第5話

「髪の毛にかけるとか最低」


 わたし、桜木彩花はぷーっと頬を膨らませて三年生の衛宮高貴を睨む。


「へへ。悪い悪い」とわたしの髪についた体液をトイレットペーパーで拭く先輩。

「生って直接熱いのを感じて気持ちよかったので許しますけど」

「そりゃどーも。あ、そうだ、帰りにパンケーキでも奢ってやるからそれでチャラでどうだ?」


 わたしは頬を赤く染めて。


「ま、まあそれなら……」


 甘いのには目がないのだ。

 仕方がないこと。

 そう、彼氏ではない人とこういうのをやるのも同じだ。

 気持ちいいことには目がないのだ。

 一人でするよりもずーっと気持ちいいのだ。


「しっかり取ってください。あとは香水で誤魔化すので」

「へいへい」


 はあ、いつかシンタローともヤれる日が来るのだろうか。

 来てほしい、そう心の中で願った。




「先輩、やっぱりわたしってやばいことしてますよね?」

「んあ〜そうか?」


 パンケーキ屋へと向かう途中、わたしは先輩にそう問いかける。


 わかっている、仕方がないことだとしてもやっていることが最低なことぐらい。

 シンタローがはやくわたしと犯してくれれば全てが終わるのに。

 シンタローは少し臆病だ。

 だからまだそれは遠い未来になりそうだ。


 絶対大好きなシンタローとヤる日が来たらただでさえ気持ちいいのにもっととか死ぬかもしれないなあ。


「はい」

「俺はそうは思わんよ。だってよお? 人間の三大欲求の一つなんだぜ。例えばよお、食欲で考えるとお前はいろんな料理に浮気してんじゃん? 食欲を抑えるために浮気してんじゃん。睡眠だってよお、色んなところで寝て浮気してんじゃん。何も悪いことじゃねえよ、現に俺だって彼女がいるのにお前とシてんだしよ」


 言い返せなかった。

 性欲に関しては浮気は違うでしょ、なんて言えなかった。


 わたしは苦笑いで。


「そ、そうですよね!」

「ああ、だからよ」と先輩はわたしのお尻を握る。

「ちょっと先輩!?」

「大丈夫、誰も見てねえからよ。お前の尻と胸は弥美よりサイコー、まあ顔は弥美がタイプだけどな!」

「まあ、わたしも先輩よりシンタローの方がタイプだから何も言えないんですけど……」

「ククク、まあお前とはこれからも同志だと思ってるからよ」

「はい、先輩!」


 先輩とわたしは気が合うのだ。

 身体の相性というべきか。

 とにかく、先輩のおかげでわたしの三代欲求の一つは満たされている。

 これからもずっとそうなるのは嫌だ、いつかシンタローとそんな関係を築きあげたい。



「じゃあな、気をつけて帰れよ」

「はい、先輩」


 俺は桜木と別れた後、一人ポケットに手を入れて歩く。


『タカキー明日暇?』


 彼女の弥美からだ。

 

『ん、暇だけど?』

『やったー! じゃあ明日はデートね』

『楽しみだわ』


 はあ……最近は桜木にも飽きてきたな。

 そろそろ乗り換えの時期か。

 何せ俺が使いすぎてガバガバになってしまったからな。

 

 スマホで写真アプリを開き、一枚の写真を見る。


「くう〜かわいい」


 そこに映るのは黒瀬麗奈。

 清楚な見た目割に身体付きがよく絶対気持ちいいこと間違いなし!


「なんとかしてこの子ときっかけを作ってそのままヤりてえや」


 ボソリとそう呟いてしまった。


 やっべ、勃ってきたわ。

 ああ、我慢我慢。

 明日の弥美とまで我慢だ。

 黒瀬とシてえなあ〜!


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