第22話

 あの後、子供を巻き込まない為に孤児院から飛び出した俺は戦闘が出来る場所まで誘い込んだ。


 ちなみにマイは置いてきている。


 それより──戦闘を開始したのはいい。



 予想通り──


 2人がかりでボコられて、俺はなす術なく地べたを這いつくばっているがな……。


 いやぁ……普通に無理っすわ。『幻影魔法』もレイラには効果ないしな。


 攻撃されても、目で追えるのに体が追いつかねぇよ。


 ぶっちゃけると、見えてるのはだけどな……。動く度にバルンバルン揺れてるせいで俺の集中力が凄いだけなんだがな。


 これは余談だが、現在俺は這いつくばっている為、俺の直ぐ近くにいるレイラを見上げるとおっぱいの谷間しか見えない。下から見るおっぱいで顔が見えないとはな……中々の大きさだ。



 ちなみにやられてるのはなので問題はない。


 こっぴどくやられてるのはだしッ!


 ラウンズ最強の蜃気楼が実は弱いと思わせる作戦だからな!


 実際は弱いんだけどさッ!



 そんな事を考えていると、レイラがおっぱいから顔を覗かせる。そして、不思議そうな顔をして話しかけてきた。


「貴方は本当に蜃気楼? ──いくらなんでも弱くないかしら? ラウンズ最強とは思えないけど? 幻ぐらいで勝てると思ってるのかしら? 噂は当てにならないわね……」


 いや、ラウンズ最強は嘘だからな。


 そもそも、俺はまともに戦わない主義だッ!


 とりあえず作戦通り、油断はしてくれてそうだな。


「──まぁ、噂なんてそんなもんじゃねぇか?」


 俺は立ち上がり、軽口を叩く。


「──大人しく寝てたら後で可愛がってあげるわよ?」


 唇を舌を舐めながら捕食者の目を向けるレイラ。


 おそらく、既に戦闘後の妄想をしているのだろう。


 このままなら確実にお持ち帰り決定だ。



 しかし、俺は傷だらけだががある。



 だって──



 この戦ってる俺はだからな。



 本体である俺は見通しの良い所で見守ってるだけだしな。他の4体の分身体は『気配遮断』『隠密』を使って待機中だ。


 いやー、『分身』スキルさんは凄いっすわ。見ている景色も共有出来るし、ちゃんと斬られたら血が出てるし、絶対バレないなッ!


 マイにバレるのが謎過ぎる件ッ!



 さて──ここで、俺の作戦名を教えようッ!


『分身体に戦闘は任せて、最後には腕輪を嵌めました』


 ──だ。



 だが、シスターは幻覚に引っかかってくれるけど、レイラは隙が全くないんだよな……。



 せめてマイが起きてここにいたらなぁ……駒が足りん。



 しょうがない──ここはぶっつけ本番ではあるが考えたを試みる時だろう。



 なんせ俺は最初からまともに戦う気は皆無だからなッ!



「──俺の力を見せてやろう」


 俺は『水魔術』で大洪水を起こす幻覚を見せてを封じる。


 そして、『気配遮断』『隠密』でレイラの背後に回って剣を突き刺そうとするが、簡単に避けられる。



「こんな幻なんて私に効果あると思ってるのかしら?」


 まぁ、無いわな。さっきも見破られて散々ボコられたからな(分身体が)。


 俺の戦闘スタイルがわかっていて、勘が鋭ければ防げるだろうし。


 だが、これはあくまで視覚を封じるだけだ。


「さぁな? 効果あるんじゃねぇか? ほれ、あそこ見てみろ」


「──なッ!? いつの間に!?」


 俺はさっきのやり取りの中、シスターに腕輪を嵌めて気絶させていた。


 やった事は簡単だ。


 レイラと対峙している分身体はあえて『気配遮断』と『隠密』スキルを使わず、シスターとレイラの視界を幻覚でカモフラージュし、レイラの意識を目の前に集中させた。


その間に他の待機させている分身体には、『気配遮断』と『隠密』スキルを使わせて、シスターに近づかせ腕輪を嵌めたわけだ。


 不意を突けば、これぐらいは容易い。



 今回の戦闘ではっきりしたのは分身体であっても問題なくが使える点だ。



 まぁ、さすがにラウンズであるレイラにはこの方法で捕縛するのは無理だろうが──


 これなら俺のに事を進められる。



 だが、俺は優しいからな。


 もう一度ぐらい交渉しようと思う。


「さて、レイラ1人になったな? まだやるのか? 今なら更に追加でお菓子をやるぞ?」


 俺はドヤ顔でお菓子を手に出して言う。


 このお菓子は俺も一つ食ったけど、めちゃ美味いんだぞ?


 なんとか一口でも食って気が変わってくれないかな?


「いらない」


 きっぱりと断られた。


 まぁ、うんざりしているから良いだろう。冷静さを失ってもらおうじゃないか。



「ならやるしかないか──」

「またか」


 俺は『幻影魔法』で自身をたくさん量産する。


 冒険者の時によくやってた方法だ。これで良く前線から逃げていたからな。


 これが通用しないのは既にさっきボコられてわかっているし、『気配遮断』や『隠密』を使っても近付けば位置が把握される事もわかっている。


 だからこそ、あえて使う。


 レイラは既に俺を攻略したと思っているはずだ。


 そこに隙がある。


 そう、その隙さえあれば十分だ。


 この戦闘は別に勝てなくても構わない。負けなければな。

 俺の目的はだから。


 まぁ、負けたら肉便器決定だから死ぬ気で頑張るけど……。


 スラムや『慈愛の誓い』で俺が生き残れたのは加護もあったからだが──それだけではない。


 小賢こざかしいからだ。



 それを今から見せてやるよッ!



「さぁ──決着をつけよう」


 分身体全員が『幻覚魔法』で水魔術を発動させるように見せる。



 レイラはまたかと呟いている。




 俺は『』を起動する──


 出すのは奥の手として収納していただ。


 既にレイラには同じ幻覚を見せているため油断しているはずだ。


 しかも、ただの水を出すのに使


 つまり、察知は出来ないはず。



 幻覚の中に本物を混ぜて無力化するのが俺のだ。



 これで足止めして確実に残りの分身体と共に腕輪を嵌める──


 失敗は許されん。



 俺は幻覚と同時に『無限収納』に入っている水を一気に放出し、行動に移った────

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る