メリーさんからの定期(?)連絡

「もしもし、私、メリーさん。今、昭和基地にいるの」


「お前、毎日同じところからの電話だな。南極だから無理もないが隊員と一緒に外に出ないのか?」


「ふふん、違うわ。今日はちょっと冒険してきちゃった」


「へえ、どこまで?」


「隊員の山田さんの部屋から田中さんの部屋まで。イケメンだから期待したのに奥さんと子供の写真があってテンション下がるぅ」


 ……本当にツッコミどころ満載な人形だ。


「お前、俺の元に来るのが目的じゃなかったのか? 隊員襲う方にシフトしたなら隊員のスマホにかけろよ」


「ち、違うわ! ちょ、ちょっとイケテたからどんな部屋かなって、その……お、推しに対するようなものよ!」


「その前に移動したから呪いの人形とバレたのじゃないか?」


「ううん、山田さんは、田中さんのお子さんへプレゼントするのがいいから置いたって誤魔化してた。冷たい人だわ」


 そりゃ、見に覚えがない人形が陸の孤島状態の基地にあれば不気味だし、プレゼントとして押し付けたいよな。


「で、捨てられなかったのか?」


「南極って、エコに厳しくてゴミは持ち帰り。とりあえず共用スペースに置かれちゃった。外に置くとブリザードで飛ばされるからだって」


「あー、今はプラごみ厳しいから」


「あんな安物と一緒にしないで! 私は由緒あるビスクドールよ」


 ビスクドールがなんなのかわからんが、アンティークなのはわかった。


「で、皆の目の前で俺にかけてるのか?」


「ううん、通信回線に制限時間あるから、いろいろとハッキングしてる」


 ハイテクだな、おい。


「あ、そろそろ消灯だわ、じゃあね」


 しかも規律守ってる! 資源に限りあるとはいえ、律儀だ。

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