第39話

 「なぁ、静流。あの人ってマジにキオ探偵?」


 よく分からない呼び出しをくらって、そのままの流れでキオの屋敷にやってきた静流達。

 満がよく横になっているソファとその向かのソファには、キオと汗を拭きまくっている健吾の父がいた。


 残りの4人、すなわち、一緒にやってきた静流、満、健吾、そしてこの屋敷にいたコーは、そこに連なったダイニングテーブルに思い思いに座っていた。

 健吾は、静流の隣に陣取っていたが、何度も後ろを振り返り、キオをチラチラと見ていて、我慢できず、静流に質問してきたのだ。


 「えっと、多分?」

 「なんで多分なんだよ。」

 「だって、働いてるの知らないし。」

 「そうなの?」

 頷いていると、ゴチン、と拳骨が落ちてきた。

 「あのな、お前の相続手続きも、学校の手続きも、やったのはキオだからな。」

 そう、満が言う。

 「だから、見てない、って言っただけだろ。」

 「そうそう、しぃはそういう奴だよな。見えないもんは信じませんってか?」

 ししし、とコーが乗ってきた。


 「あ、おまわりさん。その節はどうも。」

 なぜか、健吾がそんな風にコーに言うのを静流は不思議そうに見る。

 「あ、実はさ、この前、静流の家に行こうと思ったんだよね。」

 「え?」

 「たださ、住所が正確には分かんなくて道に迷ったところで、おまわりさんに会ったんだ。」

 「おまわりさん、ってコーさんのこと?」

 「コーさん?ああ、確か丹川高尚さんってIDに書いてましたっけ?」

 「へー、さすがは宮原。あの短時間でチェック詰みとはねぇ。」

 「えっと・・・」

 「会ったのは、交番だ。ほら、商店街の。」

 「ああ。」

 「だけどおまえ満とお出かけ中だったからさ、帰ってもらった。」

 「えー。言ってくれれば戻ったのに。」

 「ったく。静流はすぐそうやってサボろうとするよな。」

 満が言う。

 やぶ蛇だった、と、静流は肩をすくめた。



 「なんだ。全部、僕の空回りみたいだな。」

 突然、健吾が苦笑しながらそんな風に言った。

 「え?何?」

 「ほら、静流は天涯孤独とか言ってただろ。そんなわけないじゃん。普通に家族みたいな人いるじゃないか。」

 「家族みたいな人?」

 「コーさんとか満さん?」

 「へ?」

 「おい、しぃ。へ?ってなんだよ、へ?ってのはさ。」

 コーが静流の頭に肘をグリグリした。

 涙目になって静流は逃げようとするが、ホールドされて、ビクともしない。


 ハハハハ・・・


 そんな様子を見て、健吾は楽しそうに笑った。



 「しぃちゃん、ツインの客間、ちょっと片付けてきて。二人に泊まってもらうから。それと、明日お休みだよね?お友達のところへ行っておいで。運転手は満君で。」

 「えぇー。」

 「ええじゃないの。しぃちゃん、ちゃんと高校生しなさい、って言ったよね。お友達と仲良くするのもお仕事のうちだよ。」

 「でもさ・・・」

 「でもじゃない。ほら、さっさとお片付けに行く。みっちゃん、コーショー君は、二人のお世話ね。僕はご飯をつくります。」


 まだ文句を言おうとする静流の襟首を満がつまんで、強引に立たせ2階へ送り出すと、静流は渋々と、言われた部屋へと掃除にでかけた。


 無駄に大きい屋敷にお泊まり用の客室はそれなりにあるが、静流としてはなんとなく面白くなかった。


 だが、ここの主はキオだ。

 今、キオは目だって笑っていた。

 笑っているうちに言うことは聞くべきだろう、そう、アラートを確認し、不承不承、静流はキオに従うことにした。 

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