第22話 トレーニング・デイ

 さて、一行は歩く。デカン湖のほとりを西へ歩く。火の丘王国と風の谷を目指して歩く。すると突然、巨大なイモムシのモンスターが5体現れた。戦闘開始だ。

 すぺるんはガントレットを装備してモンスターへ突進する。しかし、「待て、筋肉バカ! 俺が指示を出す」とハリーが止める。金さんは右肩を出し、チョップを出す用意をしている。コニタンはしゃがんで震えている。ハリーが「筋肉バカは一番左、金さんは真ん中辺りを攻撃だ!」と攻撃命令。すぺるんと金さんはモンスターに肉弾戦を仕掛ける。その少し後ろで、かおりんは魔法を唱える。水流が右側のモンスター2体を巻き込んで木にぶつける。ここまでで、モンスターは4体が倒された。ハリーが「筋肉バカ! そこで3回まわってワンと言え!」と命令する。「えっ? 何だって?」戸惑うすぺるん。そのすぺるんに後ろから近づく残りの1体のイモムシのモンスター。しかし、金さんがそいつをチョップを連発して倒す。戦闘終了だ。

「おい、ハリー、訳の分からんこと言うな! 俺はモンスターに攻撃されるとこだっただろが!」すぺるん。

「そうですよ、ハリーさん」かおりん。

「ちゃんと金さんが助けてくれただろ」ハリー。

「金さんがいなかったら、俺は攻撃を受けてたんだぞ!」すぺるん。

「金さんがいなかったら、だろ? 俺は金さんがいたから、お前に命令を出した」ハリー。

「はあ?」すぺるん。

「もし、金さんがお前を助けなかったら、コニタンが助けかもしれない」ハリー。

「ないない」首を振るすぺるん。

「ないない」首を振るかおりん。

「あっ、ないか。もし金さんが助けなかったら、シタインかセサミンがお前を助けたかもしれない」ハリー。

「ないわ、ハリー。僕はハリーの命令があったら助けたけどな」シタイン。

「俺もないな。契約上、あるじの命令があれば動くことになってるからな」セサミン。

「なるほど、もしシタインもセサミンも助けなかったら、俺がお前を助けた」ハリー。

「何だそれ」すぺるん。

「助け合うのがパーティーだ。俺はみんなを試しただけだ」ハリー。

「何だって?」すぺるん。

「危険です、ハリーさん。実戦で試すなんて」かおりん。

「師匠、実戦でなければ試す時がありません」ハリー。

「そうかもしれやせんが、やり過ぎたんじゃないですかい?」金さん。

「いや、そんなことはない。おい、筋肉バカ、お前が背中に背負ってるのは何だ?」ハリー。

「え? ああ、フライパンだ」すぺるん。

「もしイモムシのモンスターに後ろから攻撃されても、そのフライパンがお前を守ったはずだ」ハリー。

「いや、そうかもしれんが、んなアホな」すぺるん。

「うーん、そう考えると、危険ではなかったかもですね」かおりん。

「攻撃手段は多いほうがいいと言っただろ。なのに、まだそのフライパンを使っていない」ハリー。

「おう、ああ、そうだな」すぺるん。

「なんかいまいちよくわからない理論でかわされたような気が……」かおりん。

「ひいいいいいいい!」

「うるさい!」すぺるんはフライパンでコニタンを叩いた。

「痛いいいいいいい!」泣きだすコニタン。

「ちょっと、すぺるんさん、やり過ぎです」かおりん。

「すまねえ」すぺるん。

「そうだ、やり過ぎだ!」ハリー。

「お前が言うな!」すぺるん。

 相変わらずおバカな一行だ。このコニタンのパーティーの中でおそらく一番真面目なのは、金さんかもしれない。その金さんが提言する。

「どうです、おめえさん方。前やったみたいに、モンスターと戦って、経験を積みやせんか?」金さん。

「おう、そうだな」すぺるん。

「そうですね、色々なことを試しておくべきですしね」かおりん。

「師匠、その通りですが、任務がありますから、先に進みながらやりましょう」ハリー。

「そうですね」かおりん。

「ひいいいいいいい!」

「うるさい! お前も戦って役に立て!」殴るすぺるん。


 とりあえず、一行はデカン湖のほとりを歩く。歩く。すると、当然のごとく、モンスターと遭遇。六本足のキツネのモンスターが10体出現した。戦闘開始だ。

 すぺるんと金さんが前に出て、ハリーとかおりんとコニタンが二人の後ろで構える。「俺と師匠が遠距離攻撃をするから、前は任せたぞ」とハリー。すぺるんはフライパンでキツネのモンスターを殴る。金さんはチョップを繰り出す。キツネのモンスターは素早い動きで一行を翻弄する。二人は数匹に囲まれながら攻撃をする。フライパンの攻撃を三回受けて1体が倒れた。金さんのチョップを10回ほど受けて、1体が倒れた。ハリーは野球のボールをたくさん取り出して投げつける。キツネのモンスターは素早い動きでボールを避けるが、糸が付けられたボールはすぐにモンスターの方へ戻ってくる。ボールがキツネにヒット! ボールは割れて中からレモン汁が大量に飛び散る。数体のキツネが目を開けられない状態になる。ハリーはボールを投げ続ける。同じことが起こり、混乱状態のキツネたち。そこへかおりんの水流魔法が命中する。水流は4体のキツネを空高く巻き上げ、地面に叩き落とす。すぺるんも金さんも1体ずつ倒し、残るは2体。ハリーは熊手を取り出して攻撃する。攻撃範囲が広い熊手は簡単にキツネを捕らえて倒す。かおりんは向かって来るキツネに対して弓を構えて、深呼吸してから矢を放つ。見事に命中。戦闘終了だ。

