第17話

 朝食を済ませ、皆にお菓子を配った俺はマイと一緒にに向かう事にした。


 向かう理由は簡単だ。今の所はからだ。


 俺が殺した連中が帰らないから偵察をしに来ているが、そいつらもしている。


 まぁ、バレるのは時間の問題だろうが、時間の余裕はあるだろう。


 何かあれば俺の分身体が知らせてくれるし、雑魚なら始末してくれるから時間稼ぎも出来る。


 なんせ『分身』は身体能力は多少下がるが、スキルは普通に使えるからな。更に情報も常に入ってくるのはありがたい。


 なんとも便利な力だ。こういう力をくれよな……。



 それと、冒険者ギルドに行く理由は冒険者証が必要だからだ。


 今回の任務はがある。


 なぜなら、『慈愛の誓い』のメンバーが俺を探していると仮定した場合──


 馬車とかで移動してたら後1日か2日ぐらいしか時間がないだろう。


 今回の件で生き残れるかわからないが、生き残れた場合、冒険者証が無いと移動が難しくなる。



 つまり、遅くても2日以内に全てを終わらせて街を去らなければならない。


 それまでに【祝福ログインボーナス】で当たりを手繰り寄せるしかない……。



 そんな事を考えながら、マイと道を歩いていると話しかけられる。


「子供達凄く喜んでましたね」

「そう、だな……」


 確かに子供達は俺が【祝福ログインボーナス】で得た『高級お菓子(大量)』を配ると目をキラキラとしながら喜んでいたな……シスターも……。


「あんなに大量のお菓子どうしたんですか?」


 なんかマイから探りを入れられている感じがする……。


「少し前に貰ったんだ。まだあるから欲しかったらいつでも言えばやるぞ?」


「貰ったって……今日配ってたお菓子だけでもかなりの値段がすると思うんですが……」


「そうだな……たぶん、今日配った分だけで軽く金貨数枚は飛ぶだろうな。だが、これをくれたは恵まれない人にあげてくれと言っていたような気がする。だから俺は気にせず配る」


 お菓子をくれたのは神様だが、これだけ大量に俺にくれたという事は孤児院にいる子供達にも配れというお告げだろう。


 そもそも、俺はそんなに食わねぇからな……。



「エルク様はやはり素晴らしいお方ですね。おっぱい揉みます?」


「何言ってんだよ……勘弁してくれ。せめてお前が単独で討伐ランクSの魔物を撃破出来るなら考えるわ……」


「ふむふむ、では強くなりますねッ!」


「そうしてくれ」


 まぁ、強くなって損は無いからな。それにリーシェさんと渡り合えるぐらい強ければ、仮に過ちが起こっても逃げれる可能性が上がるし──


 魔契約を破った時に出てくる激強さんを倒せるぐらなら更に嬉しい……後は処女でなければ迷いはないだろう。


 ……ん?


 意外と俺ってマイの事気に入ってるのか?


 ふと、そんな事を思う。



 とりあえずは『無音サイレンス』をなんとかする事が最優先だが。


 俺の予想通りに事が運べば、俺達の相手は『無音サイレンスになるはずだ。


 しかし、今のままでは負ける。新しく戦略と戦術を考えて組み直さないとダメだろうな。



 マイと雑談しながら、なんとかする為のプランを考えていると冒険者ギルドに到着した。


「到着しましたね! 私は隣にいればいいですか?」

「あぁ、冒険者ってのは素人や新人に絡んでくる事が多いからな……」


 十中八九絡まれるだろうな……なんたってを連れてるし……。


 考えていても仕方ないか……絡まれたら絡まれたで新しいが試せるし別にいいか。どうせ絡んでくるのは低ランクだけだしな。



 俺は中に入る──



 ギロリと注目の視線を浴びる──



 もちろん浴びているのはマイだ。



 俺には嫉妬の視線しか来ない。皆おっぱいが羨ましいのだろう。



 俺は受付カウンターにいる受付嬢の顔を見る。


 ターゲットは──あいつだな。


 俺は足を進める──



 ここの受付嬢の古株は俺を絶対に知っている。髪型の色を変えたぐらいではバレるかもしれないからな。


 用心の為に見た事が無い新人の受付嬢が無難だ。



「すみません、冒険者の登録をしたいんですが?」

「あ、はい。ではここに名前と年齢、職種をお願いします」

「わかりました──」


 良し、滞りなく済みそうだな。


「書けました」


 俺は書類を書いて新人受付嬢に渡す。


「へぇ〜さんというお名前なんですねッ! 様と同じ名前ですね!」


 こう言われるのも予想済みだ。


「そうなんですよ〜。同じ名前なので憧れてたんです! でも……確かこの間死んだって聞いたんですが──本当ですか?」


 我が飲み仲間であるプリッツがちゃんとしてくれたか確認作業をする。


「はい……残念ながら、街を守る為にドラゴンと激しい一騎打ちの末に亡くなったと聞いています……パーティの方々は死んだ事に納得されてなくて、向こうのギルドの建物がしたそうです……」


