第31話

「なぁ……本当に話さないとダメなのか?」


「「当然ッ! むしろここまで話して話さないとかなしですッ!」」


 マイは魔力を込め、ティナはナイフを取り出した。


 これは『早く話せ』という脅しだろう。


「わ、わかった。後悔するなよ? えーっと、フランと別れの挨拶をする所だったな──」



 確か──


『幻影魔法』や『隠密』、『気配遮断』を使って侵入した。


 切ない気持ちで向かっていたはずだ──


 もう、昔のように貧しくても笑い合っていた頃には戻れない。


 俺を遠ざけていたぐらいだ。あまり会いたくないのかもしれない。


 フランと俺は創設者ではあるが、立場の違いがある。


 何より俺は直接戦闘では【絆】でも中堅ぐらいだろう。なんせ冒険者ギルドでCランク相当と言われたからな。


 俺には暗殺ぐらいしか取り柄がない。


『蜃気楼』は創設者の一人で、組織を乗っ取る危険人物として扱われても仕方がない。実際、そういう噂もあったからな……。


 だがら俺を遠ざけたというのが本当のところなのかもしれない。


 フランから怖がられているのだろうか?


 既に俺達の道は分かれてしまった。


 最後ぐらいは本音で話し合いたい──



 というか泣きそうだ……初恋は実らないって言うけど、この終わり方は心が痛い。


 元々俺達は体の関係はあったが、恋人として付き合ってはいなかったんだ。仕方ないんだ……。


 俺の恋は終わったんだ……。


 俺はもう冒険者としてやっていく事を決めた。後は踏ん切りをつけるだけだ。


 盛大に振られよう──



 そう思いながら、フランが寝ている寝室まで向かうが──


 部屋の前には『円卓の闇騎士ブラックナイトラウンズ』であろう2人の女性がいた。


 情報では『円卓の闇騎士ブラックナイトラウンズ』の構成員はだ。


 2人の内、1人は初期メンバーで知り合いだ。ハーフドワーフのエヴァだ。背は小さく、子供みたいに見えるが性格は凶暴。だが、普段はのんびりとした性格だ。


 もう1人は知らないが、俺の存在に気付いているっぽいな。


 さすがにここで戦闘はしたくない。というか戦闘になったら普通に負ける。


 俺はスキルの使用をやめて姿を現す──


「お!? エルッ、久しぶりッ! フランが会いたがってたわよ? 何してたのよ」


 エヴァが俺に気付く。


「フランに緊急の話があってな。通してくれるか?」


「フラン様はお眠りですお帰り──「いいぞ、入れ入れ」──なッ!?」


 知らない方の女性が殺気を出しながら話しているのをエヴァが言葉を被せる。


「ダメですッ!」

「うるせぇなアリア──お前はいつから私に指図出来るようになったんだ? 潰すぞおらッ! ほらエル、入れ。フランが喜ぶぞ?」

「ひッ……」


 エヴァの殺気をまともに受けて怯えるアリア。


 俺も怖いんだが……。


「あ、あぁ、エヴァは相変わらずだな。ありがとうな」



 俺は頬を引き攣らせながらフランの寝室に入る──



「──フラン」


 俺はフランを揺すりながら起こす。


「──エル? エルッ!」


 俺に気付いたフランはベットからガバっと起き上がる。


 久しぶりに見たフランは更に魅力的に成長していた。


 というか、肌着が薄くてエロい……襲いたい……。


 おっと、煩悩退散ッ!


 俺はここへ踏ん切りをつけに来たんだ。


「あぁ、俺だ。久しぶりだな……今日はお別れの挨拶に来た。俺は冒険者になる」


「──何で!? 嫌ッ! 久しぶりに会えたと思ったら何でそんな事言うの!?」


 いや、遠ざけてたのはフランだろうに……。


「もうフランは1人でやっていけるだろ? 俺はもう──必要ない」


「……や、だ……」


 俺が嘘をついていない事がわかったのか涙をぼろぼろと流し始めるフラン。


 この数年間でフランが変わったと思っていたが、違うのか?


 どうなってるんだ?


