第1話 王育成機関リアム・テオ学園・入学式

大きな声を発すると、周りの人達は俺に目線を向ける。

「あ・・・すいません」

俺は周囲にペコペコと謝り、とりあえず、もう一度ベンチに座り、状況を整理する。

まず、ここは本当に俺がいた世界なのかを確かめる必要がある。

俺は相手の魔力を見ることができる。

そこら辺にいる人達を確認する、皆魔力を宿している。

「おかしい、絶対におかしい」

とりあえず、俺は街の周りを徘徊することにした。

何事も情報収集だ。

知っているか知らないかでは天と地の差だ。

しばらく、周りを見ると、見覚えのある街の名前などが多く発見できた。

間違えなく、ここは俺のいた世界だと思う。

俺はある程度情報収集をした後、自分の我が家向かった。

街を徘徊した時、道などは全く変わっていなかったから、すぐに家に辿り着くことができた。

「全く変わってない」

我が家は全く、変わっていなかった。

「そういえば、今の日付はいつなんだろう?」

俺はアイテムボックスに手を突っ込み、スマホを取り出す。

「残しておいて良かったぜ」

確認すると、俺が異世界転移した日から時間が止まっていた。

「そうだった、アイテムボックスに入れると入れた時間から時が止まるんだった」

やはり、家に入って確認するしかない。

しかし、もし別の人が住んでいたら?そう思うと少し怖い。

俺はゆっくりとインターホンを鳴らす。

すると玄関の扉が開く。

「あら、伯、早かったわね」

「う、うん」

出てきたのは正真正銘の俺のお母さんだった。

「どうしたの?下向いて、ほらさっさと上がりなさい」

「うん!」

涙は頑張って堪えたが、こんな気持ちになったのは初めてだ。

「それにしても本当に大きくなったわね、ついに伯も王育成機関リアム・テオ学園に入学なんて」

「え?、入学?」

「そうよ、何言ってるのよ、もしかして嬉しすぎて頭でもおかしくなったの?」

「いや、そうかも、ははは」

俺はそのまま二階に登り、部屋の扉を開ける。

そのままベットにダイブして、自分の部屋の周りを見渡す。

「わからない」

部屋は前と変わらない。

なのに、全く聞いたことない、いやむしろ少し異世界感を匂わせる名前が出てきた。

しかも、入学って、どういうことだ。

「王育成機関だっけ?」

俺は情報が足りないと判断し、自室にあるパソコンを開き、調べることにした。

すると街の名前などは全く変わっていないのに、学校や仕事などは変わっていた。

そして調べていくと俺が入学することになっている王育成機関リアム・テオ学園についての記事を見つけることができた。

どうやら、相当有名な育成機関らしい。

「この王候補ってなんだろう?」

さらに調べているとどうやらこの世界には魔物が存在するらしい。

そしてそれを退治するのが育成機関で育った者達らしい。

言うなれば軍人だな。

魔物にはランク付けがされているらしく、Eから始まりSで終わる6段階構成。

「え〜と、魔物は次元の亀裂から現れることが多い?」

なるほど、なるほど、少しわかってきたぞ。

この世界の常識、魔物や育成機関、そして王っていうワード。

「確かに、ここは俺の家なはずなのに、世界の常識が一変している、どうしてこんなことに」

しかも、記事やホームページを見る感じ、育成機関の入学年齢は15歳から、俺が異世界に行ったのは17歳。

「マジ意味わかんねぇ」

まだまだわからないことがたくさん、それは学園に行って、確かめるしかない。

ネットも育成機関や魔物についての情報は制限がかかっている。

「今は、家族会えただけでも喜ぶべきかな」

まぁ時間差を考えると本当に俺の親かは疑うべきだろうけど、そんな事を考えていても時間の無駄だ。

「伯〜〜ごはん!!」

「わかった!!」

そのまま夕食を済ませて、情報の収集を夜0時まで行った。

「王の存在、この王は一体何者なんだろう、それに歴史・・・」

この世界の歴史は100年前までは俺の知っている歴史とそこまで変わってはいなかった。

問題は100年前に起こった事件、いや災害だ。

「真実あるとすれば、100年前に起きた災害か、王か、いや考えても仕方ない、とりあえず、明日に備えて今日はもう寝よう」

こうして日にちは過ぎて行き、遂に入学式当日。

「伯、かっこいいわよ」

「ありがとう、お母さん」

「それにしても運がいいわね、伯」

「え?」

「だって伯の同期って王候補として期待されている子たちが4人もいるじゃない、もしかしたら伯も」

「それはないと思うけど」

