第23話
千晴さんのご両親との話し合い、そしてコーヒーとケーキのお茶会が終わったのは、午後4時頃で、もうデートのために出かけるのは無理な時間となっていた。
千晴さんのお部屋で、しばしお話することにした。
部屋に入ると、薄いクリーム色の内装で、柔らかな色が好きな千晴さんらしい。 デスク、ベッド、クローゼットなどがあり、おそらく部屋の広さは12畳ほど、入って抱き合うと、
「今日は、私と旅館のために話してくれてありがとう。お母さん涙ぐんでたけど、 私も聞いてて、ちょっと泣いちゃった。」
私の胸に顔をうずめながら話してくれた。
「今まで、ご両親から聞かれたら、どう答えようか頭の中でシミュレートしてたから、割りとスラスラ答えることができたよ。」
「とても嬉しかったよ。ほんと、私は幸せです。これからも私を幸せな気分にして、くださいね。私も勇樹さんを絶対幸せにしますから。」
千晴さんと私は、そっと唇を重ねた。
そして、ベッドに腰掛け、私は今日ご両親に話した、
「人口減少と高齢化社会への対応~企業の戦略」について、夏休みになり次第資料集めを、するため、夏休みのバイトはお盆前くらいから9月下旬くらいになること。旅館の宿泊者の推移について、ご両親から資料をもらいたので、後でお願いしてもらいたいと、話した。
「私が将来、婿になった時、少しで役に立てるよう、卒論の作成を兼ね今から調べておきたいんだ。よろしくね。」
「そこまで考えてくれてたんだ。ほんと私より年上みたい、ありがとうね」
と千晴さんは言い、再び抱きついてきた。
時刻は5時頃になり、そろそろ現場に行く時間だ、名残惜しいけど、私と千晴さんは、旅館に移動した。
今日、5月6日は平日だが、5月の連休は5月7日(土)、5月8日(日)と続き、二泊三日の行程を組んだ人達は、今日チェックインしてくる。
旅館内は、チェックインして部屋に入る人達と、風呂に向かう人達で混み合っている。
すれ違うたびに、
「いらっしゃいませ」
と挨拶し、夕食を配膳するため食堂兼宴会場に向かう。
夕食の時間は、お客様の希望で、6時と7時を選択できるので、6時から夕食のお客様の配膳だ。
裏方は普段、食事の配膳や食器の片付けは、特別混んでいる時以外はお手伝いしても、いいけど、ゴールデンウィークは、昨年アルバイトした、お盆や年末年始と忙しさが異なり、もう、何でもやらないといけない。
とても激務なゴールデンウィークだったけど、どうにか乗り切り、5月8日(日)のお昼過ぎ、アルバイトが終わり、旅館から帰ることになった。
裏口で、千晴さんのご両親である、女将さん、支配人さん、裏方チーフの見送りを受け、千晴さんの車で送ってもらうことになった。
父親の支配人からは、
「勇樹君、今回もありがとう、本当に助かったよ。また、夏には来てほしいな。今度一緒に、お酒でも飲みたいな」
と、言われ、
「勇樹さん、千晴ともども感謝してます。千晴のことよろしくお願いしますね。あなたのような、若い人に来てもらって、ほんと助かりました。」
と女将さんからは、感謝の言葉とともに、千晴さんとのことも言われた。
「どうも、ありがとうございます。次は夏に来ますから、よろしくお願いします。」
と短く切り上げ、千晴さんの車に乗り込んだ。
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