第7話
「…………マジかよ……」
ルーレットの結果を見て俺は呆然とする──
あれだけ祈ったのに……『分身』スキルとは……。
これ使えるのか? 『幻影魔法』と似たような効果ならマジでハズレなんだが……。
とりあえず『鑑定』だな。
確かめてみようとすると───
「おはようございます……」
マイがテントから出て挨拶をしてきた。
「……おはよう…………さて、飯食って行くか……」
俺は挨拶を返して、とりあえず飯食って街に向かう事にした。
『分身』スキルがハズレではないと信じたい……道中で調べよう……。
◇◇◇
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『分身』:能力はオリジナルより劣るが、魔力を消費して実体の分身体を作る事が出来る。
ほほぅ……なるほど……今回はまともな文章だな。『幻影魔法』とは違うのは実体を伴っている所だ。これは当たりかもしれんな……。
逃げる時に陽動として使えそうだ。他にも使い道がありそう──
──ん? まだ下に何か文章があるな。追記?
どれどれ──
追記:陽動として使えると思ったそこの貴方ッ! 甘いッ! 砂糖よりも甘いですよッ! 世の中そんなに甘くありませんッ! 君の元パーティメンバーと相対した瞬間に負けは決定されているのですッ! 本当の当たりは魔道具の『透明マント』でした! 残念ッ! 使い方次第でなんとかなるかもだけどねッ! まぁ、頑張りなッ!
……いや、本当これ書いてるの誰だよ!? 一発ぶん殴りたいんだが!?
『分身』が当たりだと思った瞬間にハズレと言われたんだが!?
わざわざ、上げて落とすなよなッ!
とりあえず……手頃な魔物がいれば試したい──
そう思っているとマイから大きめの声で呼ばれる。
「──あのッ!」
「……ん? あぁ、すまんすまん。考え事をしていたんだ……どうかしたのか? あぁ、朝飯が足りなかったんだな。済まない街に着いたらたくさん食べさせてやるから少し我慢してくれ」
マイを見ると──思い詰めたような表情をしていた。
昨日の食べっぷりからすると、朝ご飯が足りなかったのかもしれないと予測する。
「失礼を承知して申し上げても構いませんか?」
「良いぞ」
飯の事がそんな重大な事なのだろうか?
もう『日替わり定食』が無いぞ?
「──ご主人様は童貞なのでしょうか?」
「ぶふぉッ──……違うわッ!」
──返って来た答えは俺の右斜め上だった。
「しかし、犯罪奴隷は好き放題されると聞いています……」
な、なるほどな……胸をいきなり揉みまくるような俺が夜に手を出さなかったのが不思議なようだ。
だが、手を出すとしてもこの『魔契約』をなんとかしてからだ。居場所がバレるからな。
「諸事情で──無理なんだ」
「では──不能なんですね……」
ちっがァァァァうッ!!!!
変な勘違いされたぞ!?
俺は健全な男だッ!
「それも違うッ!!! 断じて不能では無いッ!」
「ですが、昨日は私の胸を揉んでも勃ってませんでしたが? それとも貧乳や幼女好きとかですか?」
よく見ているな……観察眼はあるようだ。
とても理不尽な事を言われているが……。
だが、一つだけ言っておこう──
「マイよ──俺はあれぐらいじゃ慣れ過ぎて反応しないんだ」
そう俺は『慈愛の誓い』でこういう事はしょっちゅうあった!
その部分だけ取れば──もはや賢者様と呼ばれる人の領域にいるだろう。
断じて不能では無いッ!
それにおっぱいは貧乳であってもおっぱいはおっぱいだッ!
「つまり──私に女としての魅力が無いという事ですね……」
それも違うが……もう何でもいいや。
実際の所、マイは街ですれ違ったら10人が10人全員が振り向くぐらい魅力的だとは思うがな……特におっぱいの破壊力で。
「……まぁ、とりあえず俺は不能では無い……諸事情で手が出せないだけだ……それに──」
「それに?」
「お前──処女だろ? 俺は処女に興味は無い」
「…………」
顔を赤らめて俯くマイ。
この反応は処女確定だな。
「俺はもう処女には二度と手を出さん」
マイが処女確定した以上は断固手を出さん。
ちなみに『慈愛の誓い』のメンバーは俺が入った事により処女ではなくなった。
俺が入団してから頂かれたからな……喰われたと言った方がいいな。
初めての人というのは女性にとって特別なのだろう。
それ以降、パーティ名は『慈愛の誓い』に変わり、あいつらの束縛は俺の予想を超える方向で発揮された。
だが、これだけは言っておく──
断じて俺から手は出していない。そして俺は被害者であると。
パーティに入った頃は役得とは思った……最初だけはな……。
だがな──
『今日は寝かせませんよ?』
とか悪魔のような笑みを浮かべて毎日襲われてたら、パーティから抜けたくもなるだろ!?
金持ちとか貴族とかハーレム多いけど──
──何が良いんだよ!?
手足をベットに縛られて逃亡出来ないようにされるんだぜ?!
仮に抜け出せても圧倒的な力の差で俺は無力化させられる……。
俺は必ず自由を謳歌するんだッ!
そんな事を考えているがマイの声で正気に戻る──
「……ご主人様は──」
「エルクだ。ご主人様とか呼ばなくて良い。俺は奴隷であっても差別はしない」
そう、真面目な話──
俺はスラム育ちだ。スラムの住人は犯罪奴隷と同じように扱われる。
俺にとったら人は皆──等しく人としか思ってはいない。
それを伝えようとすると、マイが話出す。
「……ありがとうございます。──エルク様は私を売るのですか?」
次の言葉に俺は一瞬固まる。
「え? 何で?」
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