第20話

「ティナ──お前はこの街に派遣されている【絆】の構成員は殺したか?」


 俺はティナの問いを無かった事にした。


 そう、今はそんな事より、確認しなければならない事がある──


「殺してない。というか私は組織に入って日が浅いから誰も殺してない」


 なら、やはり敵対する理由が無いな。

 聞いていた敵組織に今も動きが無いのも納得だ。


 こいつらはシロだからな。


「俺もお前と同じく今回組織から子供達を救う為に任務を受けている。協力しないか?」


 ぶっちゃけ敵対する必要が無いのであればティナの戦力が必要になる。


 なんせBランク相当の護衛を殺すぐらいだからな。切れる札はあればあるだけ良い。


 一応、勧誘はしておこう。



「──断る。私は基本的に1人でしか行動しない」


 しかし、ティナからは断固として断られた。


「そっか……なら俺の邪魔はするなよ?」


 せめて敵対だけはされたくないからな……。



「……腑抜けた貴方でいけるの?」


 ティナは俺を挑発する。俺がハーレム野郎でぬるま湯に浸かっていると思っているのだろう。


「ふん、舐めるなよ? これでも修羅場を潜り抜けて来たんだ。いつも通りちゃんと解決するさ」


「……わかった。手は出さない──その代わり、今回の件が済んだら一回戦ってほしい。それが条件」


「わかった」



 俺達は広場を後にして別れる。




「はぁ……」


 1人になって俺は溜め息を吐く。


 とりあえずは敵対されないのは助かった。



 今回、はっきりしたのはティナがこの件にまだ関与していない事だ。俺はシスターから情報提供を受けてティナのいる組織を調べていた。


 つまり、シスターの言っていた事は嘘だという事になる。


 が関与している可能性が高い。


 俺が来てから動きはないようだし、尻尾を出すかわからんな……。



 2日以内に決着がつくのか?



 どう対処するべきやら──




 うわぁ……何かまたが俺の方を見てるな……今回俺に任務を伝えた奴だな……。


 スルーしよう。


「もし──」


 やはり、シスターと一回、話し合いをしてみるか?


「もし──そこの人──」


 いや、誤魔化されて終わるか……。


 しかし、運が良ければ尻尾を掴めるかもしれない。なんせ【絆】のルール違反はかなり厳しいから何かしら尻尾を掴めば抵抗するはずだ。


「──おい、そこのお漏らし野郎」


「うぉいッ! とんでもねぇ、風評被害出してるんじゃねぇぞッ!」


「無視するからです」


「めんどくせぇ依頼なんか寄越すからだろッ!」


「まぁ、ありがとうございます。そんな貴方に朗報です」


 時間稼ぎなんかしたつもりは無い。シスターの言葉に振り回されただけだな。


「……朗報ってなんだ?」


「その前にこれを渡しておきます。これは拘束用の魔道具です。がいますので御用心下さい」


 さっと、俺に腕輪を2つ渡して来たので俺は懐にしまう。


「……1人は目星はついている。もう1人は? それと朗報ってのは?」


「蜃気楼の貴方ならわかっているのでは? この件は少し面倒臭いので予め、に連絡していました」


 んなもんわかるかッ!


 黒幕いる事も今初めて知ったわッ!


 これは経験上、ヒントのみしか出さない奴だな……。


「それで?」


「なんと、救援が本日到着致します。しかもです!」


 おぉ、救援か。黒幕とやらが相当手強い証拠だろう。


「誰?」


 ラウンズはネジがぶっ飛んでる奴が多いと聞くからな。

 俺の知ってる人選次第では俺がやった方が無難だろう。


「最近、入ったばかりの新人ですね。【鮮血】のレイラです」


 知らねぇ……二つ名が物騒だな……。


「強いのか? それと黒幕は誰だ?」


「えぇ、強いですね。黒幕は誰かもうわかっているでしょう? をお願いします。それとシスターも強いですから気をつけて下さいね? 裏組織を抑える為にAランク相当の者に任せてますから。ではでは──」


 一瞬で姿が消える。


 事情を知ってるお前がやれよな!?


 絶対、お前俺より強いだろッ!


 というか、エンブレムを返し忘れたしッ!



 うわぁ……本当に最悪だ……。


 孤児院のシスターに選ばれる人材は力で裏組織をねじ伏せる為に選別された者達という事か……。



 発言から察するに──


 今回の事件は身内確定だ。


 しかも、が絡んでいる。


 拘束用の魔道具が2つある……これはシスターとそのラウンズ用だろう。


 冒険者ランクSとA相当を相手にするとか無理だろ……去り際に爆弾落とすなよ……。



 あの仲介人は俺が強いと思ってるんだろうな……。


 やっぱり、ティナに頼み込みたい……ティナならラウンズであっても戦えるだろうし、シスターは俺とマイが相手をすればなんとかなるんだけどな……。


 あの感じだと無理だろうしな……。


 とりあえず、【鮮血】のレイラだったか?


 そいつが今日来るなら、様子見が無難か……何の情報も無いからな……。


 こっそり無力化させる腕輪をつけたら大丈夫だろ……たぶん。


 それまでに戦闘になったら最悪だな……。


 俺の用意した作戦は『幻影魔法』を使った急襲だったが、身内であれば使えないプランだ。



 ここはプランBだな。



 ちなみにプランBは今から考える……。



 とりあえず、使えるのは『幻影魔法』と『分身』ぐらいだな……。



 孤児院に帰るまで俺はひたすら作戦を練る事にした──



 ────


 ────────


 ────────────



 気がつけば孤児院に到着する。


「マジか……もう到着してんのかよ……」


 俺の『索敵』には反応がある……。


 相手は俺をる気満々のようだ。



 ここで考えてても仕方ない。



 なるようにしかならない。



 俺は扉を開けて中に入る──



「お待ちしておりました。ラウンズ最強の蜃気楼──って、可愛い坊や♡」


 紅い髪でウェーブのかかったエロい服を着た女性がいた。


 しかも、俺を見て豊満なおっぱいを両腕で持ち上げて、唇を舐め回している。



 拙い──



 この目は『慈愛の誓い』の奴らが俺を時の目だ。



 だが、俺も本能には勝てん……欲求不満過ぎる。



 まさか、こんな挑発をしてくるとは──



 俺の股間が痛い。



 それと──



 マイさんや……目が怖いです……。

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