第43話

  「カムナガラ トウツノネヤミ

    イヤシフセ アマノタナムケ

    ヤチマタニ タケシタシミチ

    ハグミナリ          」 


  美しい旋律が、古い建物と相まって、哀愁漂わせつつ、辺りを包み込む。


 同時に光が収束し、それは、熱くて胸をかきむしるように手を置いていた、満の手に吸い込まれる。


 カタン。


 足から崩れ落ちるように倒れる静流。

 咄嗟にコーが頭の下に手を差し入れる。

 気を失った静流を抱き留めたコーは、静流が胸の前で抱きかかえるように、香炉を手で包んでいるのに気がついた。

 「満。」

 言って、視線を香炉に促す。

 「そういうことか・・・」

 「何?」

 「その香炉、鳥居の鍵と同じ模様だ。」

 確かに、銅鏡の鏡じゃない方に刻まれた、鳥や果物、葉などが絡み合う模様が、その香炉に施されてあった。

 「鍵に反応した、のか?」

 「香炉が取り込んだように見えた。」

 「だな。」

 「・・・とりあえず、これを片付けないとな。室長の奴、どこまで分かっていたのか。とりあえず、片付けの人員は用意させるか。」

 「香炉は、こっちの処分でいいんだよな。だったら、しぃごと、先に車にいってるわ。さすがに、しぃをこの恰好で人目にさらされんし。」

 「あー、車に静流の着替えはないか。」

 「俺たちのはあるから、俺のTシャツでも着せておくさ。」

 「分かった。静流は頼む。こっちは俺が。」

 「了解。」


 

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