「──フランは俺と会わないようにしてたんだろ?」


「……ぐずっ……してないよ……いつも一緒にいて欲しかったよ……だから『円卓の闇騎士ブラックナイトラウンズ』だってエルを筆頭にしたのに……そしたら一緒にいてもらえるって……でも、断られたって聞いた……もう私を守ってくれないんだって……直接会おうと思っても、仕事でいつもいないって言われるし……ここにも来てくれないし……。どうして? 私の事嫌いになったの?」


「…………」


 俺は固まる。


 いったいどうなってるんだ?


 フランの様子を見るに、操られていないようだし、以前と変わりはない気がする。


 何より俺に『円卓の闇騎士ブラックナイトラウンズ』の話は来ていない。


 まさか──


 これは仕組まれたのか?


 今思えば『蜃気楼』の噂も悪い事だらけだった。


 俺を危険視した組織の誰かが俺とフランを引き離そうとした?


 もし、そうなら俺は勘違いでここから去る事になっていた。来て良かったのかもしれないな。



「フラン──お前は誰に『円卓の闇騎士ブラックナイトラウンズ』の話を俺に伝えるように言った? 俺にその話は来ていない」


「──!? エヴァッ!」


 目付きを変えたフランはエヴァを呼ぶ──


「はいよー、ここにいるぜ? なんだなんだ、そんなおっかない顔して?」


「私はエヴァにエルが『円卓の闇騎士ブラックナイトラウンズ』の筆頭になってもらう為に伝言頼んだよね? エルが聞いてないって聞いたけど?」


「はぁ?! マジかよ。アリアが伝えるって言ったから任せたんだが──どういう事だ?」


 アリアって確かエヴァとさっき一緒にいた女性だったな。


 というか、フランとエヴァからの怒気が凄まじい……大気が怒りに満ちている……。


 凄く怖い……。



 この時、アリアが逃げ出そうと動いたが──


 エヴァが即座に捕縛してフランの前に差し出す。


 そして、フランが命令する──


「アリア──


 この時のフランは見た事がない顔をしていた。

 裏組織のボスとしての顔がそこにはあった。


「──?!」


 フランの


 その顔は怯えている。


「さぁ──アリア、か決めなさい」


「は、話しますッ!」


「よろしい──では


「伝言しなかったのは…… 『円卓の闇騎士ブラックナイトラウンズ』が『』のハーレムのために結成されたからです。つまりという女性しかいません…… 。私はエルク様を独り占めしたかった。だから私は──エルク様を孤立させてから慰めて差し上げれば、2人で甘い生活を送れると思ったんです……昔、助けて頂いたエルク様に私だけを見てほしかったんです……」


 うおぃ!? とんでもねぇ理由なんだが!?


 というか『円卓の闇騎士ブラックナイトラウンズ』の発足理由よッ!


 俺のハーレムの為ってどういうこった!?


 発足理由が本当なのかエヴァを見ると──


 頬を赤らめていた。


 こいつがこの反応って──これマジなのかよ!?


 いつものオラオラ感はどうした!?


「──なら許します。それは愛ゆえに起こった出来事ですから。ですが独り占めはダメです。良いですね? エルは皆の物です♡」


 ──はぁァァァァッ!? フラン、お前も何言ってんだよ!?


「……はい。ありがとうございます。私は間違っていました……エルク様のナニは皆で共有しましょうッ!」


 いや、お前も何簡単に納得してんだよ!?


 意味わかんねーよッ!?


「ちょっと待とうかッ! フラン──お前の口から聞きたい。『円卓の闇騎士ブラックナイトラウンズ』は何の為に発足したんだ? そもそもお前が発案したのか?」


「……私を守る為の精鋭として発案発足した……(表向きは)……」


 ボソッと言ってる最後の言葉が聞こえてるからな!?


「……裏向きは?」


「……エルのハーレム要員……」


「何でそうなった!?」


「だって……エルが全然会いに来てくれないし、抱いてくれないから……きっと私だけじゃダメなんだと……」


 まさかの理由!?


「それはまぁ、誤解が解けたが──俺ハーレムとかいらないんだが……」


「──!?」


「いや、驚くなよ……俺をなんだと思ってんだよ……」


「男の人はハーレム大好きって聞いたもん……」


「……はぁ……全くお前は一旦突っ走ると止まらないとこは変わらねぇな……」


 裏組織のボスとしての顔はあったが、フランの中身が変わっていなくて良かったな……冒険者になる予定だったが、どうすっかな?


 このままフランの為に頑張るのも悪くないか?


