第15話 《魔王》神谷伯 VS メイド服の女の子

休日の夜、いつも通り、任務をこなしながら、自主勉強に励んでいた。


「今日はここまでにしましょう…」


机から立ち上がり、クローゼットからメイド服を取り出し、着替え始めた。

任務も大事だけど、学園で生活する以上、学力を維持するのも大事、さらに私は任務につく前から行っている仕事もある。

本当に重労働だけどもう慣れてしまった。


「さて、やっと仕事ができます」


初日の休日は良かったけど、その後の休日は課題などで仕事ができなかった。

流石に仕事が1ヶ月以上もできなくなると、何が起こるかわからない。

何か起これば、私の責任になる。

だからこそ、今週の休日が空いているのは好都合だった。


「武器の予備は大丈夫、メイド服にもしっかり防御魔術は付与されている、よし、これなら…」


さて、行きましょうか、魔鏡の森へ。

魔鏡の森はたくさんの魔物が生息する危険な森、特に5月から8月までのこの月日は魔物が大量に発生する、もし街の中に魔物が侵入すれば、大惨事になる。

そのため、どうしても魔鏡の森の監視が必要だ。

とはいえ、魔物が街の中に入ることはほとんどない。

なぜなら、街には結界が張られており、ほとんどの魔物が破ることができない。

破れるとしたらSランクの魔物だけだろう。

魔鏡の森に着くと魔物の数は多くなっているものの、特に変わった様子はなかった。


「特に問題なさそうですね…」


しばらく、魔鏡の森を巡回していると、魔物が避けるエリアを見つける。


「なんでしょうか?」


・・・魔眼・魔生(ませい)・・・


生物の魔力を認知、量など見ることができる魔眼。


「何かいる…」


距離が離れすぎて、よく見えないけど、この魔力、どこかで…


「近づいてみよ」


そして近づいてみると、前にあったことがある魔族のような容姿をした男が立っていた。

近づくだけでものすごいプレッシャーが降り注ぐ。

やっぱり、只者じゃない。

よし、気配を消そう。

気配を消して背後に近寄ることにした。

そして私はこの魔族のような男に話しかけ、戦うことになったのです。



お互い睨み合う、どちらか隙を見せるのを待っている。

隙がない、最初見た時は只者ではないと思ってはいたが、こいつ、戦い慣れているな。

このままじゃあ、固着状態になる、ここは俺から仕掛けるか。


・・・魔王専用剣術・幅切り・・・


魔力を乗せて、瞬時に近寄り斬る。

すぐにメイド服は反応して右に避けた。

やっぱり、反応速度がはやい、だが俺は…


「俺の剣速はまだまだ上がるぞ!!!」


大声を出した。

生物は突然、大声を出されるとビビるらしい。

豆知識だ、覚えておきな。


・・・魔王専用俊敏スキル・魔速・・・

・・・魔王スキル・反射速度上昇・・・

・・・魔王スキル・魔星眼・・・


自身の反応速度と剣速を上げて、魔星眼で体感時間を上げた。


「邪魔ですね」


メイド服が一瞬で背後をとった。

え、早くね?


・・・自己流・居合斬り・・・


剣は完全に俺を捉えていた、だが……


・・・魔王専用剣術・覇王斬・・・


相手の攻撃に合わせて覇王斬をぶつけた。

激しい魔力の衝突に二人ともお互い後方に吹き飛ぶ。


「飛翔!!」


・・・基本スキル・飛翔・・・


飛翔を使い、空中でなんとか体勢を整える。


「危ねぇ、なんて魔力量だ…」


まさか、力で互角とは、予想以上に強い、それにあいつスピードが上がってたな。


「おいおい、まさか…」


俺は驚くべきものを見た。

飛んでいるではないか、しかもなんか、背中に何か生えている。


「そ、その後ろのは…」


メイド服も背中を見て、驚きを見せた。


「まさか、あなたに見られるなんて、不覚です…」


今思えば、おかしかった、俺はスキルで空を飛べるがあのメイド服はどうやって飛んでいた?

