第3話 かぐや姫

爺「ただいま。ふぅー…今日もなかなか疲れたわい」


お爺さんが竹取の仕事を終えて家に帰ると、お婆さんは口に人差し指を立てて「しー」と合図しました。


爺「おっと!寝ておったか…本当に可愛ええのぅ…」


柔らかな布を敷いた竹のゆりかごに、小さな子供はすっぽりとおさまってすやすやと寝息をたてていました。


婆「えぇ、えぇ。こんなに可愛い子を捨てるなんて親は何を考えているのやら…。私なんて可愛すぎて見つめてたらお爺さんのご飯の支度も忘れてました…フフッ」


爺「おぉ…そうかぁ…。えっ?あっ…そ、そうかぁ…」


物凄く残念そうにしょぼくれたお爺さんを見て、お婆さんはクスクスと笑いました。


婆「冗談ですよ。私もまだ食べていないので。温めますね」


爺「婆さん…!あ、そうじゃ。山葡萄が実ってたから少し取ってきたんじゃ。飯の後にそれも食べよう」


子供「んぅ…うぅ?」


小さな子供は起きたのか、お爺さん達に向かって手を伸ばしてニコニコしました。


婆「あらあら。起きちゃったかしらね。お爺さん、かごを揺らしてあげてて下さいね。すぐご飯の支度をしますから」


その日の晩ご飯はいつもよりも和やかでした。


ご飯を一口食べる度に、小さな子供は欲しそうに口を開け、その度に山葡萄を食べさせました。


爺「いやぁ…この子は甘いものが好きなんじゃなぁ」


婆「いっぱい食べて早く大きくなって欲しいですねぇ。そう言えば…名前はどうしましょうか」


爺「うーん…竹の近くに居たから…竹子なんてどうじゃ!!」


お爺さんはこれぞ名案!と言わんばかりに満面の笑みで言いましたが、お婆さんと子供の視線ですぐに意気消沈してしまいました。


婆「お爺さん…あまりにも安直過ぎますよ…。そうねぇ…こんなに可愛くて美人になりそうだから光り輝く様な姫、かぐや姫…なんてどうです?」


これにはお爺さんも拍手、子供も全力でバタバタしながら喜びを表しました。


婆「それじゃ改めて…。貴女の名前はかぐや姫。これから宜しくね」


かぐや姫は頬を撫でる手に小さな手を重ね、またすやすやと眠り始めました。


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