第2話 始まりは唐突にやって来た
「…お、ちゃ……き、…て……」
…
「……おき…て、………ちゃん」
……後、10秒………
「お姉ちゃん起きて〜!」
「ーーぐぅほぉ!?」
ゔぅ、無防備な私にフライング・エルボーを仕掛けてくるなんて……、弟は将来は強いプロレスラーになれるな。
姉が保証しよう。
「全くもう。朝はユウくんに起こして貰わずに、ちゃんと自分で起きれるようになりなさいよ」
我が家のキッチンで朝ご飯を作ってくれていた若作り過ぎると定評のある母さんが、私にベーコンマヨチーズパンを持って来てそう言ってくる。
でも、それは人間の三大欲求たる睡眠欲に従っているだけだからしょうがないと思うんだ。ベーコンマヨチーズパンと同じだよ。
その溢れ出る魅力に人は抗えない。
自然の摂理とも言う。
あむ。あむ。
『昨日午後10時頃、宮城県都々市の「ふれあい動物園」が全焼した事件で、警察はコレを放火の疑いがあるとして捜査を進めています』
ニュースは昨日あった放火事件一色。
何故、動物園を放火したのだろうか?ヤるにしてももっと他に場所があるだろうに。
「最近多いわねぇ」
そう最近、宮城県はこういった事件が非常に多くなった。警察も一日置きに全国ニュースレベルが起きるから大忙らしい。
そして私はこの事件の数々が、神々の「遊び」関連なのではないかと警戒している。
何せ私の住んでいる地域が宮城県都々市だからね。これで関係無かったらビックリする。
「今日もお父さん遅くなっちゃうわね」
警察官である父さんは、朝早くから出て行って夜遅くに帰ってくるのが日課になっている。父さんは真面目過ぎる所があるから厄介毎に巻き込まれないと良いんだけど………。
いや、警察だから厄介毎に巻き込まれないでは無茶があるか。
まぁ、今日も何事もなく帰って来てくれることを願う。
「行ってきま〜す」
「はい、行ってらっしゃい」
どうやら先にベーコンマヨチーズパンを食べ終えていたユウが小学校に出かけようだ。
相変わらず小学生は元気一杯だ。
毎日が楽しくて堪らないのだろう。
私があのぐらいの頃は、いつ起きるか分からない「お遊び」を警戒して半グレみたいな痛い奴に成ってた記憶があるなぁ〜。
恥ずかしい思い出だ。
「ほら、アンタもサッサと食べて準備しちゃいなさい!」
「うぃー」
学校に行かねばならない時間も迫っているし、今日のお腹的にもう一枚食べたい気分だったが諦めよう。
でも学校休みて〜
◇ ◇ ◇
文系な私にとって理系の授業はキツい。
今受けている数学の授業は特に。
連立方程式とか確率とか二次関数とかは出来ない事はないのだが、応用になったとたん詰む。というか詰んだ。
人生二週目をやったとて頭が良くなる訳ではないのだ。
なわけで私は授業を真面目に聞いて理解し、分からない所があれば聞かなければならないのにーーー
「コレでxを求める訳だが、何か質問あるヤツはいるか?」
「「「「「「「「…………。」」」」」」」」
「いないようだな。では次は……」
この空気感で質問できる訳がない!!
クラス全体から面倒臭いから誰も聞くなよっていう何とも言えぬ空気が漂っている。此処で空気読まず質問したら、一瞬で村八分対象かなされるのは間違いないだろう。実例があるし。
前世では授業中にこんな重い空間になる事なかったのに…、やっぱりちょっと偏差値低い高校に入ったからかな?誤差だけど。
まぁ、取り敢えず黒板の書かれたやつを写すだけ写そう。書き書き。
「あぁ〜ようやく学校終わった〜」
ようやく午前・午後の授業が終わり私は自由の身となった。身体も心も軽い軽い♪
この瞬間は学校で昼ご飯を食べる時の次に好きかもしれない。
「ホントあんたって学校嫌いよね」
ピコンと存在を主張するアホ毛がチャームポイントの
「学校は嫌いじゃないよ。ただ家が1番安心できるだけ」
我が家ほど安心出来る場所はこの世に存在しないと断言出来る。もし家がなくなったら発狂するかもしれない。
因みに将来の夢さ改築して家から一歩も出ずに生きていく事。目指せ自宅警備員。
「え〜学校の方が楽しくない?」
「楽しいけど私インドア派極めたいから」
残念ながらアウトドア派の気持ちはあんま分からん。別に動くのは好きだけど人が多い所に態々行こうと思わないんだねぇ。
自慢は出来ないけど、私は片手で数えるぐらいしか学校外で友達と遊んだ事ないのだ。
…………
………
……
…
紅馬ちゃんと別れ学校を出て歩いてボッチ帰宅中〜。
学校から家までの距離は徒歩10分。
普段は自転車通学だからもっと早いんだけど、今日はパンクという重大事件に気付いてしまったので歩きとなった。前輪が見るも無残なペッチャンコだった時は衝撃を受けたね。
でも良かったぁ、歩いて直ぐ帰れる距離の高校選んでて。高校を偏差値とか治安が良いとかじゃなくて「安くて家から近い場所」で選んだ甲斐があった。
お陰で、毎朝ギリギリまで家にいれて時間に焦らずゆっくり行ける。今日は全力疾走したけど。
「おい、そこのお前」
そんな事を考えながら歩いていると、家まであともう少しという所で、ロングコートに帽子を深く被って顔が見えなくした、明らかにカタギじゃない雰囲気の大男が立ち塞がった。
辺りは私しか居ないので私に言おうとしているのだろう。
その大男はチビっちゃう程の恐ろしい殺気を向けてきており、とても通りすがりに道を聞くような様子じゃない。
私が知らぬ間に何か気に触る事でもしてしまったのかな?こんな殺気を向けられる理由が一つしか思い付かない。
しかし、唯の迷子で殺気立ってしまっているだけの人の可能性も微粒子レベルでは存在していると思うので、そうであって下さいと祈りながら大男の次なる言葉を待つ。
「なぁ、死んでくれねぇか?」
イキナリ オワタ
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