第25話 黒幕登場、影のクラガリ幹部

神谷伯と星波麻那の戦いが終わると一人の男が拍手を送った。


「あれは…、近藤先生?」


生徒たちは自然と先生に注目する。


「本当にいい仕事をした…お陰で予定より計画より早く終わらせそうだ」


指を鳴らす、結界の内からさらに一枚、結界が張られていく。


「なっ!なんなんだ!!これ!!」


生徒たちが混乱する中で先生と俺だけが見つめ合う。

すでに新しい結界で覆われ、AクラスとCクラスの生徒が閉じ込められた。


「お、お前は誰だ?」

「誰?俺は君たちの知る近藤先生さぁ」


俺はゆっくりと痛みを感じながら立ちあがろうとするが、すぐに膝から崩れ落ちる。


「こ…れは…!?」

「ダメじゃないか、安静にしておかないと、本当に死んでしまうよ?」


これは、魔力が吸われている?

周りを確認すると生徒たちが次々と倒れていく。


「すごいだろう!!この結界はかつて《魔術王》が使っていたとされる結界の再現版だよ!!さぁ、ちゃっちゃと仕事を終わらせますか…」


近藤先生は麻那の方に足を向ける。

狙いは麻那か!!くそっ!体が動かない…せめて魔力があれば…


「しかし、運が良かった…学園長が外部の監視に力を入れてくれたお陰で最初に忍ばせておいたスパイがバレずに済んだし、伯のおかげで星波麻那の魔力を体力を削ぐことに成功した、もはやここまで理想通りに進んだことはないよ!!!」


そして倒れている麻那のそばまでたどり着く。


「さてと、みんなも辛いよね?安心して星波麻那を始末すれば、すぐにでも解放するからさぁ」


くそ!!足が動かない!!それどころか、魔力が吸われているからむしろ徐々に体力が奪われる。

近藤先生の影から一振りの短剣が現れる。


「これで終わりだ!!」


無防備な背中に近藤先生は短剣を振り下ろす。


「麻那ぁ〜〜〜〜〜!!!」


すると大きな衝撃音が走る。


「なっ!!」

「あんまり、私を舐めないでください」


麻那は短剣を弾き返した。


「くっ!!まだ動けたのか!!」

「この程度、5分もあればある程度回復できます」

「くそ!!」


近藤先生は再び短剣を影から生成し、攻撃する。

しかし、そんな攻撃は簡単に弾き返し、足蹴りで吹き飛ばす。


「…ぐふぇ」


そのまま地面を叩きつけられながら、後方へ吹き飛んだ。

麻那はすぐに俺の元まで駆け寄り、魔力を少しだけ分け与えた。


「大丈夫!!」


これは…魔力循環操作!?やっぱり、麻那は強いな。

魔力循環操作は簡単に言えば、魔力を分け与えることだが、これはそう簡単ではない。

魔力を分け与えるには相手の魔力の流れに合わせて分け与えなければ、魔力暴走してより大きな怪我につながる。


「これで、少し楽になったと思うけど…」

「よくも…やってくれたねぇ〜〜」

「しぶといですね」

「へへへ、すでにこちらの方が有利…大人しく殺されていれば、楽だったのによ」

「待っていてください、すぐに肩をつけます」


この勝負は時間の問題だ、麻那は平気な顔をしてはいるが、確実に魔力を吸われつつある。

今でも麻那の魔力は吸われ、失っている。

おそらく、この結界を維持している仲間がいるはずだ、この結界さえ、解くことができれば、あとは先生が対応するはず。


「さぁ、楽しもうぜ」

「あなたたちの遊びに付き合うつもりはありません」


そして動き出す。

近藤先生は短剣をたくさん複製し、遠距離で射出する。

繰り出される、短剣を弾きながら、間合いを詰めていく。

こいつ、確実の魔力を吸い出されているはずなのに、どうしてこんなに動ける!!


「小賢しい!!こうなったら」


影から剣を生成し、接近戦に突入する。

お互いの剣がぶつかり合い、拮抗する。


「くっ」

「はははっ!やっぱりな!剣が鈍ってるぜ!!」


麻那の剣が弾かれる。


「しまっ!?」

「終わりだぁ〜〜!!」


麻那を仕留めようとした瞬間、正面から剣が飛んでくる。

瞬時をそれを避ける。


「なんだ!?」


投げられた先には拍がいた。


「させるかよ…」

「くっ!!邪魔をしやがって!!」


なんとか、俺は精一杯の力で剣を投げて阻止した。

とはいえ、いくら探しても結界を維持しているスパイが見つけ出せない。

時間をかけすぎると、せっかく分けてもらった魔力まで吸い尽くされる。

麻那を見る感じ、もう限界に近いはずだ。

どうすればいい…どうすれば麻那を助けられる。

今、俺が戦いに参戦しても役に立たないし、異世界で勇者として最強を謳われたのにこの世界ではこんなにも弱いのか。

失望した、自分の弱さに失望した、自分はこんなにも弱い、けど諦めきれない。


何か…何かないのか、麻那を助けられる手段は…


『そんなに助けたいのか?』


助けたいに決まっている!!


『助ける意味がわからない、だって死ぬのはあいつだけはお前は死なない』


俺は目の前で人が死ぬことを許さない、異世界で後悔したんだ。

助けられた命が助けられなかったとき、いっときの迷いでたくさんの人が死ぬとき、俺はそんな場面を何度も経験した、だから、もう何も失いたくないんだ!!

