第26話 影のクラガリの目的

結界を破壊し、最初に現れたのは軍部直属:特殊部隊・レギオンの二人だった。

二人の登場により完全に計画は破綻、サタル・リーマンは窮地に立たされるのであった。

くそ!!どうすればいい!!逃げるかっ!!いやダメだ、あの二人から逃げ切ることは不可能だ。


「どうやら、まだ諦めていないらしい、ティリア、やれ」

「はぁ〜〜い!!【鋼鉄の錬成・大いなる剣を創造せよ】」


魔術行使で剣を錬成する、ティリア・アルマージ、これが軍用錬金魔術。


「くぅ…こんなところで!!」


必死の抵抗、サタル・リーマンは大きな体を利用し突進、猛スピードでこちらに向かってくる。

だがティリア・アルマージはそれを片手で受け止める、一切の微動だにもしなかった。

一体、こんな小娘のどこにそんな力があるのだろうか。


「いいねぇ!いいねぇ!私、今!楽しいよ!!」


片手で受け止めると、足に思いっきり、足蹴りを喰らわせ、相手はそのままバランスを崩し、倒れ込む。


「てリャゃぁぁぁぁ!!!」


倒れたところをティリア・アルマージは空高く飛び、大きく振りかぶった。

その攻撃は直撃し、サタル・リーマンを真っ二つに切り裂かれる。


「あっ…」


サタル・リーマンはそのまま倒れた。


「あ〜〜やっちゃった」

「何やっているんだ?」


ゼオン・アルベスはティリア・アルマージを殴った。


「痛いぃぃぃ〜〜何するのさぁ!!ゼオン!!」

「生きて捕らえろと、言っただろう、殺してどうする」

「そういえば、そんなこと言ってたねぇ、あ〜〜まぁあれだよ、失敗は誰にでもあるものだよ…ねぇ?」

「失敗しかしていないだろう…はぁ、やってしまったものはしょうがない、とりあえず、怪我人の救護だ」

「了解です!!」


気絶した二人の応急処置を施し、倒れ込んでいる生徒の保護を行った。

しばらくすると学園長が現場に現れる。


「まさか、内部にスパイがおったとわな」

「ああ、だがこれで影のクラガリもしばらくは学園に干渉できないだろう…」

「そうじゃな…この件が終わり次第、生徒、先生全員に検査して確認するわい」

「それがいい」


とはいえ、少し気掛かりがある、それはどうやって潜り込ませた?この学園は裏工作で入学させるのは相当難しい、簡単にはできないはずだ。

だとすると、もしそれを可能とする者は一体誰だ?

いや、まさか!!