「おう、中々上手くいったんじゃねえか」すぺるん。

「かもしれないですね。でもケガが」かおりん。

 すぺるんも金さんも傷を負っている。ひっかき傷や打撲だ。

「回復魔法!」かおりん。

 二人の傷は回復する。

「今までの戦闘の中で、最も理想的な戦い方ができたかもな」ハリー。

 一行は歩く。そして村にたどり着いた。そこで宿に泊まる。


 コケコッコー!

 一行は歩く。すでにデカン湖を通過して、土の里王国に近づいていた。モンスターと遭遇。

 戦闘開始。効果的な戦いでモンスターを倒す一行。戦闘終了。

 街に到着。宿で一泊。


 そういうことを繰り返し、繰り返し……。


 一行は、前の冒険で立ち寄った土の里王国の最大都市タカツチへ到着した。

「さてと、教会へ行って、レベルアップの確認をしてもらいましょう」かおりん。

「この街には寺はないのか?」すぺるん。

「教会でいいだろ、贅沢言うな」ハリー。

「ふん!」すぺるん。

 一行は教会へ足を運ぶ。

「ちょい待って!」シタイン。

「俺ら、この中へは入れない」セサミン。

「えっ、シタイン、そうなのか?」ハリー。

「そりゃ、悪魔ですからね」かおりん。

「じゃあ、外で待っててくれ」ハリー。

「おい、目立つんじゃねえか、腐った犬と、手足のあるアザラシのぬいぐるみだぞ」すぺるん。

「腐った犬って言うな!」シタイン。

「大丈夫だ、マントを羽織ってればいい」マントを被せるハリー。

 一行は教会の中へ入る。戦闘記録を神父に渡して、待つこと30分。

 パッパカパッパッパーーン♪

 ラッパの音が鳴り響き、一行は神父から成績通知を受け取った。


 ★コニタンはレベルが1上がった

  叫び声の大きさが 30上がった


「ひいいいいいい!」

「やかましい!」殴るすぺるん。


 ★すぺるんはレベルが12上がった

  腕力が  20上がった

  俊敏さが 15上がった

  エロさが 20上がった

  体力が  30上がった

  汚れ度が 10上がった


「やっぱエロさが上がってるし、ついでに汚れ度が上がってる、あっはっはっ!」爆笑するハリー。


 ★ハリーはレベルが12上がった

  器用さが 15上がった

  俊敏さが 20上がった

  体力が  25上がった

  汚れ度が 15上がった


「貴様も汚れ度が上がっとるだろが! しかも俺よりも上がっとるわい!」すぺるん。

「……え……」ハリー。


 ★金はレベルが10上がった

  腕力が        20上がった

  俊敏さが       10上がった

  頭の良さが      20上がった

  金遣いの荒さが    15上がった

  ギャンブル依存症度が 30上がった


「金遣いの荒さとギャンブル依存症度って、そんなん上がるな!」すぺるん。

「お金を預けてはいけませんね……」かおりん。

「てやんでえ」金さん。


 ★かおりんはレベルが10上がった

  俊敏さが     15上がった

  頭の良さが    20上がった

  魔力が       2上がった

  マジックパワーが 10上がった


「やっぱり魔力は上がりにくいですね」かおりん。

「いえ、師匠、さすがです」ハリー。

「コニタン、お前、またレベルが1しか上がってねえぞ!」すぺるん。

「ひいいいいいい!」

「声がでかい!」殴るすぺるん。

「何も戦闘してないから仕方ないですね」かおりん。

「私は、ビクビクしたり叫んでいただけでレベルが上がることがすごいと思います」ハリー。

「言われてみりゃ、そうだな」すぺるん。

「今回のレベル上げは、先を急ぎながらしたから、前回よりも上がらなかったな」ハリー。

「仕方ありませんよ。さあ、冒険を続けましょ」かおりん。

「待てよ、まずは宿で疲れを癒してからだろ」すぺるん。

「お前はナンパ行きたいんだろ」ハリー。

「あっしはカジノへ――」金さん。

「ダメです! ナンパもカジノも!」かおりん。


 一行は宿で一泊して、火の丘王国と風の谷を目指して歩く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る