第18話 Aクラス・ゾーラ・アルデヒドと柊結奈
クラス対抗剣術勝負まであと2週間、訓練場は人で埋まり、どこを見ても訓練で励んでいる生徒が多かった。
とはいえ、Aクラスの姿は誰一人としていなかった。
後2週間しかないなかで、訓練するのもどうかと思うけど、油断しすぎると逆に逆手を取られて負ける、よくある典型パターンだ。
「伯くんは訓練しないの?」
右隣から話しかけてくる奈々。
ここずっとこいつと行動を共にしている。
一様、模擬戦形式で稽古を一緒にしてはいるが、頻度は2日に一回程度だ。
「訓練?やって無駄だろう…2週間程度で強くなれるわけじゃるまいし…」
「え〜〜やろうよ、訓練!!しないよりした方がいいと思うだぁ!!」
別にしない方がいいと言っているわけではない、ただ、俺の場合、ほとんどがスキルだから、訓練しても正直、雀の涙程度、やる意味がない。
もちろん、2週間も期間がある以上、訓練した方がいいに決まっている。
けど、俺にとっては無意味なのだ。
「それは、そうかもだけど…」
二人で会話をしていると、訓練場から、怒鳴り声が聞こえてきた。
怒鳴っているのは紅の髪が特徴で堅いがものすごく大きく、その場にいるだけ相手がビビるほどの圧を醸し出す男。
「おいおい、どうして雑魚どもが、訓練場を使ってやがるんだ!!」
「訓練場はみんなが共同して使う施設だろう、何か文句でもあるのか!!」
「ああ?いくらお前たちが訓練しても、雑魚はザコ!!お前たちが使うより俺たちが有意義に使った方が国のためってもんなんだよ!!さっさと失せろ!!」
「な、なんだと!!」
訓練場を使っていた一人の生徒が反撃に出たが、相手が悪い。
だって相手はAクラスだ。
すると一人の女性が会話に入る。
金髪の髪がよく目立ち、容姿もよく、外から見ればとても美しいお嬢様。
「まぁまぁゾーラさん、あまり怒鳴らないでください、いくら真実とはいえ、言い方があるでしょう」
「あ?文句でもあんのか?結奈」
「礼儀をしっかりしなさいと言っているのですよ?分かりませんか?野蛮人」
「なんだと…俺と勝負でもするか?」
「別に構いませんが?」
なるほど、あれがAクラスのゾーラ・アルデヒド、柊結奈か、顔は覚えた。
それにしても魔力量がずば抜けているな、麻那ほどではないものの、間違いなく学園のトップレベルだろう。
両者とも訓練場が壊れかねないほどに魔力が膨れ上がる。
「そこまでです!!」
訓練場に響き渡る声はある一人の人物を注目させる。
響き渡る声が聞こえた方向に目線を向けるとそこには麻那が腕を組んで立っていた。
「あ?」
「なんでしょうか?」
ゾーラ・アルデヒド、柊結奈も麻那がいる方向に目線を向ける。
「ゾーラ!結奈!何をやっているのですか?」
その言葉の圧に少しだけ押される二人。
なるほど、あれでなんとかまとめているのか。
「麻那か、俺たちはただ訓練場を使おうとしただけだ」
「そう、ただそれだけなんですよ、麻那さん…」
目が完全に怒っている麻那の圧に二人は萎縮する。
「そうですか、しかし、周りを見ると困っている人たちが多い気がしますけど…」
「そりゃ、だって俺たちはAクラスでその中でも選ばれた存在だぞ!!、こんな雑魚どもが使うより、俺たちが有意義に使ったほうがいいに決まっている!!、この国にとっても…」
「話はそれだけですか?」
「くっ…いや、その…」
「ゾーラさん、ここはもう帰りましょう、それにいくら訓練したところで私たちが負けることはありません」
「く、そうだな」
二人は出口の方に向かう。
そして麻那は一言だけ、言い残す。
「文句があるのなら、いつでも相手になります」
二人は一瞬だけ麻那に目線を合わせるがすぐに目線を戻し、去っていった。
あんな麻那は初めて見た、まるで別人だな。
まぁああでもしないとAクラスをまとめられないんだろう。
ゾーラ・アルデヒドと柊結奈の戦い方を少しだけ見たかった気持ちがあったがまぁいい。
「あの二人、すごかったね」
「ああ、間違いなく強敵になる…」
俺たちも訓練場を出ようとすると、ある一人の人物を見つける。
「あれって、近藤先生?」
「えっ!どこ?どこ?」
俺が指を差すところに近藤先生の姿があったが、すぐに訓練場を出ていった。
「本当だ〜、けど何してにきたんだろう?」
「う〜ん」
気のせいか?、一瞬、近藤先生から嫌な気配を感じたのは…な訳ないか、近藤先生だぞ、ナイナイ。
「あれだろう、生徒の安全確認、先生だったらそんな仕事をしててもおかしくないし」
「そうかな?まぁどうでもいいか」
こうして、その日は無事に終わった。
寮に戻ると俺はまず、ゾーラ・アルデヒドと柊結奈の情報収集を始めた。
しかし、そこで予想外の人物が接触してきた。
「初めまして、神谷伯…」
「な…フィナ・アルマス」
銀髪のショートヘアが特徴で、そしてAクラスの要注意人物の一人が俺に尋ねてきたきたのだ。
「私の名前をご存知なのですね、あ、そういえば、誰かさんがAクラスの情報を漏らしていた者がいましたっけ、ね?」
「ははは、なんのことだか」
まさか、フィナから接触してくるなんて、しかも麻那が情報を漏らしていることを知っている、一体何が目的だ、わからない。
「警戒なさらなくても、大丈夫ですよ、むしろ今回は協力してあげようかと思って参じた次第です」
「なんだって…」
「知りたいのではないのですか?Aクラス生徒の情報、特にそうですね…ゾーラ・アルデヒド、柊結奈そして天道歳三のを…私なら提供できます」
なんて最高な提供なんだ。
「で、その代わりに何をしてほしいんだ?」
無償の情報なんてあり得ない、フィナは一体に俺に何を求めているんだ。
「ふふ、話が早いですね、私が求めるのはただ一つ、クラス対抗剣術勝負で、私と戦ってほしいのです」
なるほど、それはやばいな。
人間は戦い方にどうしても癖が発生する。
フィナとは何回か剣を交えている以上、見抜かれてもおかしくない。
だから、どうしてもクラス対抗剣術勝負で戦うのは避けたい。
けど、情報は欲しい…。
「どうしましたか?早くお返事を…」
いや、ここは一番リスクが高い方を考えるんだ。
情報は確かに大事だ…だけど…
「お断りさせていただくよ…」
「なるほど、そうですか、それは残念です…しかし、貴方ならそう答えると思っていました」
「え?」
「どうか、お気をつけて…」
フィナはそのまま去っていった。
どうやら、俺は完全に見透かされていたわけだ。
もしかすると、俺の正体も…けど根拠がない以上、憶測で考えるのは危うい。
「さて、少し時間を使ってしまったが、情報収集を始めますか…」
こうして俺はAクラスの要注意人物の情報を徹底的に調べ始めた。
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