第30話 VS火縄銃部隊
コニタンのダサい登場とは反対に、ノダオブナガが真剣にサンドロ大臣とロクモンジ国王に話す。
「あと数日で年が明けて世紀末が終わる。それまでに地獄の門が出現し、三大悪魔が人間界へやって来る。正直、キャンディー帝国にかまっている場合ではない。少しでも早くこの戦いを終わらせねばならん」国王。
「先ほどの話のことですが、占い師のオノノ殿は具体的に何を話されたのですかな」大臣。
「うむ、そのことだが……キャンディー軍も、同じ災難に見舞われるようだ」ロクモンジ。
「つまり、キャンディー軍も悪魔との戦いに巻き込まれるというのですかな」大臣。
「オノノによると、ジャポニカン王国王宮の西、水辺の場所にて人間と悪魔との終末戦争が起きるというのだ。そのとき、キャンディー帝国軍もそこにいるということだ」ロクモンジ。
「それでは、この戦いの最中に悪魔との戦争が起きるかもしれませんな」大臣。
「わしらに負けたキャンディー軍がそこにいるという意味とも受け取れる。キャンディー軍と悪魔を同時に相手にするのは避けねばならん。まずはこの戦いを終わらせるぞ」国王。
ロクモンジが
「よいかー! 侍の刀は人を傷つけるためにあらず! 人を守るためにある! 敵を殺す必要はない! 我らの家族、友人を守るために刀を振るえ! 皆の者、いくぞー!」ロクモンジ。
侍たちは敵陣に向かって馬を走らせる。
「おい、待て、こら、バカ馬!」すぺるん。
すぺるんの乗る馬も他の馬につられて敵陣へ走り出す。コニタンの馬はその場に留まり、臆病そうに震えている。なるほど、ペットは飼い主に似るというか、馬は乗り主に似るのか。
キャンディー軍は、火縄銃部隊を前に配置する。約千人。千人の後ろに別の千人が用意して待っている。突進してくる侍たちに向けて、千人の火縄銃部隊が撃つ。
バキュバキュバキューーーン!!!
侍たちは刀で弾丸をはじき飛ばす。
「おい、マジかよ! 鉄砲の弾なんか見えるはずないだろ」すぺるん。
仰天するすぺるんの真横で、ロクモンジが言う。
「見るのではない。感じるのだ」
「……感じる?……」すぺるん。
「そうだ、感じろ」ロクモンジ。
ロクモンジは刀を抜き、敵陣に向かっていく。そして、火縄銃部隊の撃った弾丸に当たる。驚くことに、弾丸に当たる。
「うぐぁぁぁぁーーー!」ロクモンジ。
「えええーーー!!! おい、おっさん、弾、当たっとるぞ!」すぺるん。
すぐに周りの侍たちがロクモンジを取り囲む。
「国王を後ろへ!」侍。
ロクモンジは護衛されて後方へ下がっていく……マジかよ……。
すぺるんの馬はロクモンジを無視して敵陣へ走る。すぺるんは背中の刀、海老斬丸を抜いて縦に構える。
「感じるのか……」すぺるん。
目を閉じるすぺるん。
「……なんだか下半身が熱く……」すぺるん。
この男、生きるか死ぬかの場面で……。
「いや、違う違う!」すぺるん。
すぺるんのバカ馬は走る。侍たちは敵陣に突っ込み、刀を返して峰で兵士たちを叩き倒していく。しかし奥から火縄銃部隊が現れて射撃。すぐにその後ろから別の火縄銃部隊が現れて射撃。幾人もの侍が、かわしきれずに、撃たれて落馬する。すぺるんのバカ馬は発砲音にびっくりして、すぺるんを振り落としてしまう。すぺるんはすぐに銃撃に備えて、身を
後方へと戻ったロクモンジ。すぐに神官たちに回復魔法で傷を直してもらう。幸い、弾は肩を貫通しており、魔法で完全に治療することができた。
「国王様、今が絶好の機会かと思われます。我らジャポニカン王国の軍も突撃するべきではないでしょうか」大臣。
「うむ、そうじゃの。全員、前進せよ! 火の丘の侍たちに続け!」国王。
「おーーーーーっ!!!」兵士たち。
「師匠、行きましょう。セサミン、シタイン、行くぞ!」ハリー。
ハリーたちは魔界タクシーに乗って敵陣へと向かう。ロクモンジは肩を気にしながら、はっと思い出したかのように言う。
「そういえば、ノダオブナガ殿。メイジ大神官が言っておった。例のあの男、生きておるぞ」ロクモンジ。
「例のあの男?」国王。
「……」大臣。
侍たちは続々と敵陣へ向けて走る。火縄銃部隊も次から次へと入れ替わって撃ってくる。すぺるんはガントレットで一斉射撃を防ぐことで精一杯な状態だ。
「畜生! 動けねえ!」すぺるん。
