第8話

「ダメ」「ダメ」死ねばいいとか絶対に許さない。

「なんで~なんで~。」

「俺がやだから。」「まあ、それはダメなんだけど。」

「うん。」

「ま、一つ判るのはあなたは変わらないよ。」

「う~ん。」

「俺でも、この女を更生させようなんて無理だと思うけど、このアバズレを。」SNSでも何度か同じような議論がループしているのだが、部下や子供を上司や親が変えることはできないのではないかということで自分のタイムラインは収束していた。多くの場合はその努力は徒労に終わるのだ。


「ん~、え~変えようってなった時に。」

「はい?思わんよ。」

「ま、もし変えるってなったら。ね?」今思えばなぜ、ここに食いついてきたのだろうか。変えて欲しかったのだろうか。

「うん。」

「え、じゃあ、どうやって変えますかってなったら?」

「これ、どうやって変えますかってなったら。まずね。一応ね。シミュレーションしたんですよ。」「まずね。経済的なところを完全に、安心させるっていうのがまず一つな。」

「うわ、うちの考えてることと一緒!」物凄いデカい声で言われた。多分この子の本質が経済的自立と不安の解消でそれが全てに優先していたのだ。

「で、それを完全に満たした時に、優先順位がどうなるのかは、普通、変わるんだよ。」「なぜならば、そこが。」

「ベースになるから?」

「そこそこを埋めてしまえば変わるんだよ。」「普通はね。」「ま、ただ、このアバズレが変わるかどうかわからんけど、普通は変わるんで、なぜならばそれは単純な話だから。」

「経済的な面でうちがやってるだけだから。」

「うんで、そこはえっとそこをまず埋めることは多分できるんだ。」「で、そん時に、果たして、この女の本質がそれを言うこと抜きでクソなのか、やむを得ずだったのかで、ま、当然変わるわけですよ。」「やむを得ずだったのであれば、まあ理由が無いからな。」そう、本当に、この女が言う通り、これまで育てられてきた親の離婚や貧しい生活という境遇的な理由であるならば、経済的な部分を解消してしまえば理由が無くなるはずなのだ。問題は赤の他人にそこまでする義理というか理由がこちらにないことで・・・

「え、それで言うと、うちはなんで風活してるかっていうと、経済面以外で他にはないんですね。」

「で、うちはなんかその複数に作るのって、超めんどくさい。超リスクある。すげえ、嫌だなと思うし、向こうも嫌だなと思わせるし、すげえ、マイナスしかねえやんと思うから。」「ぶっちゃけ、そのなんか複数人を持つ分の人が現れてくれればいいなと思ってるけど、ま、それがさっき言ってた通りの、その経済面を全てを埋める人間が、居ればええなっていう話でていう感じなんでね。」まあ、不特定多数の下心あるおっさんとリスクを負って会うこと自体が積極的にやりたいわけがないというのはわかる。


「なんか、その。で、それを。もし、あの年上の男性とかじゃなくて、旦那さんが埋めてくれれば、それでいいよねってで、それが1番の目標だけど、そこまで行くには、ちょっと今もうちょい頑張ってくれっていう時期だし、うちもその支えなきゃいけない時期だし。ま、何しろ彼にはお金がないし、頑張ってるけど、金がないっていう感じなんででもやってることとしてはそのライブプロデューサー。ちゃんと、あの本職でやってるのは、あの音楽配信サイトの営業の仕事。」「それはうまくやってくれると思ってるけど、うちは正直、不安しかないし、精神面ですごいグラつきがあるから。ま、経済面で多分頼れる人が今現在パートナーとしていない。」「じゃあ、自分で支えるしか、自分で自分の身を守るしかないんで、あのってなると。そのま、自分の欲しい金額に対して。金額っていうか、なんだろ、ま、そのそっちにもそのスケジュールがあるから、開いた時期とかをどうするみたいな感じの話になっちゃうんです。」「その軽井沢行きますってなった時に、その週をどうしようって話になっちゃうし、実際今だから何も決まってないし、はにゃってなってるし、どうしようか。」まあ旦那のことは知ったことではないが、彼女としては、失われていく若さを使って稼げるときに限界まで稼ぎたいというのが偽らざるところなのだろう。だから一生懸命予定を埋めようとするのだ。

「ちょっと話が分からなくなってきた。」

「うちもわからなくなってきた。」「一応ほんとはね、あの、何人も嫌なんですよ。」「ほんまにね。」「もうだから、もう切り続けて、今ナウで切り続けて。」「それで?」「いまどうしようかなあってところです。」問題は、パパ活なんかをするような男は、自分も含めてカスしかいないわけで、彼女が思うような理想の経済パートナーというのはおそらく永遠に現れない。男が”飽きるまで”の間、精神をすり減らしながら奉仕するしかないというのが実際のところだろう。


