第12話

 俺は倒れそうなマイをおぶって宿屋に運んだ。


 到着するまで、マイがおっぱいを背中に押しつけたり、首筋を舐めたり、俺の耳をはむはむされたので勘弁願いたかった。


 しかも──宿屋の店員のおばちゃんに『あらあら熱々ね〜部屋はダブルにしとくよッ! しっかり!』


 ──と言われるぐらい見る人が見ればしている事がわかる。



「はぁ…はぁ……んん──エ、エルク…様……」


 今も宿屋のベッドに座っているとマイは発情しながら俺の太ももの上に乗って股間を擦り付けている……。


 力も俺より強いから振り解けない……さっき引き離そうとしたら腕を掴まれて骨を折られるかと思った……マイに奴隷紋の痛みが出ないように抵抗は諦めた。


 あぁ、朝の逃亡ルーレットの『身体強化』があれば力でなんとかなったかもな……──は!?


 まさか──その為のチョイスだったのか!?



 だが、これぐらいは慣れている。


『慈愛の誓い』で鍛えられた鋼の精神の前では俺から手を出す事は無い。


 まぁ、俺も健全な男の子だからあそこが辛いのは辛いし──


 このまま実力行使されると拙いのでさっさと解決策を探さねば。



 怪しいのは服屋の店長からお釣り分で貰っただろう。



 俺は指輪に『鑑定』を使う──



の指輪】



 ──と表示される。


 そのまんまの名前で頬が引き攣った。



 ってか、あの店長──何渡してくれてんですかねぇッ!?


 最後の悪そうな顔の理由はこれかッ!


 また変な説明文が下にあるな……またろくでもない内容だろうが、一応確認しとくか……。


 どれどれ〜。



【説明文】

 これを装着すると、本能の赴くままに子供を孕みたくなる。

 今ではになっていて貴族には大変人気の一品。

 作成者がこれを作った経緯は『一生童貞は嫌だッ! サキュバスみたいに女の子から襲ってくれねーかな〜』という不純な動機から開発された。

 尚、服屋の店長の意図は『犯罪奴隷だってご主人様の寵愛を貰ったら、それなりの人生は歩めるわ。お嬢ちゃん頑張れッ!』です。どうやら昔、貴族のガサ入れで入手したようです。しかもしかも──更にサービスで超エッチな下着もプレゼントしてくれてます♡



「…………あんの店長……」


 販売禁止にされてるぐらいだ……貴族はろくな使い方をしないんだろうなぁ……。


 そして、作成者はかなりモテなかったのだろう事が予想される。

 逆レイプ願望とは恐れ入る。俺には一生理解出来ないな。


 あと、店長! ガサ入れの証拠の品を懐に入れるなよな!?


 しかも超エッチな下着とな! 少し見てみたいけどさ!


 …………というか──まだ下に文章があるな……追伸?



【追伸】

 抱けば泥沼確定間違い無しッ!

 貴方は『』を滅茶苦茶にしたい性癖ですからね〜!

 指輪の作成者と同様、貴方も歪んでますね〜(笑)



 うぉいッ! 知った風に書くなよな!?


 俺は弱ってる人じゃなくて、優しくてお淑やかな人が好きなんだよッ!


 ベットでの行為も『慈愛の誓い』の連中みたいに野獣のように襲ってくるんじゃなくて、受け身の人がいいのッ!


 だから歪んでねぇよッ! 普通だろ!?


 しかも最後の『笑』って煽ってんのか!?



 ピコンッ


【追記】

 抱いたら本末転倒ですよ。我慢出来るならしてみろ!



 むっきィィィッ! んなもんわかっとるわッ!


 なんなのこいつ!? 腹立つわァァァァッ!



 ……はぁ、心の中で文句言っても何も始まらない……とりあえずこれなら指輪を外せば問題ないだろう……。


 俺はマイに視線を移すと──


「──しまった──」


 マイは我慢の限界になり──


 俺をベットに押し倒す──


 拙い!? ──


「……お、願…い……します──んです……」


 ──と思ったが、実力行使ではなく、マイから懇願された。


 俺の上に乗りながら豊満な張りのあるおっぱいを擦り付けながら、上目遣いで恥ずかしそうにだ。



 ──ヤバい。これはヤバい。破壊力がありすぎる。


 今まで襲われる事はあっても──ここまでエロい顔でお願いされるように言われた事は無い。


 俺の胸が熱くなる──


 ──ダメだ。耐えろ俺。


 このままでは『鑑定』に記載された通り、本末転倒だ。


 しかも泥沼確定。


 あいつらに無茶苦茶された日々を思い出して萎えさせるしかない!


 でも、おっぱいの張りがあって超気持ち良いんだ!


 だが、俺は子供達の未来の為に頑張らないとダメなんだ。ここで煩悩に負けるわけにはいかないッ!



 それにこいつはだッ! 



 そう、処女なんだッ! 絶対に手を出してはならない処女なんだッ!



 俺はカッ、と目を見開く。



 ふぅ、目が覚めたぜ。


 そう処女に手を出してはならない。これはもはや俺の座右の銘みたいなものだ。



 俺は『無限収納』からを取り出し──


 マイに使うと、すぅすぅと寝息をたてて眠る。



「ふぅ……危なかった……」


 本当に危なかった。理性が吹き飛ぶかと思った……。


 俺の鋼の精神にも弱点があったのか……エロい顔で懇願されると精神をガリガリ削ってきやがるぜ……。



 今後は気を付けよう。


 マイの付けている指輪を外して『無限収納』に放り込む。



 これで今後、過ちは起こらないはずだ。



 さて──もう、夕暮れだな。


 の下調べをするか……。



 俺はテーブルに宿屋の食事代と何か必要になった時用に少し多めの金額を置いて外に出る──



 ◆



 私は目覚めると、1人でした。


 既に日は暮れています。


 何で1人で寝てるんだろう?


 確か──服や下着を買って貰って、プロポーズされた後は胸が熱くなって、エルク様におんぶで宿屋まで連れて行かれた?



 胸が熱くなった?



 ──!?



 思い出した……なんか指輪を付けた後、凄くエッチな気分になって──


 エルク様におっぱい当てたり、舐めたり、なんか色々してた!?


 耳まで真っ赤になっているのがわかるぐらい自分の顔が熱くなっているのがわかる。


 寝てしまってたみたいだけど──


 抱かれたのかな?


 周りを見渡すと特に物が壊れたりはしていない。つまり魔契約が発動してないから抱かれてはいないか……。


 どうしよ……私はこんなにエッチじゃなかったのに……。


 どんな顔して会えばいいの??



 ふと、テーブルを見ると金貨が3枚置いてある事に気付く。



 まさか──



 私に嫌気が差して捨て……られた?


 これは──手切金?



 ──いや、まだ決めつけるには早い。奴隷を手放す場合は奴隷商人を通す事が義務付けられているはず。


 ただ外に出ている可能性だってある。


 いえ、奴隷商人の所で私を売り払う算段をしている可能性もあるかもしれない。



 とりあえず真意を確かめる為に探さなければ──



 服屋に行く前に私はエルク様を見失わないように魔力でしている。


 転生者舐めないでよねッ!



 私は部屋を飛び出します。



 仮に私を売ろうとしている場合は──



 前世の知識やどんな手段を使ってでも阻止するッ!



 絶対に逃がさない──

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