第10話

「さて──冒険者ギルドに行く前に、髪の毛を染める為に買い物に行こう……明らかに門番にバレてたからな……」

「ですね……エルク様は凄く有名なんですね」

「そう、だな……Sランクパーティな上に男1人だけだったから有名だ……さぁ行こう……フードぐらい被るか……」


 俺はフードで顔を隠して街中を歩き出す──


 しばらくして視線を浴びている事に気付く。


 …………目立たない為にフードをしたはずなのだがな……。


「なんか凄く見られてませんか??」


 注目されている理由は──


「──十中八九のせいだな……」


「え!?」


「お前の豊満なの破壊力が抜群だからだ」


 そう、歩く度に振動でバルンバルン揺れるおっぱいに男共は釘付けだッ!


 せめて、ちゃんとした下着や防具をつけていればそこまで揺れないのだが──


 現在はノーブラな為、微振動でさえおっぱいはプルルルルンと震える。


 これは男の浪漫だ……巨乳好きには見逃せないだろう。


 ちなみに俺はもう街に到着するまでに十分堪能したから特に見ていない。


 街中は整地されていてそこまで揺れないからな。


 やはり、道中の凸凹のある道が1番揺れて良かった。



「うぅ〜いやらしい視線が嫌です……」

「まぁ、マイの服や防具、下着も買うからこういうのは減るだろう。もう少しだけ我慢しろ」

「え!? 買ってくれるんですか!?」


 むしろ俺が『え!?』と言いたいんだけど!?


 俺って奴隷を露出させるような奴に見えてるのか!?


「……当然だろ……蓄えはあるから好きな服とか買えばいいぞ?  ほれあそこにちょうど服屋がある。先に行って選んで来い。俺はちょっと他に必要な物を買ってから行く」


「はいッ!」


 マイは一瞬で服屋に移動した。

 あそこの服屋はあいつらがよく行ってたから品揃えも良いはずだ。


 とりあえず、このまま店に行けばまたバレるから──さっさと髪の毛を染める薬剤か、魔道具あたりを買ってから向かう事にするか。


 どうせ女の買い物は時間がかかるだろうし、時間は大丈夫だろう……。




 しばらく歩いていると──



「もし──」


 女性から声をかけられた。


 声だ。


 ふと視線を移すとフードを被った人が机の上に水晶を置いて座っている。


 占い師だ。だが、こいつはおそらくしている。


 これまでからな。今回厄介方は勘弁願いたい。


 そのまま過ぎ去ろうとすると──


「もし──」


 また、声をかけられたが、更に一歩前に進む。


「そこの『先見』さん──」


 フードを被っているのに明らかに俺が誰かわかって声をかけているな。


 絶対、の奴だな。


 更に無視して踏み出す──



「そこの女難の相が出ている人──」


 知ってるわッ! と心の中で叫びながら更に無視して進むと──


 女性の声音が低くなる──



「──おい、そこの


「うぉいッ! 誰が処女キラーだ!?」


 聞き捨てならない言葉に俺は反論する。


 この女が大声過ぎて、周りの視線が痛い。フードしといて良かったぜ……。


「やっと、こちらに来て頂けましたね?」


「そんで、なんなんだよ? 占いとか別にいらないんだが? ってか、今はは厳しいぞ」


「まぁまぁ、そう言わず──今なら私が使っている? 必要ですよね?」


 事情はわかっている──か。


「話を聞こう」


 それに報酬が今まさに俺が1番求めている物だ。



「では単刀直入に──こので怪しい影が動いています。原因を突き止めて排除をお願いします。おそらく──非合法な人身売買です。既にけっこうな人数の子供が拐われています」


 これは俺個人への依頼だ。


 スラムにいた頃、友達だちが小さな裏組織を作った。俺もそこに冒険者になるまで所属していた。


 冒険者になった後も、たまにこの変装の達人に接触されて依頼を受ける事がある。


 なんせトップが俺と友達だちだから──こうやって便利使いしやがる。


 一応、世間ではこんな事をしている事はバレていない。その辺はちゃんと組織がフォローしてくれている。


 今の状況では断るのが正解なのだが、俺に来る依頼は大体がスラムの救援関連が多い。断り辛いし、報酬が今の俺に必要な物だ。


 受けるのは確定だ。



「そうか──わかった」


「どうか──『救いの手を』──」


「あぁ、『救いの手を』──」



 俺は変装魔道具を受け取り、その場を後にした。


 最後に言われた言葉は──組織で任務を受ける時の挨拶みたいなものだ。


 俺がスラムから出て冒険者になる時──


『スラムの住人だって生きる価値があるって証明しようッ! 僕は裏から頑張るッ! だから──冒険者になってもまた力を貸してねッ! 合言葉は──『救いの手を』だよッ!』


 そう涙を流しながら言われ、約束したからな。


 俺もSランクパーティで鍛えられ──たまに手伝っていると組織は急成長し、更に大きくなっていった。


 その結果、死ぬ運命だった孤児達は救われている。そして、それは今も変わらない。



 いつか──平等じゃなくても、スラムの住人がとして扱われる世界ってやつを俺は見てみたい。



 だから、俺は裏家業から完全に足を洗わずに子供達の未来の為に手伝っている──



 それに俺は本来──


 だからな……この手の任務は向いている。高ランクの魔物を相手にするよりも数段楽だ。



 まぁ、サクッと依頼を済ませて違う国へ移動しよう。



 さて、とりあえずはマイとの合流だな。

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