 そんな事を考えていると──


「──エヴァ、『円卓の闇騎士ブラックナイトラウンズ』を緊急招集しなさい。これからエルにわよッ!」


 フランがぶっ込んで来た。


「はッ! 直ぐにッ!」


 いやいやいやいやいや、何言ってんのさ!?


「ちょっと待てッ! なんでそうなる!?」


「皆、エルに命を救われたりした子達ばかりだから嬉しいでしょうね〜♪」


「いや、話聞けよ!?」


「うふふふふ、私は最後にたくさん愛してね? 久しぶり過ぎて楽しみ♡」


 目が完全にヤバい。


 まさか会えない時間がフランを変えたのか!?


 俺はこのままだと喰われる。


 離脱しようとするが──


「エル──。逃がさないわよ?」


 フランの言葉に俺の足が


 何故動かない!?


「フラン──俺に何をした!?」


「これが私のの力よ? 私の前では皆お利口さんになるの♪ さぁ、夜は長いわよ〜♡」


 どんな加護なんだよ!?


 マジで動けねぇよ!?


 どうなってんだよ!?



 俺は全力で動こうとする──


「──うおぉぉぉぉぉぉぉぉッ! 良しッ、動けた──!?」


「残念♪ エルの事が大好きな『円卓の闇騎士ブラックナイトラウンズ』が到着しちゃった♡ エヴァッ!」


 俺はエヴァに抱きつかれて捕まる。


「ぐぬぬ、相変わらずの馬鹿力だな……──離せエヴァッ!」


「えへへ、優しくしてね♡」



 その後、『円卓の闇騎士ブラックナイトラウンズ』初期メンバー全員と体を重ねる事になった。


 ちなみに全員がだったので優しく抱いた……。



 これは余談だが、エヴァを抱いてる時は幼いので背徳感で色々と精神的にヤバかった……心の中で『これは合法』と何度も呟いた気がする。


 そして、何よりギャップが凄かった。凶暴なエヴァが抱いてる時だけは受け身で甘い声を出していたから……。



 更に余談だが、いくらなんでも続けて抱くのは若くても無理だった。


 だが、フランが──


『勃ちなさい』


 ──と命令する度にした。


 次第に俺の体力だけが削られていった。


 この事からフランは人に命令出来る加護なのだろうと推測した。


 そして──ここに残れば今後、俺はこいつらに殺されると正直思った。



 全員の相手が終わるとフランの相手をする事になるのだが、この時──


 フランとをした────





「まぁ……こんな感じだな……」


 俺は鍋から溢れたシチューを見ながら感慨に耽る。


 あの時もこんな感じのがたくさん出まくったな……。


 なんか一気に食欲が無くなってしまった。


 俺の女難の相はここから始まった気がする……その後も『慈愛の誓い』のメンバーから鍛えられたし……。



「「…………」」


 今度は2人とも押し黙ってしまった。


 ピコンッ


『まぁ、ドンマイ……』


 お前にまで同情されたら俺はどうしたら良いんだよ!?


 ほら、いつもの軽口を叩けってッ!


 ピコンッ


『この猿がッ!』


 そうそう、それだよッ!


 お前はそうでなくっちゃなッ!



「まぁ、なんだ……【絆】を抜けた理由ってのがだな……結局抜けても入ったパーティで蹂躙されたがな……」


 俺は遠い目をしながら言う。


「……フランちゃんとの賭けは?」


「エルク様の話から察するに、その賭けに勝って【絆】から抜けたんですよね?」


「あぁ……そうだな……」


 確かに賭けをした。


 そして、俺は勝って自由を掴み取った。


 正直、この賭けに意味があったのかわからんが……いや無いな……。


「「賭けの内容は?」」


「どっちか先に動けなくなるまでエッチをして、最後にベットで動けた者が勝者だ。勝ったら言う事を聞くって感じだな」


「「……」」


 ピコンッ


『まだエッチぃの続くのかよ……』


 まだ続くよ……本当大変だったんだよ……。


 この日の朝に【祝福ログインボーナス】で『精力増強』スキルが貰えてなきゃ負けてただろうな──



 ちなみに『円卓の闇騎士ブラックナイトラウンズ』の初期は俺のハーレム要員だが、今はちゃんとフランを守る為に精鋭で構成されているはずだ。たぶん……。

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