「あらそう?」

こうして俺は入学式が始まった。

入学式、総勢600人、親を合わせると1200人以上。

「少ないな」

魔物は世界各地で現れているらしい、この国だけでも年間100万以上、人手不足なのだろうか。

「諸君たちの入学を心より歓迎する」

学園長の挨拶が終わると新入生代表挨拶が始まった。

「新入生代表!星波 麻那!!」

「はい!!」

星波 麻那は俺の幼馴染だ。

もちろん、異世界に行く前もかなり仲の良かった。

俺は友達と呼べる存在が少なかったから、ある意味貴重で、そして救いだ。

「そして・・・」

少し学生たちがざわめく。

「あれが」

「ええ、剣王の王候補が期待されている」

どうやら相当優等生らしい。

いつもそうだが、本当にどうしてあいつと幼馴染なんだろうか。

壇上から降りて席に向かう麻那、すると俺の方に目線を向けて、にこりと笑う。

俺は苦笑いで返した。

俺にはある目的を定めている。

それはなるべく平和にここを卒業すること、正直、争いごとはもう飽きている。

死ぬほど異世界で経験したからな。

だからこそ、麻那との接し方も考えないといけない。

入学式は無事終わり、新入生たちは新しい教室に案内された。

俺は1年C組だった。

「ここが君たちの新しい教室だ、そして連絡事項だが、明日からカリキュラムが実施される、明日に備えて体調を整えておくように、以上解散!!」

俺は机に置かれた紙を見る。

どうやらカリキュラムが記載されているようだ。

「結構、きついな」

「だよな〜〜」

俺の後ろにいるのは、桐生 蓮也、数少ない友達の一人だ。

どうやら同じ教室になったようだ。

正直、少しだけ嬉しい、ぼっちにならないから。

「なぁなぁ、麻那はA組らしいぜ」

「だろうな」

一見、ランダムに見えるクラス分配、だが恐らく、クラス配分は成績順、もしくは魔力量だろう。

「明日は、実技が多いから、ちゃんと、体休めとけよ」

「わかってるよ、伯は心配性だな〜〜」

「蓮也は休むって言葉を知らないからな」

そんなたわいの無い話をしながら、家に帰った。



王育成機関・本部

そこでは重要な会議が行われていた。

「今年もなかなか、優秀な人材が集まりましたな」

「そうですね」

「しかも、今年は優秀な生徒が4人もいるではないですか!!」

「ミラ様は今年の生徒を見てどう思いましたか」

黄金に輝く髪を靡かせ、青い瞳は、みんなを魅力するほどに美しい、《剣王》ミラ・ヴィクトリア、剣において彼女に勝てるものなどいない。

一振りするだけで、山が裂け、剣圧だけ、相手を切る事もできる。

正真正銘の化物の中の化け物だ。

「そうね、この少年が気になりました」

冷たい瞳で、生徒の写真の中から、一枚の写真を指差す。

「彼ですか?」

「私は部屋に戻ります」

彼女はそのままその場を去った。

「ふむ、神谷 迫ですか」

すると周りの者たちは鼻で笑った。

それもそうだ、だってCクラス配属された、生徒に誰が期待する?

《剣王》も面白い冗談いうものだ、と笑った。

ただ一人を除いて。

「アルファ」

髭を生やした、老いた老人口に出すと、一人黒い服で身をまとった者が現れる。

「なに?」

「この少年を監視しろ」

手渡されたのは少年が写った一枚の写真だった。

「わかった、けど・・・どうして?」

「《剣王》様、この少年に興味を示した、これは今までにない例だ、もしかしたら、この少年に何かあるのかもしれん、そのためだ」

「内容は理解した」

「では頼んだぞ」

そのままアルファは闇の中へ姿を消した。

老いた老人は一息つき、椅子に体重を乗せる。

「わしも老いたものよ・・・《剣王》が興味を示した少年か、、実に楽しみじゃわい」



《剣王》の寝室

彼女は寝ることはほとんどない。

寝るとすれば、一年に一回程度、睡眠はそれで事足りる。

しかし、彼女にはどうしても気になることがある。

それはかの少年だ。

彼からは、ただならぬ気配を感じた。

そう、15歳で出すものではない何か、そう彼女は久しぶり、警戒したのだ。

「少しは楽しめるかもしれないわ」

彼女は愛剣を引き抜き、眺める。

傷ひとつない、剣、しかし、その剣には今まで潜ってきた歴戦の戦いが刻み込まれている。

彼女は無意識に不敵な笑みを浮かべる

「あら、どうして、私は笑っているのかしら?」

彼女が何を思って笑ったのかは誰も知らない。



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