多方向からの射撃を防げずに撃たれていく侍たち。その一方で、自陣内で馬に乗った侍たちに大暴れされて混乱しているキャンディー軍。火縄銃による遠距離攻撃を止めない限り、侍たちの犠牲は増えていく。
と、そのとき、南側の岩山の方から何かが向かって来るのが見えた。兵士たちが気づいて、その方向を見上げる。侍たちも同じように。そしてまたジャポニカン軍も。空を飛ぶ黒っぽい何か、それはすごい速さで戦場に向かって滑空してくる。
「何だあれは!」兵士。
兵士たちと侍たちは戦闘など放ったらかしで、その飛んでくる何かを見ている。色が濃い緑であることがなんとなくわかるような距離になったとき、兵士たちはたじろぎ、驚愕する。巨大な生物が飛んでいるのだ。
「あっ、ゴン! ゴンじゃねえか!」すぺるん。
そう、ドラゴンのゴンだ。ゴンはキャンディー軍陣営のど真ん中に降下する。風圧で数十名が倒れる。驚きのあまり見上げることしかできないキャンディー軍を、ゴンの背に乗っている男が攻撃する。ゴンの背の鞍の上から男は槍を振り回して攻撃する。一振りで数人をはじき飛ばしていく。
「うわあぁーー!」兵士。
「ドラゴンだー!」兵士。
「背中に誰かが乗ってるぞ!」兵士。
「ドラゴンナイトだー!」兵士。
逃げ惑う兵士たち。
「あっ、あいつ、あのときの太陽の鎧の戦士か」すぺるん。
「ドラゴンだと……」国王。
「そんな……絶滅したはず……」大臣。
「……この期に及んで敵ではあるまいな……」国王。
「いえ、キャンディー軍を攻撃しているようです」大臣。
「
「……あの背にいる男……」大臣。
「あれは……太陽の鎧か」国王。
「……マモルか」大臣。
「そうだ、戦士マモルだ」ロクモンジ。
「まさか、生きておったとは」国王。
「ドラゴンの背に乗って戦う戦士。竜騎士……」大臣。
驚きを隠せないまま、目を輝かせて国王が叫ぶ。
「皆の者! 亡くなったと聞いていた戦士マモルは生きておるぞ! あのドラゴンの背に乗って戦っておるぞ!」国王。
「うおおおおおおおおおーーーー!!!」
ジャポニカン軍からものすごい歓声が上がった。
マモルは驚く侍たちに言う。
「俺はジャポニカン王国の戦士マモルだ。事情は知っている。ともに戦おう!」マモル。
侍たちはそれを聞いて、再び暴れ出す。火縄銃部隊が奥から出てきてゴンに向かって一斉射撃する。
「痛っ!」ゴン。
「全く効いてないぞ!」火縄銃兵士。
「わてに銃なんか効かへんで!」ゴン。
ハリーとかおりんを乗せたセサミンはゴンに近づく。
「おーい、ゴン!」ハリー。
「ん、何やあれ。変な乗り物やな。あっ、ハリーやんか」ゴン。
「あいつは、コニタンのパーティーの」マモル。
「ゴン! 水を吐いてくれ! 火縄銃を使えないようにするんだ!」ハリー。
「任せとき! いくでー」ゴン。
ブォォォォーーーーーーー!
広範囲に猛烈な勢いで水が放たれた。
「うわーーー!」兵士たち。
数十人の兵士が勢いで吹き飛ばされる。
かおりんも水流魔法で火縄銃を狙っていく。シタインは悪魔の力で火縄銃を腐らせていく。
「ゴン! もっと頼むぞ!」ハリー。
「もう腹の中の水なくなったわ」ゴン。
「マジで!?」ハリー。
マモルは背の上から戦い続ける。侍たちも馬上から戦い続ける。高い所からの攻撃で有利に戦闘が進んでいく。
「おい、セサミン、ぬいぐるみの姿に戻ってどれくらいの水を出せるんだ?」ハリー。
「一応は無限に出せる。けど、疲れたら休憩しないといけない」セサミン。
「そうか、じゃあ、あのドラゴンの腹の中に水を入れたいんだけど」ハリー。
「できるぞ。あいつの近くに水を飛ばせばいいんだろ」セサミン。
「じゃあ、頼む。師匠、降りて防御に徹しましょう」ハリー。
セサミンはゴマアザラシのぬいぐるみの姿に戻った。セサミンから降車したハリーとかおりんは鉄の盾で防御の体勢を取る。シタインはハリーのマントから出てくる。
「ハリー、ほんなら僕は、近くの火縄銃を腐らしてくるわ」シタイン。
「気をつけてな」ハリー。
「大丈夫やで」トコトコと歩いていくシタイン。
「おーい、ゴン! 水を出すから、補充してくれ!」ハリー。
セサミンは両手から水を出す。水は大きな塊の状態でゴンの近くで空中にふわりと浮かぶ。
「うわあ、水が浮かんでる、すごいな。この水をもらうんやな。あらよっと」ゴン。
ゴンはその水を飲んで、そして放つ。
ブォォォォーーーーーーー!