 …………これは捕まるとヤバそうだな。


「そうですか……やはり噂通りなんですね……」


「はい……この街も彼にたくさん守って頂いたので住民も悲しんでいます……そんな彼の貢献にギルドは名誉報酬でSランクに昇格されました」


「は? どゆこと? 死んだのにランクが上がるの?」


 普通のドラゴンを撃退しただけで?


「はい、今回の魔物は属性竜より上のランクである──災害級の『』でした。それをたった1人で撃退した貢献度は計り知れません。街だけでなく、国をも救った英雄に最大限の報酬をと──国からも通達があったそうです。あ、これ冒険者証です。ランクはFからになります。説明はいりますか?」


 ──なんだってェェェェェッ!?


 あのドラゴンって、普通のドラゴンじゃなかったのか!?


 これ、絶対に生きてるのバレたら色々やべぇじゃん!?


 神様ァァァァッ、次こそは『変装』スキルを下さいィィィッ──



 というか返事せねば──


「セツメイ、イリマセン。アリガトウゴザイマス……」


 片言で言葉が出た。


 そこからショックで意識は朦朧となった──



 ◆



 エルク様がギルドで自分の事を聞かれている姿に笑いそうになりました。


 しかし、話を聞く限り──


 やはり、エルク様は凄い人だと再度思いました。


 まさか──ドラゴンの中でも最上位クラスである魔竜を1人で撃退しているなんて……。


 更に死んだ事になっているはずなのにSランクに昇格している事実を聞かされたエルク様は硬直されます。


 さすがに死んだ事になっているのにバレたら拙いですよね……。


 こんなエルク様初めて見ました。


 ここは私がなんとかしないと──


 私は気を利かせて外に連れ出しました──


 路地裏まで連れ出して、エルク様に声をかけますが、返事はありません。


 相当ショックだったのかもしれませんね。


 ここは私正気に戻す必要があるでしょうッ!


 の仕返しもしますよ〜ッ!


 さすがにキスはダメです。初めてのキスはロマンチックな場所と雰囲気が良いですからね。


 とりあえず──


 を握ります。



 うわッ、大きい……こんなの入るのかしら?



 ダメダメ、今は正気に戻す方が最優先です。


 確か──


 前世での記憶では擦りながら動かせば気持ち良いと聞いた事がありました。



 私は服の上から手を動かします。



 すると──


「──ゔッ──?! マイ!? おわッ!? おま、何してんの!?」


 あそが濡れると同時にエルク様は覚醒されます。


 このベトベトしてるのて……あれですよね?


 こんなに早く逝くものなんですね……もしかして──


「エルク様は──なんですか?」


「──違うッ! これはあれだッ! お前が最近誘惑してくるから我慢の限界だったんだよ!? 断じて早漏ではないッ!」


 私は凄い勢いで慌て出すエルク様を見てクスッと笑います。


 それを見たエルク様は更に言い訳を話し出します──


「やっぱり、私でも大丈夫なんですね」


 そうボソッと呟きます。


 私の胸に触れさせた時に勃っていたので魅力が無いとは思っていませんでしたが、今回ではっきりしました。


 このまま、いつか抱いて頂ける日が来るかもしれませんね。


 あれ?


 そういえば、魔契約があり抱かれないから私に依存してもらうように色仕掛けしてましたけど……抱かれるのが嫌じゃない?


 私──


 いつの間にかエルク様の事が好きになってる?



 慌てふためくエルク様の目の前で私は顔を俯かせて赤面します──



 凄く恥ずかしい。


 そんな事を思っていると──


「おいおい、こんな所で朝っぱらからお盛んだなぁ? 姉ちゃん俺らも相手してくれや」


 冒険者ギルドにいた柄の悪そうな男達が私達を囲みます──


 こんな時にテンプレとかいらないんですけど!?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る