第11話 《剣王》と神谷伯との激闘
《剣王》ミラ・ヴィクトリアから放たれた覇気、今でも逃げ出したい気分だ。
だが、逃げたくない自分もいる。
俺は目を閉じる。
「なんの真似かな?」
神経を限界まで研ぎ澄ませる。
狙うはカウンター、それしかない。
真正面から向かって攻撃してわかったことがあった、それは異常のほどの、反射神経と目の良さだ。
おそらく、どれだけ早く動いても必ず捉えられる、なら相手が攻撃した隙を狙うしかない。
だから、相手が攻撃するまで待つ。
これが俺の今の最善手段だ。
「来ないなら、こっちからいくよ」
剣を構える、目つきが鋭く、獲物を狙うかのような気配を醸し出し…一瞬で間合いを詰める。
・・・剣王・居合斬り・・・
目では捉えられないほどのスピードで繰り出された《剣王》の剣技。
しかし、全神経を限界まで研ぎしませた俺はその剣技を捉えることができた。
ほんの一瞬、時が止まったかのように見えた。
俺は剣スレスレで避ける。
そんな中で俺は《剣王》の隙が見えた。
今しかない、今しかない、これが二度も通じるとは思っていない。
だから、この一瞬の隙を絶対に逃さない。
・・・勇者スキル・絶技一文字・・・
確実に決まったと俺は確信した。
勇者スキルの中で強力な技、『絶技一文字』、あらゆる全てを切る技、魔力を使う珍しいスキルで使うだけ、俺のほとんどの魔力を持っていくほど、強力な技だ。
だからこそ、絶対な自信がある。
だが、油断してはいけない、相手は《剣王》ミラ・ヴィクトリアだ。
・・・剣王・富嶽(ふがく)・・・
一瞬、《剣王》から魔力を感じた。
だから俺は、反射的にその場から離れた。
大きな衝撃音がドームを飛び越えて鳴り響く。
「う、ウソでしょ」
確実に決まったと思っていた。
確実に隙を突いたと思っていた。
「ふん、なかなか…腕はあったまってきたかな?」
「ふぅ〜結構全力だったんだけど…」
やっぱり、異常な反射神経だな、あの状態で俺の攻撃を完全に防いだ。
それどころか、それに応じて、攻撃しようとしやがった。
反射的に避けたが正解だった。
あぁ〜〜もう終わりたい、もう十分なはずなのに、なんだろう?あついな、あついな。
「まだまだ、これから…もう少し、上げていこうかな」
魔力が溢れる。
重い、重い、すごく重い、魔力を感じるだけで足が重い。
《剣王》もだいぶ熱くなっているらしい。
これは今日が俺の命日かな?
「さぁ、さぁ、」
・・・剣王・ゼロの型:白刃馬切り・雪・・・
一瞬で俺の前まで詰め寄った。
やばい!!、避けれない!!
剣王の剣技は直撃する。
確実に急所を狙った一撃、避ける暇もなく、後方に吹き飛ばされた。
会場もまた盛り上がる。
痛い、痛い、さすが《剣王》ミラ・ヴィクトリア、躊躇なく、急所を狙ってきやがった。
とはいえ、俺もたくさんの修羅場を乗り越えてきた、無意識に急所を外させることぐらいはできる。
まぁ、でももう立ち上がれないだけどね。
いくら急所を外させても、やはり一撃の重さが違う。
《剣王》がこちらに歩み寄ってくる音が聞こえる。
あ〜あ、ここまでかな。
『本当にそうかい?』
とはいえ、少しだけスッキリしている、けどせめて一撃だけは与えたかった。
『諦めるなんて君らしくない、異世界ではあんなに苦難を試練を乗り越えたじゃないか』
レベルが違う、次元が違う、生き物として違う、あれはそういう存在だ。
『けど、今の君はとても爽快な笑顔をしているよ?』
え?俺が?そんなわけがないだろう、だってこんなにもボロボロにされている、ありえない。
『ふふ、君は本当に素直じゃないな…だから、少しだけ素直にしてあげるよ』
何を言っているんだ?てかお前……誰?
