第4話
ショッピングモールには2時頃に着き、買い物を約1時間、3時頃コーヒーショップで、落ち合うことにした。
まずは、Tシャツを2枚ほど速攻で購入し、髪留めを売っているショップに入り、品定めした。
ネットで、だいたいの当たりをつけてきたが、実物を見るとさっぱり決められない。
形状の異なるものが多数あり、しかも色は千差万別、このままでは決めることができず、タイムリミットになってしまう。
かなりあせり、店員さんに相談してみようか悩んでいると、
「あれ、ここにいたんだ?」
と、不意にハスキーボイスが聞こえてきた。
横を見ると、何と千晴さんが立っている。
「どうしたの?、プレゼントでも買うの?」
と小首を傾げている。
私は脇の下に汗をかき始めた。
「そうなんです。ちょっと妹に。」
存在しない妹を構築した。
「ちょっと選べなくて、身長や髪の長さは千晴さんくらいです。選ぶの手伝ってもらえますか?」
と、存在しない妹をさらに増築し、お願いすると、
「お姉さんにまかせなさい。」
と言ってくれた。
「妹さんの好きな色とかは?」
と聞かれ、今度は背中に汗をかきながら、最初の頃千晴さんが着ていた、レモン色のワンピースを思い出し、
「たぶん、薄い黄色とか、薄いオレンジとかだと思います。」
と、消え入りそうな声で言うと、候補になりそうな髪留めを選んでくれ、その中から一つを選び購入すると、コーヒーショップに向かった。
コーヒーショップで、ケーキとコーヒーを注文したが、脇と背中の汗は引かない。
妹の話題をこれ以上持ち出されると、何もかも崩壊してしまうので、ここは自分から、話題となるような何かを提供するしかないと思い、
「千晴さん、車の免許はいつとったんですか?」
「大学に入る前の春休み。休日は旅館のお手伝いするから、車がないと何にもできないからね。いつ免許とるの?」
「たぶん、来年の春休みか夏休み頃だと思います。アパートから大学まで近くて、 自転車で大丈夫ですから、車を買うのは卒業し就職してからだと思ってます。」
その後、車の話題になり、千晴さんは現在乗っているホンダの軽自動車を、かなり気に入っているらしいことを知った。
あと、千晴さんには妹がいて、高校生でスポーツに才能があり、寮に入って練習やら大会に、明け暮れているとのこと。
千晴さんの妹の話題が出ただけなのに、再び大量の汗を流しつつ、やっと4時頃になり、無事コーヒーショップのお会計を私が済ませ、帰路に着いた。
車の中で髪留めを渡そうと考えてたけど、運転してくれてる千晴さんには渡せそうにない。
かと言って、旅館に着いてから渡すと、他の従業員の目が気になる。
いつもの町を過ぎ、旅館には15分ほどで着いてしまう、もうどうしようかと迷っていると、
「ちょっと寄り道するね。」
と言い、脇道に入り、しばらく進むと神社の鳥居が見えてきた。
「ここが、旅館を含めたこの地区の神社だから、お参りしていこう。」
とのことで、鳥居をくぐり神社にお参りした。
私は、手を合わせ、
「どうかプレゼントを渡す勇気をください」
と全身全霊で神様に祈った。
そして、車に乗り込んだ際、バッグから髪留めの包を取り出すと、
「千晴さん、あの、これ、千晴さんへのプレゼントなんです。いつもお世話になっているので、受け取ってください。」
と言い、包を差し出し頭をさげた。
「え、妹さんへのプレゼントなんじゃないの?」
「妹はいません。弟しかいないんです。千晴さんに選んでもらいたくて嘘ついてしまいました。
ごめんなさい。レモン色というのも、最初湖に行った時千晴さんが着ていたワンピースの色なんです。」
と、一気に打ち明け、顔には汗が浮かび上がっている。
「そ、そうなの。あ、ありがとう。」
と言い、ちょっと顔を赤らめながら受け取ってくれた。
その後、車中では無言だったけど、決して気まずい雰囲気ではなかったように思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます