第28話
市役所で、総合政策課長の伯父と面会した翌日、取材のお礼と、またのお願いで、申し訳ないけど、市役所の観光課を訪問し取材したいので、ご紹介していただけないかと、伯父宛にメールした。
伯父からメールが来た。
観光課の都合の良い日時が送られてきて、OKなら直接観光課にメールを送って、
欲しいファイルがあったら、送ってもらうよう、一緒にメールに書いておけとのこと。
さっそく、観光課にメールを送り、8月上旬に取材をすることができた。
対応してくれたのは、観光課の観光振興係長で、30代後半のおしゃれな人だった。
その内容を簡潔に書くと、次のとおりだった。
来日外国人は、地方都市にはほとんど来てないようだ。
まれに、旅慣れた外国人が来るようになったが、ごく少数で、東京や京都のように、観光バスを連ねた団体旅行客は、将来的にも期待できないと思っているとのこと。
東京都内の免税ショップ、ドラッグストア、デパート、またアウトレットモール等は、外国人観光客の特需で沸いているようだ。
特に、中国人観光客は、バブルの頃の日本人のように、ブランド品を買い漁ってるらしい。
国からは、外国人観光客対策で、観光施設へのWifi設置、ホームページ、観光看板の、多言語化に対し大量の補助金が出るので、市内の各施設の整備を全力で行っている。
外国人観光客と日本人観光客について、今後の推移を質問した。
この勢いだと、外国人観光客は増え続けるだろうが、日本人観光客は、金と暇がある、60代後半から70代前半の団塊の世代が支えているけど、彼らがさらに高齢化してくると、右肩下がりになるのではと危惧している。
また、伯父が言ったように、観光業に従事する若者がほとんどいない、いても短期間で、辞めてしまうことが問題になっているという。
若者の人口が減少し、就職に有利な状況になっているなか、ゴールデンウィーク、お盆、年末年始、それに土日祝日は絶対休めない観光業の人気は低いそうだ。
市としては、県や周辺自治体と共同歩調をとって、あくまでも、市所有の施設整備を優先し、来てくれたお客様の利便性を上げることや、観光ポスターとパンフレットの作製をしていくそうだ。
最後に、
「国が観光立国を目指すような政策をどんどん打ち出し、観光行政が一躍花形になった、印象を受けるけど、どうですか?」
と聞くと、
「うーん、観光って、水商売で、ちょっとしたことで客足が遠のいたり、逆に、増えたりするから、取り扱い注意なんだよね。特に、観光客向けの施設を経営している、 人達は身をもって知っているから、今の流れに乗るか悩んでいると思うよ。まあ、行政はあくまでも、地道なサポートで、出しゃばらないよう気をつけている。」
とのことだった。
そして、
「行政という立場上、特定分野の民間観光施設に対し、宣伝してあげるとか、有利になるようなことができないし、市の観光パンフレットに載せる写真にしても、当たり障りがないような写真を苦労して選んでいるだよ。」
と、ある意味本音を話してくれた。
そして、観光客向けの施設の実態を取材したいのであれば、観光協会を紹介してくれるそうだ。
さっそくお願いするとともに、お礼の言葉を述べ、観光課を後にした。
その日、伯父に無事観光課を取材できたお礼と、観光係長へのお礼のメールを送ると、翌日には、観光係長から、観光協会へ連絡しておいたから、直接協会に電話してくれとのメールが、届き、役所の仕事って迅速だなと感嘆した。
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