第18話

 俺はどうやら正気を失っていたようだ。


 マイによって俺は正気を取り戻したが──


 が問題だった。


 まさか手を使ってとは……。


 あそこを握られる事によって俺の意識はある程度覚醒した。なんせ俺の息子は限界寸前で敏感になり過ぎていたからな。


 そして、俺は止めるように言おうとしたんだ……だが──


 そのまま動かされた時──恥ずかしそうにするマイをもう少し見ていたいと思ってしまい、流れに任せる結果になった。



 その結果、俺のパンツは濡れてしまった。


 こんな事は人生で初めてだ……確かにSランクになった件はかなり衝撃だったし、ショックだったがこの事は一生忘れられない思い出になりそうだ。



 しかも『早漏』というレッテルも貼られてしまった……。


 当然、俺は──早かったのは我慢の限界だったからだ、と必死に訴えた。


 誤解は生まれたが、マイは俺の意識を引き戻す為にやってくれたのだ。特に思う事はない。俺だってマイにやったからな。


 だが、問題もある。


 俺の息子はまだ立派なままだ。

 この際、勢いで『あと、4回ぐらい頼む』と言いたい……。


 無料ただほど怖いものはないが──言うだけなら無料ただだ。


 しかし、マイは何故か今更になって恥ずかしそうにしている……こんな女性の仕草を見るのは本当に久しぶりで新鮮だ。パーティメンバーには最早恥じらいなどなかったからな……。


 こんな状態のマイにはさすがに言えない……。



 なにより──


 現在は冒険者ギルドにいた柄の悪い冒険者に絡まれ、怒鳴り散らされている。まぁ、怒鳴られているのは無視しているから当然だろう。


 とりあえず、こいつらをなんとかするのが先だ。


 というか、早くパンツを履き替えたい……。


 こいつらをなんとかして、パンツ履き替えたら──


 マイに『後、数回抜いてくれないか?』と聞くだけ聞こう思う。



 さて──こいつらにはせっかくだし、の実験台になってもらうかな。


「──聞いてんのか!? この『早漏』がッ!」


 良し、こいつらは半殺し決定だ。そもそも、街中で剣を抜いている時点で容赦するつもりは全く無い。


 真っ向勝負であっても戦える自信をここでこいつらから貰おうじゃないか。


 股間が気持ち悪いからさっさと終わらすッ!


「お前らは半殺しで許してやろう」


「ふざけんなッ! やれッ!」


 男達は俺に向かって剣を一斉に振り抜く──


 俺は『幻影魔法』『隠密』『気配遮断』スキルを使ってマイを連れて包囲網を抜け出す。


 戦う時に囲まれると四方から攻撃を受ける。攻撃される方向を限定させれば、怪我を負う可能性も低くなる。


 これは戦術の基本だ。


 普段なら絶対しないが、後は新技を試す為に正面から真っ向勝負をする。


「どこに行きやがった!?」

「ここだ」

「「「──!?!?」」」


 いつの間にか移動した俺に驚いている。


 俺もパンツが濡れていても動ける事に驚いた。


 意外と動けるもんだな……。


 さて、ここからが本番だ。


 俺はに攻撃する──


「へ?」

「は?」

「え?」


 すると、そんな声が聞こえてきた。


「まぁ、ごろつきの冒険者程度ならこんなもんか……」


 全員の片腕を切り捨て、そう呟くと──


 その場に絶叫が響き渡る。


「てめぇ……何しやがった……」

「別に? だけだけど? とりあえず、五月蝿いから眠れ──」


 俺は眠り薬を男達に使って静かにさせる。



 頭にある新技の案を初めて使って型にした割には上手くいった方だろう。


 問題はこれが強者に通用するかどうかだ──


 そう思っているとマイから声がかかる。


「さすがエルク様です……あんな使をするなんて……」


 マイには俺が何をしたのかわかったのだろう。マイは何故か俺の『』を見破るからな……。


 マイにわかるぐらいだ……気配が敏感な高ランク冒険者には通用するか怪しいな。


無音サイレンス』や『慈愛の誓い』には通用しない可能性が高い。


 まぁ、無いよりマシな程度に考えよう。練度を上げれば通用するかもしれないし──


 この技はとして使えるはずだしな。



 ──!?


 しまった……新技に集中し過ぎたな。誰かに見られている。


『索敵』に反応が無い所、俺に対して敵意は無い。


 だが、『慈愛の誓い』のメンバーとの鬼ごっこ(逃亡)で鍛えられた俺の第六感は確かに視線を感じ取っている。


 しかも、かなり強者だろう。マイは気付いていない。


「マイ、こいつらを冒険者ギルドに連行してくれないか?」

「エルク様は?」

「俺は先に戻る。ここの冒険者ギルドは出来ればあまり顔を出したく無い。頼めるか?」

「わかりました。理由はどうします?」

「強姦未遂でいいだろう。また後で会おう」


 マイはロープで男達をくくりつけて引きずりながら冒険者ギルドへ歩いていった。


 その姿を見た俺はドン引きした。


 マイよ……どれだけ力が強いんだ……。


 さて、こっちも口止めぐらいはしておかないとな。


 俺は『幻影魔法』でさっきまでと同じ光景を作り出して、がいるであろう場所に向かおうとするが──


「──お兄ちゃんは?」

「──!?」


 気付けばフードを被った少女が俺のにいた。


 しかも、裏の通り名を知っている。


 冷や汗も出ているし、パンツも冷たい。


 パンツは決して小便を漏らしたわけではないとだけ明記しておく。


「ねぇ、お兄ちゃんは蜃気楼なの? 私は『無音サイレンス』って少し前まで呼ばれてたんだ。同じ裏の人なんでしょ? ちょっとお話しない?」


 何故、『無音サイレンス』がこんな所にいやがる。


 いや、それよりも戦えば殺される──


 それだけは間違いない。


 新技が少しでも通用すれば良いなぁとか思っていたが、さっきの身のこなしは全く反応出来なかった……使う前に確実に殺されるだろう。


 だが、こいつは今の所はは無い。


 話し合いがしたいのなら付き合うべきだ。何か情報を得れるかもしれないしな。


「……良いだろう」



 俺は『無音サイレンス』の後を歩いていく──



 蜃気楼とバレてはいるのは何でだろ? 裏の仕事の時は接触した事がないはずなんだがな……髪の色も違うしな。


 それより、俺のパンツはいつ履き替えようかな……ぶっちゃけると命の心配より今はパンツの方が深刻だ……ズボンに染み込んでいないか心配すぎる……。


 ベタベタするし、冷たい……何より気持ち悪い……どこかにトイレはないかな……。

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