第2話 アイデアの“取っ手”を作ろう〈観察と取材〉
みなさま進捗どうですか?
私は芳しくありません。
というわけでお疲れ様です。電気石八生と申します。
今回も引き続き、発想の術についてですね。
前回は新奇性と独自性のある既存要素の組み合わせについて考えて、なぜか「ホスト!!」へ至っての引きとなりました。
さて、何故わたくしはそんなことを言い出したのでしょうか?
実は私、不定期で格闘技を教えていたりもするのですが、個性的な経歴を持つ生徒さんが多数いて、その中にホストさんもいらっしゃるのです。
いろいろおもしろいお話を聞けたのはもちろんですが、そこで初めて知ったのですよね。ホストクラブは日本独自のもので、他の国には存在しないんだって。
さらには現在、ホストさんはアイドル化が進んでおり、女子は担当(指名しているホストさんを指します)を推しているのだとも。
このように、日々の何気ない会話の中にも様々な情報が溢れていて、それが資料になります。インプットは資料にあたるだけでなく、日々の生活の内でも為されるのです。
直接的であれ間接的であれ、かならず見聞きしているもの、すなわち“他の人のお話”は貴重な情報源です。
立場、職業、半生の過ごし方、なにもかも違う人の体験や経験は、たとえささいなものであれ実に刺激的でおもしろいもの。
ホストさんとの出会いがなければ、私は決してこんなネタを思いつけなかったでしょう。収集方法問わず、人の語る“話”を収集することで意外な発想は得られるものだなぁと。
話を戻しまして。
担当のワードからも察せられますが、ただのファンとは一線を画す「推し」なる文化、日本特有のものかと思います。
それこそ江戸で言えば、歌舞伎や相撲がありました。多くの人々が贔屓の役者や力士を語ると同時、彼らにちなんだものをわざわざ買い集めたりして、推し活に励んでいたのですよね。
そして水茶屋の看板娘にいい顔をしたくて、客である男性諸氏は気前よく金を放っていきます。この頃からスパチャ的な文化がこの国にはあったんだよねーと感心すると同時、看板娘って役者や力士よりも遙かに近い場所にいる、まさに会いに行けて推せるアイドルだったんだなぁと。
ホストさんはまさに、現代推し社会の看板娘と言えるのではないかと。
この時点で対象読者層は、時代物に近年増加しつつある女性読者さんを想定することとしました。
時代物といえば壮年男性のエンタメという印象が強いものですが、
1.『みをつくし料理帖(高田郁/ハルキ文庫)』をきっかけに、従来の女性作家さんと新規の女性作家さんが「食べ物」系という新ジャンルを確立した。
2.刀剣や戦国武将など、女性の興味をそそる歴史モチーフが増えた。
これらのことから、比較的若年の女性読者さんが時代物に増加しているというのです。実際、女性向けのソシャゲは時代物が強いですよね。
そしてなにより、男子を推す心情や男子の男子たる“粋”を楽しんでいただけるのはやはり、女性かなと。そう思う部分が大きかったのです。
まとめます。
ワードとして思いついた「江戸×ホスト」は、とにかくインプットしてきた江戸知識や人から聞いたお話、さらには「推し活」を練り合わせることで、以下の形となりました。
・売り物はひとりの男そのもの。
・買い手はその男を推す女子。
・両者の人間模様を描くのが『江戸ホスト』!
アイデアは既存の要素の組み合わせ。
自分の“好き”に日常で得た“おもしろげ”を組み合わせることで、なかなかキャッチーなアイデアは生み出せたかなと思います。
おもしろくできるかは未だ不明ですが、とりあえず自画自賛しておきましょう。おそらくそれができるのは今しかないでしょうからね!
こうして創作の一歩、発想はできました。
次は岡田くんのまとめてくれたこの、新たな創作術の区分と順序に従って、考えていきます。
〈創作術の区分/順序〉
1.アイデア作り、発想
2.観察、取材
3.キャラクター
4.プロット作り、シナリオ構成
5.執筆・推敲、文章術
6.作家として生き残る方法
EX.物語論、ストーリー論
【編集者岡田の一言メモ】
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「アイデアとは既存の要素の組み合わせにすぎない」というのは、どの本を読んでも書かれていることです。今回のアイデアは「江戸時代×ホスト」という組み合わせから膨らませています。
そして、それらのアイデアは「生の言葉」から生まれてきたことも特徴的です。現役のホストから話を聴き、そこから新たな情報を知り、自分の持つ別のアイデアと組み合わせる……とても綺麗に設定のアイデアが出来てきていますね。
そして大事なのは、自分はどんなターゲットに向けて創作物をつくろうとしているのか、見極めること。電気石さんは前回でも時代小説の変化を観察しており、女性読者が増えていることをリサーチしていました。そして、「ホスト」という日本独自の職業と、「推し活」という時代に合わせた趣味嗜好を混ぜ込んでいます。読者はいまの時代を生きる人々です。彼ら彼女らの興味を惹くにはどうしたらいいか。これも観察と取材で見えてくるのです。
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〈毎週水曜日更新予定〉
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