この世界を見る限り、道具か魔法でないと空は飛べない。

ここで考えられるのが、メイド服は人間ではないという考えだ。

だが羽が生えた人間がいるか?いや、いない。

いや、この世界にならあり得るかも。


「コホン、その〜なんだ、あ〜見なかったことにしようか?」

「それは、私に対しての脅しですか?」

「いやいや、誤解しないでくれ、隠したいことなんて一つや二つあるものだ、うん!」

「いえ、大丈夫です、知られたのは不覚でしたが、それはもう過ぎたことです、それに私の秘密の一つが知られた以上もう、力を抑える必要がなくなりましたから…」

「え?」


今、なんて言った?力を抑えてって、まさか、今まで手加減してたのか?

嘘でしょう、いやいや、そんなわけないでしょ。


「いきますよ、私、もう手加減できませんから」


突然、黒い風の渦が彼女を囲う。

そしてその風の中から現れたのは、黒い服で統一された特徴的な服、銀髪の髪は漆黒になり、髪がロングヘアに、そして漆黒の剣を携えていた。


「やばいな、あれ…」


完全に別人じゃん、魔力量も前とは比べ物にならない。

それにこの感じ、魔物と同じだ、まさか彼女は魔物なのか?

いや、違うどちらかと言うと、これは……


「さぁ、ここからが本番です、せいぜい私を楽しませてください」


俺はカチッとスイッチが入る音が聞こえた気がした。

なるほど、いいだろう。


「絶対に勝つ!!」

「ふふ、いい目です」


どうやら、俺も彼女もスイッチが入ったらしい。


・・・魔王専用剣術・シャドウエッジ・・・

・・・魔王スキル・俊敏上昇・・・



影を纏う剣と魔力が帯びた剣が交わり、大きな衝撃を与える。


「くっ…」

「この程度で?」


・・・自己流・瞬足一撃・・・


素早く、受け流し、受け流したスピードを利用して素早く俺の首元に向けて剣を振るう。

早い!けど避けれないほどじゃない。

だがここはわざと…受けた。


「ぐっ、いってぇ…」


くらいながら、彼女と距離をとる。

確かに、一撃は重いけど、致命傷にはならない。

それに少し動きが荒い、久しぶりなのか、動き一つ一つに一瞬の隙がある。

まぁ罠かもしれないけど。


「わざとですか?」

「はぁ?なんのことだか、わからないな」


くそ、気づいてやがる、けどこれなら勝てる。


「やはり、あなたはここで始末しましょう」

「物騒だね、俺が何かしたか?」

「存在そのものが危険です、あなたは今でも私に勝てると思っている、だからこそ危険…」


おお、思考まで読まれてるのか?

まぁ、だからなんだって話だが。


「へぇ、けどさぁ、始末するって言うけど、これだけは言えるぜ」

「なんでしょうか?」

「お前じゃあ、俺には勝てねぇ、絶対にな」

「なるほど、その舌、斬り刻んであげましょう」

「へぇ、やれるもんならな」


そろそろ、準備ができた。

俺が一瞬、目線を下に向けた瞬間、彼女は一気に詰め寄った。


・・・自己流・瞬光一閃・・・


おいおい、今の技、見たことあるぞ…けど、これで終わりだ。

俺はニヤリと笑う。

その瞬間、彼女は嫌な予感がした、今すぐここから離れろと脳内が言っている。

だが、もう遅かった。


・・・魔王専用魔法・魔の鎖・・・


彼女を囲うように鎖が飛び交う。

一瞬、彼女はその場から離れようとするがそれの判断も、もう遅かった。

鎖は正確に彼女を捉えて、身動きが取れないように縛りつく。


「う、動けない」


それどころか、力が抜ける、魔力も吸い捕らえる。


「まんまと引っ掛かったな…」

「くっ、ほ、どけない」

「好戦的で助かったぜ、おかげで簡単に罠にハマってくれた」

「ひ、ひ、きょ、うも、の…」


力も魔力も吸い取られているのか、力が抜けた声だった。

姿も服装がメイド服で銀髪のショートヘアに戻っていた。

少し、かわいい……いやいや、今はそんなことより…


「俺の勝ちだな…さぁ大人しく、俺の話を聞いてもらおうか…」


こうして、彼女は簡単に罠にかかり、俺の勝利で終わったのであった。



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