殺気出してもダメ」


「「ぐぬぬ……」」


 2人は渋々従って、飯を食う事になった──



 俺は食事しながら思う。


 いやー、このシチュー……水を足したせいか、色が薄いな────

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