マッナチのヒュドラ

もしもし、この前はごめんね。

なんだか、あの話聞いちゃうと…ね。気分が沈んじゃって。

あーダメだ。このままじゃまた今日も雰囲気が悪くなっちゃうね。ごめん。


今日はどんな話かな。ケイの街の次っていうと…マッナチの街だよね。

だよね。じゃヒュドラと戦ったり……したよね、うん。

別に詳しくないよ。だって、マッナチの街のヒュドラっていうと有名だもん。

うん、そうだよ。ただの村娘の私が知ってても、ぜーんぜんおかしくないから。


で、今こうして話してるってことはヒュドラも倒しちゃったんだよね…。

どう?聞くところによると、ヒュドラかなり強いって話だったけど。

うん。再生能力が高くてかなり苦労した?

首を切っても減るどころか、倍になって再生する?ほんとに!?すごいね。

で、どうやって驚異的な再生能力もつ強いヒュドラを倒したのさ。

酒をたらふく飲ませて、ベロベロに酔ったところを殺したぁ!?

なにそれ、ヒュドラのやつ、敵と酒宴を開いたってこと!

え?ちがう?

キミたちがやられた振りをしてると、祝い酒だーって1人でガブガブと飲み始めた。

それじゃ、勝手に酔いつぶれたところに、キミたちがトドメをさしたってこと…?


はぁ、なにそれ…。


ん?なんでもないよ。ただのひとりごと。気にしないで。


でも、いくら酔いつぶれてたって言っても、ヒュドラだよ。

そう簡単には倒せなかったでしょ。どこか怪我したりとかしてない?大丈夫。

ふーん、どこも怪我しなかったんだ。良かった…。うん。

じゃ手に汗握るたたかい、みたいなのはなかったわけだ。

酔いつぶれたヒュドラにコッソリとしのびよって、ヒュドラの首を切り落とした。

でも、それじゃ倍になって再生しちゃうじゃん。火か何かで傷口を焼かないと…。

え、あーー、なるほど。ドラゴンさんの炎で一気に焼いて、再生能力は防いだ、と。

で残った残骸は丁重に土に埋めて葬ってあげたんだ。


なんか今まで聞いた話だと、ドラゴンさんがすっごく活躍してるね。

キミは?なんか特殊能力とか特別な力みたいなの持ってないの?

そうそう、時間止めたり相手の思考を読んだりとか、そういうの。

なにもないって、それはさすがにうそでしょ。

ほんとに?だってクラーケンもヒュドラも魔王の元側近でしょ。

そんな怪物たちを倒してるキミなんだから、チート能力の1つくらいは…ない。

ほんとに?ほんとのほんとに何にもないの?

うん…。そうなんだ…。


キミって異世界から転生してきたんだよね…。

えっ、いや聞いただけ。特に意味はないよ。いやいや、そんなこと思ってないって。異世界転生者なのに雑魚だとか思ってないって!ホントに!

…。


なんか、ごめんね。私は心からキミもスゴイって思ってるよ。

クラーケンやヒュドラを倒したってのは事実なんだしさ。


でもさ…。少し心配だな。キミが魔王に勝てるのかどうか。

キミって魔王を倒しにアーズマキヨウまでいくって話でしょ。

もしもの話だよ。もし、ドラゴンさんがいなくなって、キミ一人だけなったとする。

それで、キミ一人だけで魔王を倒せる?どう?


ムリって。ダメでしょ。即答しちゃ。

そんなに自分の力に自信がないの?そっか、自信ないんだ。

私は…キミのこと、ホントにスゴイと思うよ。力って意味だけじゃなくて心もね。

そう。心。魂って言っていいのかもしれないね。

キミみたいな魂をキミ以外に私は見たことがないよ。

キミとならキミの魂にならこの世界を良く出来るのかもなって。

そんなコト出来ない、なんて言わないし言わせないよ。


だってキミはもう勇者、なんだから。


そう勇者。私の周りはみんなそう呼んでるよ。

勇者とドラゴン。サイキョウの奴らだって。だから自信持ちなよ。


え?ドラゴンさんに呼ばれたから今日はここまで?

うーん。嫉妬しちゃうなーなんて。

なんでもない!バイバイ。またね。

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