第11話
その後旅館に着くと、従業員の皆さんから、
「お帰りなさい」
「また、あの焼きそば食べたいな」
と言われながら笑顔で迎えられ、ほっこりした気持ちになる。
大晦日と年明けを温泉旅館でゆったり迎えたいというお客様は多く、旅館も特別メニューで対応している。
夜食として年越し蕎麦のサービス、正月の餅つき、昼食のお部屋での提供等だ。
そのため、従業員はフル稼働、大晦日なんか睡眠時間が2~3時間なんてこになるが、それは気力で乗り切っている。
カレンダーにもよるけど、1月7日頃までけっこうなお客様が滞在している。
そして、私がアルバイトが終わり帰る日、列車の時刻より大分早く、千晴さんが送ってくれることになった。
女将さんと旦那さんの見送りを受け、車に乗り込むと、さっそく千晴さんがハスキーボイスで、話しかけてきた。
「父さんと母さんから、『勇樹君は良い人だから婿として歓迎したいが、まだ若いから、今後いろいろ変わってくることもある。なので、大学卒業まで結論を待ってみたらどうか。それと、深い交際はしないように。』と言われたよ。」
と、大きな瞳をさらに広げ、伝えてくれた。
「それから、今日は食事してから見送ると言って、早めに出てきちゃった」
と、今度は目を細め嬉しそうに言った。
「たぶん、私は一度決めたら考えは変えないから、このまま交際して、大学卒業後に、結婚し一緒に旅館で働きたいと思っています」
と言うと、千晴さんはとびっきりの笑顔で、
「お願いします」
と言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます