第19話 軍部直属:特殊部隊・レギオン帰還

俺は1週間、Aクラスを徹底的に調べた。

しかし、役に立つような情報は手に入らなかった。


「やっぱり、簡単にはいかないよな…」


要注意人物以外の戦闘スタイル等ある程度調べはついたが、やはりあの4人に関しては全くわからなかった。

まぁそれも当然か、だが逆に安心もしたよ。

おかげで油断する気持ちは完全になくなった。


とはいえ、このままでは確実に負ける、いやそれどころかCクラスに大きな被害を被ることになりかねない。

麻那の情報は自然にCクラスには流してある。

あいつらが信じるかは知らないが、あとは俺が誰と戦うことになるかだ。

まぁ、そこは多分心配いらないだろう。


「はぁ…なんというか、めんどいな」


今になって今の状況がどれだけめんどくさいかを認識した。

麻那が抱えている問題、俺自身が抱えている問題、本当にどうしてこんなことになったのだろうか。


「テレビでも見るか…」


俺は気分直しにテレビをつけるとあるニュースが流れる。


『昨日を朝5時に軍部直属の特殊部隊・レギオンのNo.2とNo.7が帰還しました、どうやら新たな発見があったという情報を入手、これからもレギオンの期待が高まりました』


なんというか、つまらない。

テレビを映すと変なニュースしか流れてない、この世界にテレビの娯楽はないのか!!


「はぁ〜〜」


残り1週間、少しでも後悔のないように頑張るしかない。




影のクラガリ・計画発案者


暗い道、一切の光を通さない、空間。


「計画は順調だ、Aクラスも荒れているようだし、このままいけば、必ず成功する、問題があるとすれば…」


最近、学園長が動いているという噂を聞いた。

学園長の後ろにはあのレギオンがいる以上、もしレギオンが動いていれば、この計画が破綻することになる。

そのためにも…


「貴様たちには結界を張ってもらいたい」


作戦を開始次第、結界で全生徒と先生を無力する。

これならば、いくらレギオンでもある程度は時間が稼げる。


「私の作戦は完璧だ…」


この作戦が成功すれば、幹部としてさらに評価が上がる、そうすれば、司祭だって夢じゃない。

あの老いた司祭では影のクラガリは大きくならない、私ならより強大な組織にできる!!


