第13話 疑惑



 「家持は、安積皇子の挽歌として、長歌1首と反歌2首を残しています。いずれも、亡くなった皇子を、「吾王おおきみ」と呼び、血を吐くような悲痛な言葉を連ねています」


 桐原の弟は言った。

 少しためらい、続けた。


「仲麻呂が、安積親王を殺した。僕は、家持が、それを疑わなかったと思います」


 俺も、そう思う。


 それまで健康だった安積皇子の、急変。

 恭仁京には、聖武帝をはじめ、主だった人たちは誰もいなかったこと。

 留守官として、仲麻呂が居残っていたこと。

 彼には、叔母の御機嫌を取る必要があったということ。

 そして、叔母の光明皇后は、安積皇子を目障りに思っていた……。



「やがて、敬愛する聖武天皇が亡くなると、家持は、仲麻呂への復讐を始めるのです」







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