「セサミン、もっと頼むぞ」ハリー。
ゴンは水を吸って放つ。侍たちのいない奥の方目掛けて。
ブォォォォーーーーーーー!
ブォォォォーーーーーーー!
ブォォォォーーーーーーー!
ゴンが何度も放った水によって、キャンディー軍の火縄銃はほとんどが使い物にならなくなった。同時に数百名の兵士が戦闘不能になった。侍たちの近くの部隊の火縄銃は、シタインの力で腐って粉々になって消え去った。
「国王様、火縄銃はほとんど使用不可能になったようですな」大臣。
「そのようじゃな」国王。
戦況を見ていたすぺるんは立ち上がり、刀を持って敵陣へ突入していく。だが、倒れたキャンディー軍兵士の陰から火縄銃がすぺるんを狙っていた。
バキューン!
予期せぬ銃声に驚いてビクッと身が縮まるすぺるん。
「え? 俺、大丈夫か?」すぺるん。
すぺるんが右の方を見ると、ハリーが銃を抜いて火縄銃兵士を撃った後だった。
「筋肉バカ、また貸しが1増えたな。合計2だ」ハリー。
ババキューン!!
ハリーがカッコつけてると突然銃声がした。前方で火縄銃を構えてた二人の兵士が倒れる。ハリーもすぺるんも驚いて音のした方を向くと、そこにいたのはあの伝説の男だった。
「じゃあ、俺もお前らに貸しがができたな」
「師匠!」ハリー。
ハリーたちを救ったのは伝説のガンマン東森だった。
「ふーっ、危ねえとこだった」すぺるん。
「ちゃんと周りをよく見てから動け」ハリー。
「お前もだろ!」すぺるん。
「俺はお前を助けるために仕方なく動いたんだろ! 筋肉バカ!」ハリー。
若干反省しているような感じのすぺるん。
「火縄銃は、水に濡れただけで使えなくなるとは限らないぜ。火薬を湿らせたら、完全に使い物にならなくなる」東森。
「おお、そうなのか」すぺるん。
「ところで師匠、虎さんはどうしてるんですか?」ハリー。
「虎プーさんは、能楽町の高級宿に缶詰め状態だ。虹の都の治安部隊に取り囲まれてる」東森。
「それ、大丈夫なのか」すぺるん。
「マゲ髪と部下たちがいるから大丈夫だろう」東森。
前線へ向かうジャポニカン軍。
「報告します! 後方から何かが近づいて来ます!」兵士。
「何じゃと」大臣。
後ろを見ると、はるか遠くから数十名の人間が走ってくるのが見える。すごい速さで。そして陣営に追いついてきた。何と、北東の県のミャー族たちである。ゲソ長老も全速力で走ってきたようだ。
「これはゲソ殿」大臣。
「国王様、大臣様、報告がありますじゃ。古い書物の解読で重大な発見がありましたのですじゃ」全く疲れてない様子のゲソ。
「おお、そうですか」大臣。
「で、何が書かれていたのじゃ」国王。
「はい、グレタゴリラ歴1999年の年末に向けて、人間界と魔界との距離が近くなっていき、地獄の門が現れます。その門が開き、魔界から悪魔がやって来ます。ここまでは、前に申し上げた通りでございます」ゲソ。
「それで、新たにわかったことは何ですか?」大臣。
「はい。その地獄の門が現れる場所がわかりました。昔からの大都市、キョウトウ、つまり現在のジャポニカン王国の王宮から、まっすぐ西へ行った所にあるハルマキドンと呼ばれる教会だということですじゃ」ゲソ。
「ハルマキドン?」国王。
「そのような教会、知りませぬな」大臣。
「王宮からまっすぐ西じゃと?」国王。
「……国王様、ひょっとして、ボッチデス湖の小島にある大陸最古と言われる教会のことでは?」大臣。
「うむ、その教会、キヌガケドンと地元で呼ばれていたそうじゃが」国王。
「音の響きが何となく合っているような……おそらく、そこでしょう」大臣。
「うむ」国王。
「それと、“ゴールデンキモイ” の称号を持つ者は悪魔と戦うことができます。ですが、悪魔に止めを刺せるのは、黒刀真剣のみだそうですじゃ」ゲソ。
「……となると、黒刀真剣の使い手がいなければ、何ともなりませんな」大臣。
「……うむ」国王。
「ここに、黒刀真剣を持って参りました。わしらが持っていてもどうもなりませんので、どうぞ預かって下され」ゲソ。
長老の付き添いの者たちが布に包まれた刀を国王に渡す。
「しかと受け取った」国王。
ジャポニカン軍はすでに前線に来ていた。そして敵陣へ突撃していく。
「戦闘不能にすればよい! 無駄に殺してはならん! よいな!」国王。
このとき、時刻はちょうど正午、すでに侍たちは2千人が倒れ、キャンディー軍も2千人が倒れていた。ジャポニカン王国と火の丘王国連合軍は1万千人。虹の軍とキャンディー軍は残り1万5千人。
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