ゼオン・アルベスは一人の人物が思い浮かぶ、だが本当に?もしそうなら、考えたくもないな。


「ねぇねぇ、ゼオン…ゼオン!!」

「どうした?」

「死体がなくなってるよ?」

「何?」


周りを見渡すとさっきまであった死体がなくなっていた。

だが、それは逆にチャンスだと思った。


「いや、これは好都合だ…」

「え?」


こうしてクラス対抗剣術勝負は悲惨な結末で幕を下ろした。



麻那と俺はすぐに医療班による治療が行われた。

特に俺はかなりひどい状態だったらしい。

目が覚めると視界に映るのは一度見たことがある天井だった。


「あっ!やっと目を覚ましたよ!!」

「マジか!!よかった!!」


俺がよく知る二人がベットの上から抱きしめてきた。


「いてて、お前ら一旦離れろ!!」


俺は二人を突き放した。


「ご、ごめん」

「けど、本当によかったぜ」


どうやら、蓮也と奈々はつきっきりでお見舞いに来てくれていたらしい。

とはいえ、体の節々が痛い、筋肉の損傷もかなりひどいようだ。

それに魔力渇望症を発症しており、あと1週間ほどは魔力の回復が遅いそうだ。

生きているだけ、ありがたい。

本当に、よく生きられたな、俺。


「そういえば、俺って何日ぐらい、眠ってたんだ?」

「1週間もだよ!!本当に心配してたんだから!!」

「そうだぜ、親友として俺も涙が…」


なんか、急にこいつらのことを殴りたくなってきたんだが、まぁ一体落ち着こう。


「麻那どうだった?」

「ああ、星波麻那ちゃんだったら、3日前には目を覚ましていたと思うど…」

「そうか…」


こんな感じ、特に何もなかったみたいだな。

まさか、近藤先生が…って感じだけど、どうして麻那を狙ったのだろうか。

微かな記憶に残る言葉、『影のクラガリ』、この言葉どっかで聞いたことがあるような気がする。


「もう、俺の心配はいいから、学園に行ってこいよ、今の時間、普通に授業の時間だろう?」

「え〜〜せっかく話せたのに!!」

「そうだぜ、久しぶりに話そうぜ!!」

「お前ら、学園に行きたくないだけだろう…さっさと行って来い」


俺は二人を学園に行かせた。

学生の本分は勉強と、訓練だからな、おろそかは良くない。


「疲れたなぁ〜〜いてて」


思ったより、痛いな…。


『あいつらも変わってなかったな…』




暗い路地裏


大きな魔物を引きずる黒装束。


「本当に使えないですね」

「すまねぇ…」

「いえいえ、別にいいのですよ」

「ありがてぇ、まさか助け出してくれるなんて、くそっ!!次あった時は必ず殺してやる、麻那も伯も全員!!」


すると二人の影が立ち塞がった。


「あらまぁ…」

「そこまでだ、影のクラガリ」

「なっ!!どうしてここに…」


軍部直属:特殊部隊・レギオンの二人、レギオンNo.7:《無欲》のゼオン・アルベス、レギオンNo.2:《閃光》のティリア・アルマージがそこにいた。


「あらあら、どうしてこんなところに?お客さま?」

「俺がなんの可能性も考えないとでも思ったか…」

「ふふふ、そうですね、あなたはとても警戒心が強い、常にあらゆる可能性を考える、あなたはそんな人でしたね」

「おい!!どうするんだよ!!」


焦る感情を感じ取れる、まぁそうだろう、さっきまで戦っていた相手なのだから。


「うるさいですね…」


黒装束は首の根元から頭と胴体を引き離した。


「計画に失敗したあなたに最初っから生きている価値もない、あのお方はあんなにも期待されていたのに…困った駒ですよね」

「貴様ら目的はなんだ?影のクラガリ、幹部メシア・ルーベルク…いや、ここではアルファと名乗って活動していたな」


するとメシアは驚きの表情を見せる。


「なるほど、よく分かりましたね…」

「そもそも学園内にスパイがいたことに疑問を持つべきだった、学園のセキュリティをいくらお前たちでも簡単に突破できる者ではない、なら突破できる者は誰だ?それは簡単だ、学園長に最も近い存在、最も信頼される人物、それはアルファ以外あり得ない」

「素晴らしい…普通はそこで確信を持てませんよ?しかし、そうなるともうアルファとしては活動できませんね、残念です、せっかく、情報を得る上では良い立場だったのに」

「やはり、お前たちの目的は…」

「そう、王になり得る候補を殺し、我らが主人を再びこの地に呼ぶこと…ですが、私たちの真の目的は違う、一部の幹部にして知られていない真実、私たちはあらゆる全てを記した書『■■■■■■■■』を手に入れることです…あっあなたたちでは聞き取れない言語でしたね」


すると一瞬、不可解の動きを感じ取った。


「ティリア!!」


俺は瞬時にティリアの名前をよんだ。


「てリャゃぁぁぁぁ!!!」

「遅いですね…」


スラリと避けるメシア。

するとメシアの影から大きな影のもやが彼女を包み込んでいく。


「逃すか!【穿て・蒼天】」


指先から青い光が集まり、一気にメシアに向けて放たれるが、確実に腹を貫いた。

しかし、全く手応えを感じなかった。


「それでは、みなさん、ごきげんよう、またお会いしましょう」


そのままメシアの姿をあた方もなく消え去った。


「逃げられたか…」

「逃げられたぁぁぁぁぁぁ、悔しい!!」

「うるさいぞ、ティリア…とりあえず、このことは本部に報告しよう」


聞き取れなかったが、影のクラガリの真の目的、あらゆる全てを記した書の入手。

影のクラガリ、お前たちは必ず、俺が捕まえてみせる。


「戻るぞ…」

「…わかった」


しばらく立ち、学園は普及し、無事、元の学園生活まで回復することに成功した。

1週間も経てば、何もなかったかのように感じさせる。

だが、しっかりとあの戦いは存在した。

そしてみんなが調子を戻した頃に学園長からの提案でCクラスにあるお話がくる。


「これからCクラスには魔物による実践訓練を『地獄の七日間』を行なってもらいたい」


Cクラス全員はその話を聞いて、疑問に思った。


「何それ?」


こうして初の実践を経験することになった。





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