第6話
「あぁ.......あーちゃんの欲しいものを買えて幸せぇ〜〜」
本屋からの帰り道、俺の隣でだらしない顔の成仏しそうなこの女、、ムカッとくるから本当に早くそのまま昇天して欲しい。てか地獄に行け!
本屋の時からずっとこうだ。
店員の前に立った瞬間真顔になったのを見た時は怖かった。
確かに?小説買ってもらったけど?一人暮らしを決意した俺に黙ったまま1年も追いかけてきて隣に住み込んだこの女にどうして俺が感謝しないといけないのか俺には分からない。
確かに住むのは自由だ.....自由だが、俺はこいつが嫌で逃げてきたのに!
クソ..........。
「あ〜ちゃん.....もっとひっつこ〜〜よぉ〜」
「ちょっ、ひっつくなって!」
「うへ、うへへ........あーちゃんの匂いたまんねぇ〜うへへへ」
2、3倍、よりだらしない顔になって俺の腕に抱きつこうとしたところをどうにか回避できた。
たく.......こいつとは本当に話をつけないといけない。流石に高校生にもなったんだから話くらいなら聞いてくれるだろう。
「お前本当に女の子かよ.........」
「そうだよぉ?あ〜ちゃんのことが大大大大大好きな女の子だよぉ〜」
甘ったるい声で言っているが、俺からしたら恐怖でしかない。こいつのせいで他人に話しかけられない日など数えきれないほどある、トチ狂った青春を巻き返すための一人暮らしという絶好の機会を逃すわけにはいかないのだ。
つまり、俺は横で頭がお花畑になっているこいつをこの土地から向こう(地元)へ返しにいかないといけない。この村から出てけ!
♢
マンションに着き、ロビーに入る時に千里が口を開いた。
「あ〜ちゃん、あのね.......隣に内緒で住んでたのは申し訳ないと思ってるの.......」
申し訳ないと思ってるのなら帰ってくれ。
そんな俺の心も無視して、けどね?と続けられる
「あーちゃんが進路希望調査で一人暮らしするって分かった時ね、ちょっとは我慢しようと思ったんだよ?」
ちょっとじゃなくて、永遠我慢してくれ頼むから。
「それでね、1日目我慢できたの。我慢できたんだけど........体からあーちゃん成分が抜けて、しんどくなってき始めたんだ。二日目でね、もう耐えきれなくなったのか分からないけど何も考えられなくなって、食欲もなくて、、、だからもうダメと思ったから.........」
「思ったから?」
「着いてきちゃった」
「は?」
何言ってんだコイツ?
「ん?.....何かな?」
「いや、こっちのセリフだよ俺に着いてきた理由がわかんねぇよ」
「理由はさっき言ったじゃん、もぅ忘れん坊なんだからぁ.........あーちゃんが進路希望調査で一人暮らしするって分かった時ね、ちょっとは我慢しようと思ったんだよ?」
「もう一回言えって意味じゃねーよ!!?お前の理由が理解できないんだよ!」
くそ、本当に噛み合わない。
俺のコミュニケーション能力にも問題あることは承知だが、聞く方も大概だと思う。
「えっ、私?う〜ん........どこか悪いところあった?」
上を向いて、少し考えているがこいつにとってはもはや“フリ”だ。実際は何も考えていないに違いない。
「寂しくなるのは分かるが、俺の成分って何だよ」
「あーちゃん成分はねぇ?私にとって、とってもとってもとっても大事な成分なんだよ、あーちゃんに近づけば近づくほど摂取できるんだけど0になる程、死に近づくんだ.......だから私にとってあーちゃんは生命線つまりあーちゃんなしじゃ生きていけない体に........」
もういいっから黙ってくれ、、部屋も近くなってきたし。
「余計に意味わかんねぇよ............」
「ん?」
こいつとはより一層話が必要なようだ。
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