「どうして欲しいの?」

「どうして欲しい?」

「う~ん」

「あなたに無理言って、会えなくなるのがさみしい。」「私的にその貴方のポジション、ポジションっていうか、そのうん。ポジション的には、その趣味、趣味、趣味的にもその芸術系とか理解できる。その、なんか、その友人、友人面としても、すごい、最高じゃんと思ってるし、なんか経済面最高じゃんと思ってるし、なんか安定感があって最高じゃんと思ってるけど。」「でも、なんかその、無理言って会えなくなったら、うちはすごい寂しいと思ってるから。」「他の、なんか、他のパパ切るから2倍ください。って言ったらさ、困るじゃん、普通に。」

「はい??」

「でしょ?」「ていうことなんですよ。」「ね?だからあんまり人を困らせたくないっていう感じがあります。」


「この子は一体どれくらいを欲しがってるのかよくわからない。」2倍っていうのが吹っ掛けられたのかよくわからないんだが具体的な金額が分からないと考えようが無い。

「正直に言えって。」

「う~ん。」「エッチなことしながら言う話じゃないんですけど。」

「正直に言えって。」

「あなたは家族のリスクがあるから、ちょっと大変だなと思っています。」

「それから?」

「それから?それからってなんだろ、いつかいなくなっちゃうんじゃないかなと思ってるからね。」「今ちょっとなんか、ちょっと警戒されたら、どっか行っちゃうかな、とも思ってるし。」「思うでしょう思うでしょ。」「なんで?なんで??家庭の危機だから、ちょっと会えないねってなる可能性もある。」「あるある、そんなな、そんなないよ、みたいな顔されても。」「それかいなくなっちゃったら嫌だなと思う。」

「うん。」

「うんそうです。」

「あなたは変わらないし変えれないと思う。」「とりあえずお金の面で安心させれば。」

「その時は他の人全部切る、その時には誠意で返します。」「アバズレですか?」



「絶対妊娠させるエッチ、じゃん。」

「しないだろ。」

「なんだろ、ファンの知らない姿よお。」SNSでそれなりにフォロワーが居るわけだが、こんなことやってるなんて知ったらどうなるんだろう。



「終電終わったわ。」

「えええ、そんな早い?」

「うちは西武新宿線だから。」

「泊ってけよ。」

「ねえよ、一つの手でもねえよ。」「うちの家庭があるだけだろが。」

「あんたの家庭は終わってるだろ。」

「いや、終わってないよ。まだまだまだまだこれからだって。」「いやいやいや未来を永劫あるわたくしの家庭をないがしろにしないでくれますか?」

「未来永劫一緒に?」

「ほんとに?」

「え、めっちゃあるよ。」

「来年続いてる可能性は?」

「あるあるあるある。」「うん、80パーセントくらい。」「20パーはもう2年前ぐらいから信用を失ってるから、ちょっとどうしようもないんで。」

「ガバガバの見積もり甘くね?」

「そう、うちの見積もり甘いから80パーと言いつつ、多分、50パーぐらいやから、60くらいかな。ま。」「なんか、その分どう、埋め合わせを私がしてるかっていう話になっちゃうんです。」「なんか。向こうがその仕事で落ち込んでる時、とかにうちがどう不安をやわらげるかっていう話です。」「ここ最近の話だとTV局をどう説得するのかとかアドバイスしたり。」


「エッチしてることが旦那にバレたらどうるの?」

「で、どうするかっていう話になるんです。」「けど、そりゃ周りも巻き込んで説得させるよね。周りの仲の良い友達がパパ活をいかにパートナーに説得させてるのかってのを言って丸め込む。」

「まだそういう気はある?」

「もちろん。」

彼女がもし離婚するなら、まあ経済的パートナーの話も多少は現実的な話として考えようと思うのだが、正直言って離婚する気もない他人の女にそこまで責任を負うというのは難しいと感じている。おそらく決定的な何かが無い限りはだらだらとこの関係は続き、そしていつか終わるのだ。彼女の不安が無くなることは無く、おそらくは複数の関係を持ちながら、いつか現れる理想の経済パートナーが見つかるまで。



「死ぬなよ。」「どんなにアバズレだろうがガバガバだろうが、死なれちゃいやだよ。」

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不健全なことをしているが、そのうえで私のことを100%愛してください @jack_frost_1011

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