第3話

「本当に慎太郎くんは初めてなんだよね?」と下着を脱ぐ黒瀬さん。

「そういう黒瀬さんは」

「初めてに決まってるじゃん。初めては好きな人とでしょ?」


 本当はこんなのダメだってわかっている。

 いくら彩花がそうだったとしてもこんなのダメだって。

 俺はおかしい、彩花に裏切られたのにまだ彩花を好きだという思い出いっぱいだ。

 でも、学年一の美少女と名高い、あの黒瀬麗奈とヤれるんだ。

 どこにヤらないなんて選択肢があるのだ。

 それが仮に初めてだとしても、黒瀬麗奈なら俺は嬉しいと思ってしまう。


 ……うわ、俺って最低だな。


 先ほどまでの絶望は黒瀬さんの一言で消えていた。

 むしろ黒瀬さんとヤれる機会をくれたことに感謝している。


 完全におかしいよ俺は。


「ゴム、私にハメさせてもらってもいいかな?」

「はい……」


 黒瀬さんはスクールバッグから一つ、避妊具を取り出す。


 けれど俺が黒瀬さんとヤってしまったら彩花とやっていることが同じになってしまう。


 葛藤が頭の中で暴れまくる。


 ……。

 あ、まあいっか。


 でた答えは簡単だった。


 浮気なんてしてもバレるはずないじゃん。


 こんな機会もうないかもしれないんだし、楽しむとしよう。


「じゃあ、ヤる前にいい?」と裸姿の黒瀬さんはベッドの上で正座をして言う。

「?」

「もうヤったら浮気成立。まあ彩花って人と別れるまではキープでいいからさ?」


 幸せだ、まだ彩花を好きでいていいだなんて。

 それなのに黒瀬さんと浮気できるなんて。


「でも、一つ約束ね。性欲がたまったら自分じゃなくて私で満たしてもらうこと!」


 先ほどまで落ち込んでいた自分が馬鹿馬鹿しい。

 好きな人とのセックスはセックスに入らないんだ。


「はい……!」


 こんなの間違っているってわかっている、でもこうすることでしか今の俺が生きることができないんだ。


「よし、じゃあヤろっか!」




 シングルベッドに二人はとても窮屈だが黒瀬さんと身体がくっついているため体温を直接感じることができる。

 シーツは黒瀬さんの血で一部真っ赤に染まっている。


「痛かった……?」

「うん、めちゃくちゃ痛かった!」


 そういう彼女の目は真っ赤に腫れている。

 俺はというととんでもなく気持ちがよかった。

 ただ、イタイイタイ、と喘ぐ黒瀬さんに罪悪感があった。


「ごめん……」

「別に謝るようなのじゃないよ、こればかりは仕方ないし。ヤるまえのキスと身体舐めるやつが気持ちよかったなあ〜」

「やめてくれ、恥ずかしい」

「でも、これを好きじゃない人とヤるって考えられないなあ。うん、考えられない!」


 身体が疲れてだるい。

 明日は幸い土曜日だ。


「……あの、黒瀬さん?」

「?」


 窓から外を見るが雨が止む気配がない、むしろ強くなっている気がする。

 それに身体がだるいのだ。


「今日は泊まってっていいかな?」

「……!?」


 すると、黒瀬さんは目を大きく開けて綺麗な瞳で俺を見ていった。


「ほんと!?」

「迷惑かな」

「ううん、むしろ嬉しいよ!」


 正直言うと他にも理由があるのだ。


「だから、ひとつお願いが……」

「ん?」


 今日は二回も出しているというのにまだ収まってくれない。


「……その、恥ずかしいんだけどさもう一回とか……ないですかね?」と頬真っ赤に染めて掻きながら言う。

「無理、アソコ痛いもん!」


 即答だった。


「だ、か、ら」


 黒瀬さんは口を開けて、人差し指で自身の指をさす。


「口でいいかな?」

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