第21話

 車は、高速道路に乗り、とあるサービスエリアに到着した。

 3人は、サービスエリアで夕食を取ることにしたのだ。


 「なんだ?不満があるなら言えよ。」

 食べずに皿の唐揚げをつつく静流に、コーは眉をひそめて言った。


 「別に・・・」

 「別にってつらじゃないだろうが。ガキが反抗期かよ。」

 「そんなんじゃないもん。」

 「だったらなんだよ。」

 「さっきの女の人・・・」

 「はぁ?」

 「袴の人だよ!案内してくれた。」

 「それがどうした?」

 「なんか泣きそうだったよ。それに、手を握りすぎて、血が出てた。」

 「だから?」

 「だってかわいそうじゃないか!」

 「はぁ。静流、状況をしっかり見てみな。」

 満が口を挟む。

 「なんだよ、状況って。」

 「コーも言ってたが、あの奥は鍵がないと目的地にたどり着かない仕組みだ。飯家は管理者だが、鍵を持った者の目的地は知らない。だがな、静流が来て、入っていった。目的地は舞財の屋敷だろう、って推測できるな。」

 「でも、僕、名乗ってないよ。」

 「直接顔を知らなくても、推測はつくさ。舞財カエデが亡くなって、子供がキオの手駒に連れられて洞窟へ入ったんだ。ヤツらはこの洞窟を使うような者の情報は集めているだろうし、大概の人間を認識している。そこへ知らない子供。ならカエデの絡み、という推測はすぐに成り立つ。」

 「マジか・・・ばぁちゃんってそんなに有名なの?」

 「有名かそうでないか、といえば、業界では有名だな。子供と孫を亡くしたことで引退した、というのがもっぱらの噂だが。」

 「僕のことも知られてる?」

 「微妙なところだな。子育てしているという噂があるにはあった。だが、俺たちのこともあるし、な。」

 「満さん達?」

 「俺もコーもカエデばあさんには世話になったからな。業界じゃ俺たちは舞財カエデの弟子にしてキオの舎弟って認識だと思うぜ。」

 「それは・・・また・・・」

 「ま、お前が産まれる前の話だ。とにかく、飯家の誰かが俺たちを明楽に売ったってのは間違いないだろう。ひょっとすると、あの女かも知れないし、当主かもしれないぞ。」

 「へ?」

 「そうそう。しぃはご飯やベッドを用意してるって言われてホイホイついていきそうだったけどさ、ご飯には良くて睡眠薬、最悪は致死性の毒が入ってる、なんて可能性だってあったし、寝ている間に鍵を奪われる、なんてのは常識かもよ。」

 「ハハ、何それ?そんな常識知らないよ。」

 「いや、俺、別に冗談のつもりはないぜ。しぃが踏み込んだのはそういう世界だ。覚悟しとけよ。」

 「・・・・」



 あらためて現状を脅かされた静流を引き連れて、車は一路東京へ。

 静流は今日あったことを思い浮かべつつ、シートに身体を沈めていたが、キオの館へと着いたのは、もう日付が変わった頃だった。



 「おかえり~。」


 それでも、キオは3人を笑顔で迎えてくれた。

 彼には聞きたいことが山ほどある。

 満やコーに、いろいろ質問したけど、多くの部分「キオに聞け」だったからな、と、静流はため息をついた。

 だが、静流も体力的に限界だった。

 行きの車で爆睡していたとはいうものの、その後の経験がディープ過ぎて、頭も身体もついていかない。

 そんな様子を見て、キオは静流に、とにかく休むように言い、一人昨日と同じ部屋へと放り込まれたのだった。

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