たとえされが偽物でも…


『欲張りだな…お前はいつもそうだ、そうやって大人ぶっているくせに、本当はわがままで救わずにはいられない、諦めることもできない』


それの何が悪い!!それが俺だ!!


『いいね、いいね、前よりは素直になった…いいだろう、少しだけ力を貸してやる、だからその願望を叶えてこい』


・・・■■■スキル・■■■■■・・・


力が漲る、魔力が溢れてくる。

感覚が研ぎ澄まされていく、今までに感じたことのない感覚が押し寄せてくる。

近藤先生は麻那に足を向ける。


『麻那を救わないと』


魔力が漆黒になって包まれていく。


「手間をかけさせやがって」

「はぁはぁはぁ」


麻那はすでに魔力も体力も限界にきていた。

もう剣を振る力もない。


「死ね…」


そして剣が振り下ろされた、その時…

闇が漆黒の闇が麻那と近藤の視界に映る。


「なんだ?これは…」


漆黒の霧が麻那と近藤を包み込んだ。


『どけ…』


次の瞬間、目に見えない速さで足蹴りを喰らい、近藤との距離が離れる。

さっきまで一切、視界に映っていなかったのに、急に足が現れた。


「一体…どこから、、」


近藤は膝をついて、呼吸がしずらしそうな顔をする。

目線を上に向けると、さっきまで倒れていた神谷拍の姿がそこにはあった。


「拍…くん?」


麻那は一瞬、神谷伯であるかどうか疑った。

だってさっきまでとはまるで違う、別人のような魔力の色をしていた。


『借りるよ…』


麻那はそのまま力尽き、気絶する。

伯は麻那が使っていた剣を取り、手に取った剣は握り部分から徐々に黒く染まっていく。


「おいおい、さっきまで瀕死だったやつが…どうなってやがる」


それにこいつ、結界の効果を受けていないのか、それになんて魔力量をしてやがる。


『…こいよ』

「…舐めやがって!!いいぜ、ここまでイラつかさせたのはお前が初めてだ!!」


影から剣を生成する。


「死ねぇぇぇぇぇ!!」


真正面から斬りかかる。


『おせぇよ』


一瞬で近寄り、剣を胴に向けて切り込む。


「ぐはっ!!」


近藤はそのまま地面を叩きつけられながら、転がり込む。


「いてて、くそ!!」


なんて強さだ、斬られたというよりは叩かれただけだが、それだけでも肋が何本か折られた。


『しぶとい奴だな…』


くそっ!!このままじゃあ、計画が台無しになる、仕方ねぇ、あれを使うしかない。

ポケットからある錠剤を取り出す。


「ははは、これでお前たちも終わりだ!!」


近藤は錠剤を飲み込むと、体徐々に肥大化し、大きな立髪、大きな爪、鋭い目、まるで魔物のような姿へと変貌した。


「どうだ!!この力!!これでおれは最強だ!!!!!!これほどの力があれば、誰に負けねぇ!!負ける気がしねぇ!!」


今までとは比較にならないほどの魔力量。

もはや、人の姿の原型もなく、完全な魔物化していた。

すると近藤はゾワりと寒気を感じる。

伯の方に目線を合わせると、伯は笑っていた。

なぜ、笑っている、そんなに…


「そんなに死にたいのかぁぁぁぁぁっ!!!!」


大きな爪が伯に襲いかかる。

何度も同じ場所に何度も何度も大きな爪で攻撃する。


「はぁはぁはぁはぁ、どうだ…」


しかし、そこには無傷の姿の拍が平然と立っていた。


「なっ!!」

『お前の一番の敗因を教えてやるよ、お前が人間を辞めたことだ…』


・・・■■■スキル・絶技一文字・・・


目に見えない速さで剣技が炸裂する。


「なっ…」


目で見えないほどの剣技は近藤は捉えることができず、一瞬で斬られる。

近藤は膝をつくが、倒れることはなかった。


『はぁ…はぁ…』


そろそろ限界か…

すでに伯も限界にきていた。

魔力が莫大に増えたとはいえ、魔力は吸い取られていた。


「ははは、俺を早く仕留めなかったことが仇となったな…」

『いや、お前の負けだよ…』

「何?」

『すでに、賽は投げられた』


次の瞬間、結界が崩壊していく。

結界の中心からボロボロと崩れていくのを目の当たりにする。


「どう言うことだ!!」


おれが切ったのは近藤だけじゃない、結界を維持をしているスパイだ。


「貴様!!最初っから、これが狙いで!!」

「あ、あとは頼んだぞ…」


誰に言ったのかはわからない、ただ後のことはなんとかなる気がした。

すると近藤のすぐ後ろから、嫌な気配を感じ取った。


「よくやった…あとは任せておけ」

「よ〜〜〜し!!ぶっ飛ばすぞ!!」


軍服を羽織り、右胸にはレギオンの証であるバッチがつけられていた二人が現れる。

近藤は見た瞬間にあいつらが何者なのかを理解し、そして今の状況を理科した。


「くそ!!」


近藤は心から声を漏らす。

現れたのはレギオンNo.7:《無欲》のゼオン・アルベス、レギオンNo.2:《閃光》のティリア・アルマージだった。

ここにきてレギオンの登場はもはや、計画の失敗を確定させた。

仲間もすでにやられており、近藤は最悪な選択に迫られていた。


「無駄な抵抗はやめた方がいい、陰のクラガリ幹部、近藤柳、いや本名はサタル・リーマンだったな」


近藤柳、本名サタル・リーマンは窮地に立たされるのであった。








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