「必ず、成功させなければ…必ず…」


「おいおい、大丈夫なのかよ、あの幹部様は」

「しっ〜〜黙って、私たちはただ命令通りに動くだけよ」

「わかってるって…」

「おい、お前達…」

「なんでしょうか、幹部様」

「この1週間が勝負だ、決してバレるなよ」


『はっ!!』


結界を張るためには念入りな準備が必要だ、偽装して侵入させてはいるが、あの学園は警備が厳重だ、いつバレてもおかしくない。

だがもうここ1週間はバレていない、流石に大丈夫だと思うが…


「ははは、1週間後が楽しみだ…」




学園長室

大きな椅子に堂々と座り、連絡が来るのを待っていた。


「ふむ…ふむ…」

「寝てるの?」

「ふぁあ!!お、ようやくきたかぁ、アルファ」

「よくお眠りで…」

「ははは、仕方ないだろう、ここ1週間は激務だったじゃから、で調べはついたのか?」

「うん、ある程度はだけど、これ以上の深追いりは厳しいと思う」

「そうか…」


今回、アルファにある別件を頼んでいた。

影のクラガリ、最近、あちこちで何かしらの悪巧みをしている組織、その情報収集の任務を行なってもらっていた。


「で、何がわかった?」

「うん、まずどうやら、影のクラガリはこの学園で何か企んでいるらしい、けど計画まではわからなかった、あと影の王っていうのを信仰していることがわかったよ」

「それだけか?」

「うん…」


なるほどな、これ以上の詮索は命に関わる、アルファでさぇ、ここまでの情報しか集められんとはな。

相当、闇が深い組織と見ていいだろう。

だが、逆にちょうどいいかもしれん。


「企んでいる計画がいつ決行されるのかはわかっているのか?」

「それなら、6月1日だよ」

「なるほどな、何が狙いかはある程度わかったぞ…よし、レギオンを動かそう、アルファは前の任務に戻っていいぞ」

「わかった…」


ちょうどよかったわい。

レギオンが昨日帰ってきたところだ、奴らに任せよう。


「というわけで頼めるかの?そこにいるのじゃろ?」


すると突然、人の姿が現れた。

軍服を着た、少し暗い青髪がよく目立つ男。


「その目は衰えていないようだな、学園長」

「舐めるでないわ、レギオンNo.7、《無欲》のゼオン・アルベス」

「で、任務はなんだ」

「直球じゃな、お主はまぁほぼ聞いての通りなのじゃが、お主達の任務は計画の阻止、そして影のクラガリに関わっている人物の確保じゃ」

「了解した…すぐに下準備を始める」

「話が早いな!!…おっそういえば、あの子はどうした?」

「そこにいるぞ」


ゼオンが学園長の後ろに指を差す。


「わぁ!!!!」

「なっ!!!なんじゃ…ってそこにおったのか」


学園長の後ろにいたのは赤いロングヘアーが特徴の女の子。


「ひどいな〜学園長、久しぶりに会ったのに、けど任せて!!この私、レギオンNo.2、《閃光》のティリア・アルマージがボコボコにしてくれよぅ!!」

「ボコボコにって、ほどほどにな」

「では、失礼する」

「またねぇ!!」


二人はそのまま部屋を退出した。

本当にあの二人は仲がいいのう。

少し性格には問題があるが、あの二人なら安心して任せられる。

なんせ、レギオンは軍人の中でも特に優れた12人を集めた特殊部隊、その力、王に匹敵すると言われておる。


「影の王…王を語る者がこの世界にはいないと思うが、それに影のクラガリとは一体、何が目的だ…うむ、考えても仕方がない、わしも念の為、学園の監視に力を入れるかの」


ここまで対策すれば、大丈夫だと思う、だがなんじゃ、この胸騒ぎは…言葉では言わなかったが、心のどこかでまだ、拭えない部分がある。

このままでは全てが失敗するようなそんな気がしてならない。

そんな心配の部分も今回は誰にも言わず、心の中に留めてしまったのだ。



ゼオンとティリアは学園の廊下を歩いていた。


「今回の任務にはとても危険だ、絶対に先行して突っ込むなよ」

「わかってるよ!!全員倒せばいいんでしょ?」

「はぁ〜私が許可するまで絶対に動くなよ」

「了解〜〜!!」


帰還したばかりの俺たちだがすぐにまた任務を請け負った。

普通なら、断るだろうが、影のクラガリ、レギオンも最近、この組織を追っている最中だった。

その上でこれはまたのないチャンスだ、あいつらは基本、動くことが少なく、捕らえることがなかなかできなかった。


「必ず、捕らえて、罪を償ってもらうぞ」

「ねぇ、ねぇそういえば、今年が入学したんじゃなかったけ?」

「誰の話をしている?」

「伯くんのことだよ!!忘れちゃったの?」

「ああ、そういえばそうだったな」

「昔みたいに遊べるかな?」

「それは…あいつ次第だろう、まぁでもそもそもあいつはきっと俺たちのことを覚えていない」

「それは…そうかもだけど」


そもそも覚えていては困る、俺たちは決して相容れない存在なのだから、もう昔のようには戻れない。

今は任務に集中だ。


「うん?はぁ〜またかティリア…」


気づけばティリアの姿はどこにもなかった。



〈補足〉

レギオンNo.2:《閃光》のティリア・アルマージ 15歳

レギオンNo.7:《無欲》のゼオン・アルベス   17歳

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