第15話

 とりあえず──


 マイは一旦置いておいて、今は子供達を移動させなければならない。それと死体もだ。


「シスター、子供を頼めるか?」

「お任せ下さい──」


 シスターは子供を運び出していく。


 俺は『無限収納』に死体を放り込んだ後にマイと違う部屋に移動する。


 その間に俺はマイから『格好良い』と言われたのか疑問だったので聞く事にした。


「マイは……俺の事が怖くないのか?」


「怖くなんかありませんッ! だって子供を助ける為じゃ無いですかッ! それに冒険者なのに実は裏組織の最強ッ! シスターとのやり取りを見ている感じだと──誰にも素性は知らせず、弱き者の味方──つまりダークヒーローですッ! 最高じゃないですか! 私の大好物ですッ! それに────」



 …………なんか勢い良く話し出したぞ?


 シスターとの話をしっかり聞かれていたようで俺が裏組織の人間と勘違いされている事と、俺への好感度が高い事が良くわかる内容だ。


 少し狂気じみてる気がするが気のせいだろう!


 そう、俺は愛されキャラだからな……たぶん。段々自信がなくなってきた……。



 更に途中から、マイを置いていった事も言及される。かなり激おこだった。


 手紙ぐらい置いて行けば良かった……。


 かなり不安にさせたようだったから反論などせずに黙って聞く事にした。



「──エルク様は弱き者を救う素晴らしいお方です! ほらこの胸の高鳴りがわかりますか?」


 話が終わった、そう思った瞬間──


「──?!」


 マイは俺の手を引っ張りに突っ込む。


 この時、俺は裏組織の事が他にバレたら困るから口止めは必要だろうとか考えていたのだが──おっぱいに腕が挟まれて思考が吹き飛んだ。


 今の心の中は『おっぱい』の言葉で埋め尽くされている。


 顔がニヤけているのが自分でもわかる。


 そして、鷲掴みにしたい欲求が凄い。


 以前はこんな事はなかったのにな……──はッ!?


 まさか──毎日触らされていた弊害か?!


 これはもしかしての証拠なのか?!


 しかも手が出せないからおっぱい触っても我慢するしかない……それなら後でこっそり一人でするしかないが──この感じだと今後は離れてくれないだろう……。


 それに気付いた俺は凹む。


 マイから襲う事はないと前回でわかっている。この『いつでも襲ってきてもいいですよ?』と言わんばかりの誘いに我慢しなければならないとは……。


「……この件の事は内緒だぞ? 後、手を離せ────!?」


 とりあえず口止めをし、煩悩に負けそうな俺は手を引き抜こうとするが──


 マイはおっぱいを挟んで止める。


『ぬおォォォォ、柔らかさがァァァ』


 ──と、心の中でもう1人の俺が叫んでいる。


 ちなみに心の中にはもう1人いる。そいつは『しっかりしろッ! 相手は処女だぞ!?』と叫んでいる。


 そんな俺にマイは追い討ちをかけてくる。


「え? 嬉しそうにしているじゃないですか? 遠慮しなくて良いんですよ?」


 必殺の上目遣いだ。



 本当、勘弁して下さいィィィッ!


 股間が痛いのッ!


 股間をモゾモゾとしている俺を見てマイは悪そうな顔を一瞬すると手を解放する。


「今日はこれぐらいで許してあげますね♪」


 何故かご機嫌だった……。


 許してもらえたようなので良かったと思っているとシスターが子供を運び終えたのか、こちらへ来た。


「子供を移動させました──その方と蜃気楼様のご関係は? 出来れば部外者は出て行って頂きたいのですが?」


 シスターは怖い雰囲気で問いかけてくる。


 なんかさっきと雰囲気が違うぞ?


 なにより、が小さくなってないか? パットでもしてたのか?


 なんだろ……今の俺って服の上からでもおっぱいの大きさがわかるっぽい……──はッ!?


 まさかで新しい力が目覚めたのか!?


 ……せめて戦闘関連で新しい力が目覚めて欲しかったな……。



 キッとシスターから睨まれる。


 きっと俺が失礼な事を考えているのがわかったのだろう……中々の殺気だ。マイが少し後退りしている。


 とりあえず、この空気は俺が失礼な事を考えた事が原因である可能性が高いから責任を持ってなんとかせねばな……。


「こいつは俺の奴隷だ。部外者ではない。それよりもはその内敵にバレるだろう。作戦会議をする」


 俺は堂々と何も無かったように答える。

 奴隷は基本的に所有物扱いだから問題ないし、こう言えば言い返される心配は無いだろう。


「……わかりました」


 シスターもわかってくれたようだ。


「では、作戦会議を開始する──」


 2人は頷いたので俺の考えを伝える──



 ────


 ────────


 ────────────



 大まかに作戦を伝えて会議は短時間で終わった。


 作戦内容は簡単だ。


『成り行きに任せましょう』


 ──だ。


 ぶっちゃけると敵戦力がわからないから俺が動きたくないだけだ。


 俺はヘタレなんだ。


 不意打ちとかじゃないと勝てないのに強い奴相手に真っ向勝負とか勘弁願いたいのだ。


 敵の手駒はBランク冒険者相当の2人をあっさり殺している。まともに相対すれば間違いなく俺はやられるだろう。


 不意打ちで勝てるなら、さっさと行動すれば良いじゃないか?


 そう思うだろう?


 当然ながらシスターやマイからも似たような事を言われた。


 今から急襲すれば今回の依頼は達成出来る確率は高いだろう。


 しかし、俺はヘタレなんだ。


 さっきも言ったが、せめて相手の情報ぐらいは知りたい。


 強い奴なら情報ぐらいあるはずだからな。


 俺は基本的にヘタレだからちゃんと下調べしてからじゃないと動きたくないんだ。


 でもな……2人にそんな事は口が裂けても言えない。


 だってさ……俺が裏組織でもトップを争う【絆】の最高幹部であるラウンズで最強だと思ってるんだぜ?


 言えるかよ……だから心の中で俺はヘタレだと連呼して平静を保っているのだ。



 だから俺は2人にこう言った──


『これぐらいの案件なら相手が動いた所で仕留めたら問題ないだろう? この事態に敵が気付いた場合──ここを守る者がいない。俺は子供達の命を最優先にしたい』


 ──と。


 2人は目を輝かせて賛成してくれた。


 そして、シスターには俺達2人は孤児院にしばらく厄介になる事も伝えた。『慈愛の誓い』のメンバーもまだここへは来ないはずだしな。



 まぁ、そんな感じだ。



 しかし、一つ早急になんとかしないといけない問題がある。


 会議中、何故か2人から超されていたせいで──


 俺の股間がいつ暴発してもおかしくない事だ。


 正直、股間が痛い。



 これは今後の為にしてくる必要がある。


 もちろん、敵の視察ではない。いや、一応そっちも調べるが──


 本番無しのお店(娼館)があると聞く。そこが今回メインの視察になる。


 我慢はダメだからな。


 さすがに襲ってきた敵は全滅させたから直ぐ襲われる事はないはずだ。ちゃんと『索敵』で調べたからな。


 2人には実体のある『分身』を置いておけばバレないだろう。


 マイは知っているからバレる可能性があるが、時間稼ぎぐらい出来るはずだ。


 その間に一発抜いて、敵の視察をする。これしかないな。



 俺は隙を見て分身体を残して孤児院から抜け出す──



 結果的だけを言うと──マイには直ぐ脱走した事に気付かれて捕まった。


 視察と伝えると納得してくれたが……。



 何故、直ぐにバレた……解せぬ……。

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