シンナセンのザラタン

もしもし。

シンナセンの攻略が終わって、アーズマキヨウに向かってるところ?

そうなんだ。ザラタンは倒した?

ザラタンって何って。ほら、大きな亀の怪物みたいなのがいたと思うけど。

そうそう。その子。倒した…んだね。


でもザラタンはそんな攻撃的でもなかったでしょ。それでも倒したの?

えっ?攻撃的だった?そんな…嘘でしょ。

島ほどある大きな巨体で地面を踏み荒らしたり、強力な土魔法を使ってきた。

硬く大きな甲羅の防御力はドラゴンさんでも手を焼いた。

一番手強い相手…だったんだね。

そうなんだ。ザラタンとはマトモな戦いにならないって思ってた。


なんでって…。そりゃ。

ザラタンは大人しくて争いが嫌いな子でさ。

小さいときは浜辺で人間の子どもにいじめられるくらいで。弱虫だった…。

って伝説がなかったっけ?何かで読んだか、誰かから聞いたよ。そんな話!うん。


シンナセンまできて、ザラタンも倒したってことはさ。

次はもう、アーズマキヨウだね…。

魔王と戦う準備はちゃんと出来てる?

お、珍しく自信満々じゃん。


魔王がどれだけ強くても倒せそう?

ドラゴンさんがいるから大丈夫って。キミはどうなのさ。

もしも、ドラゴンさんが倒されてキミが一人になっても最期まで戦い抜ける?

お、さすが勇者。最期まで戦ってくれるんだ。

頼りに…。でも、なに。

最期まで戦うけど、魔王に勝てるかは別の話って…。

頼りになるんだか、ならないんだか。

ま、キミらしくて良いと思うけどさ。


魔王がどれだけ強くても、最後まで戦い抜くってのは分かった。

じゃあさ。


魔王がどんな相手でも倒せそう?

そう、どんな相手でも。

例えば誰って?そうだなー、例えば屈強な大男とか悪魔とか。

うん、倒せるかは別にして、普通に躊躇なく戦える。まぁ…そうだよね。

今までクラーケン、アラクネ、ヒュドラ、ザラタンって強敵を倒してるもんね。

ならキミ好みの綺麗な女性だったら?

そう。キミが一目惚れしちゃうくらい素敵な女性でも倒せる?

え!ちゃんと戦える自信あるんだ。なんか意外。

だって、キミは女の子に優しいっていうのか弱い…?じゃん。

優柔不断なところもあって、物事を先送りにするっていうかさ。

ごめんって!落ち込まないでよ。

私はそんなキミのこと、嫌いじゃないしさ。むしろ…。

むしろ、ス、スゴクステキだなーなんて。

片言だから信じられないって。そこは…もう。鈍感。


とにかく、キミが悪魔にも美女にも立ち向かえるのは分かったよ。


もし、これも例えばの話ね。魔王が私だとしても最後まで戦える?

なんでそんなこと聞くのかって言われても…。とくに深い意味はないよ。

ちょっと気になっただけ。で。どうなの?

魔王が私だったとして、殺せる?


そっか。やっぱりそうだよね。

キミは勇者だもんね。そのために冒険を続けてきたもんね。

え?そりゃ悲しいよ。もしもの話だとしても。


逆にさ、キミが戦えない魔王、相手に出来ない魔王っているの?

うん。…。ドラゴンさんか…。

あえて聞くけど、それはどうして?


ずっと冒険を一緒にしてきたから戦えない、か。もう家族みたいなもの?

それもそうだよね。

キミとドラゴンさんはいくつもの死線をともにしてきて絆が出来てるもんね。

でも、それだけじゃないんでしょ。キミがドラゴンさんと戦えない理由。

誤魔化さないでよ。自分でも気付いているでしょ。ほんとうの戦えない理由。


好き、だから。ドラゴンさんを愛してるから、でしょ?


そのとおりって。

そんなに簡単に認めるなら、わざわざ私に言わせないでよ。もう。


いつから?いつからキミはドラゴンさんのこと好きになっちゃったの。

うん。ケイでアラクネのことがあってから気になりだしたんだね。

で、そこからどんどん好きになっていったと。

そういえば、そのときのタペストリーはどうしてる?両方とも大事に持ってるの?

今持ってるのはドラゴンさんが作ったものだけなんだね。

アラクネのタペストリーはどうしたの?

アラクネと一緒に燃やして供養したんだ。そう…なんだね。


ドラゴンさんにさ、その気持ち伝えたりしないの?

アラクネのときに否定されたから伝えないって…。

それがドラゴンさんの本音ってほんとうに思ってるの?

もしそれが本音だったとしても、あのときから結構時間もたってるんじゃない?

そうでしょ。ならドラゴンさんの気持ちもあのときから変わってるはずだよ。

もちろん、キミにとって良い方向にね。


魔王との戦い、二人とも無事ってわけじゃないかもしれないんだしさ。

キミの気持ち、ちゃんと伝えておいたほうが私は良いと思うよ。


死亡フラグ?なにそれ?

うん。なるほどね。

キミがいた前の世界ではそうだとしても、この世界でそんなことにはならないよ。

絶対に大丈夫。私が約束するから。二人とも絶対に無事だから。

さっきと話が違うって、細かいことはどうでもいいの。

とりあえずキミの好きって気持ち、ちゃんとドラゴンさんに伝えること。分かった?

ほんとうだね。約束だよ。次に話をするとき、ちゃんと確認するからね。


今日は結構話しこんだね。

あのね、ゆっくり話せるのは今日が最後かもしれない。

え?ちがうちがう。キミは魔王に勝つと思ってるよ。キミは魔王に勝つよ、絶対。

ただ私がね。私もちょっと長い冒険に出るかもしれないから。

そう。だからあんまりキミとの話す時間が無くなるかもしれないってこと。


寂しくなるって…。うれしいこと言ってくれてありがとう。

でもキミにはドラゴンさんがいるだから。浮気はダメだよ。

私にとっては…。ごめん。やっぱりなんでもないや。

え?気になる?もう、仕方ないなー。

…。私がキミとドラゴンさんに勝てるわけってはなし!言わせないで。


でも今日はちゃんと話が出来て良かった。

なんていうかさ、覚悟が出来たっていうか諦めが出来たってかんじ…かな。

そうだね、冒険に出る覚悟がついたっていえばいいのかもね。


じゃあ。魔王との闘い頑張ってね。応援してる。

バイバイ。

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