『さぁ、スキルに身を沈めな…■■の■』
・・・■■■スキル・■■■■■・・・
どこからか、スキルの発動する音が聞こえた。
そこから意識はゆっくりとおぼろげになっていった。
《剣王》ミラ・ヴィクトリアは学生の目の前に立つ。
「ここで終わりですか?まだ終わりではないですよね?」
そう言って剣を思いっきり振りかぶる。
しかし、その場に学生はいなかった。
《剣王》ミラ・ヴィクトリアは後ろを振り返るとそこにはボロボロな学生がいた。
しかし《剣王》は彼の異変を感じ取った。
薄い影のようなモヤ、何より魔力を量がさっきまでとは比較にならない。
《剣王》が剣を構えると彼は一瞬で間合いを詰める。
間違いなく《剣王》の油断の隙を突いた。
しかし、《剣王》ミラ・ヴィクトリアにとって油断は隙にはなりえない。
ただ、この隙を突いた動きに対しては、《剣王》は認知できたが、動けない。
・・・■■■スキル・瞬光一閃・・・
黒い影を纏った剣が《剣王》の首元を狙う。
しかし、動けないとは言え、《剣王》だ。
モロに受けたものの、傷ひとつつかなかった。
「今のは少し驚きました、しかし、私の魔力はあらゆる鉱物より硬い、いくら魔力?を纏った剣でも傷ひとつ付きませんよ」
とはいえ、私が全く動けなかった。
確かに捉えていた、認知していたはずなのに動けなかった。
「やっと、本気を出してくれたんですね…ここからはもう少し私も本気なりましょう」
黒い影のモヤがより濃くなっていく、そのたびに魔力もより濃くなっていく。
《剣王》はさっきよりも速いスピードで剣を交えた。
さっきまでとは別人のように《剣王》と平気で戦う。
それどころか、より早く、正確になっていく。
このままではいずれ、私よりも速い剣速に到達するかもしれない。
早めに終わらせないと…いや?どうして私は恐れている、なぜ?今までこんなことを思うことはなかった。
私は焦っている、なぜ?理解できない、理解できない。
ただ、この瞬間、私を…《剣王》を越えるかもしれない、恐怖が…恐怖が…溢れてくる。
ああ、私はやっと………なれる。
次の瞬間、彼は私の背後をついた。
それが私のスピードを超えた瞬間だった。
・・・■■■スキル・次元斬り・・・
確実に直撃し、斬りつけた。
しかし、《剣王》はギリギリ避けた。
だが、頬に薄い傷を彼はつけた。
《剣王》の体は魔力で覆われていたが、その魔力ごと切ったのだ。
「まだまだ、足りない、あと少しで、あと少しで……私は!!」
その時、突然、上から大きい何かが落ちてきた。
ドームいるみんな、私たちがそこへ注目する。
そして《剣王》はすぐに気がついた。
「なぜ、あなたがここに……」
そこにいたのは七元王達のみぞ知る自分、《現王》アルフィー・テオドールがそこにいた。
認識阻害で誰も彼の顔を見ることはできなかったが、確かにそこに何かいることだけわかる。
「《剣王》…戦いはここまでだ」
「珍しく顔を見せれば、それは私の自由です」
「忘れたのか?」
すると彼は《現王》アルフィー・テオドールに向けて刃を向ける。
だが一瞬で首を掴まれる。
「不完全だな、健やかに眠れ…」
「なっ!」
「《剣王》ミラ・ヴィクトリア、これは命令だ…まさか、またあの時に戻りたい、とは思わないだろうな?」
「くぅ、わかった…」
「それでいい…」
すると《現王》アルフィー・テオドールは濃い霧の中へと姿を消した。
俺のおぼろげな意識は完全に途絶えた。
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