二章

第1話「明日からアイツらイジメよっかー」

『おまえら化粧取ってみろ! ブ、ブスが・別人が!』

『黒川さん、ごめんなさ~い……』


 あー、ムカつく。転校生はトーゼン、おばさんもドーゼン。アンタに謝られる筋合いないし。

 アタシ黒川萌々奈ー。超かわいいセクシーギャルでさー、身長160ー・オッパイGー。マナが言うにはおばさん結構あるっぽいじゃん、けどさー、アタシのがゼッタイそれ以上ある。顔はちっちゃくて肌の色はミルクチョコでー、髪は肩過ぎ・キレーすぎ茶金髪セミロングー。目ぇおっきくて目尻・眉尻クって上がっててー、よく怖いって・怒ってるって言われるわー。

 まー今はホントにキレててイライラ顔ー。右横のケイ・左横のミナが話しかけてくるー。


「モモナ怖くね・暗くね? なんかあった系?」

「あんたそれ聞く? わかるっしょ、生理っしょ」

「はい、ミナのがデリカシーなーい」


 下腹めがけてチョップかます。この子、青山未那。超かっこいいクールビューティーギャル。すらっと背ぇ高くてー・脚長くてー、茶髪ショートも青リップもクっソ似合ってイケてるー。


「べつになんもないからー・暗くないからー」

「んじゃ次、俺とデュエット系」


 なに歌うか曲探しだす。コイツ、後藤啓。腕・首・耳ってシルバーじゃらじゃらのチャラ男。長身だけどヒョロヒョロで切れ長の目ぇしててー、爬虫類系の顔してるド金髪ロン毛マーン。

 今日は学校から直でみんなでカラオケ来てるー。週2で・5人でどっか遊び行くー。

 残りふたりさっきから一緒になんか歌ってるー。


「あいーすぅ、ことーがぁ、カち(?)だなんてぇ、しーらなかったぁ」


 甘ったるい声・顔で媚びっ媚び。あの子、赤崎茉那。超あざといヒールキューティーギャル。アタシと逆で肌はホワイトチョコでー、背も鼻も低くてロリロリでー、ゆるふわ茶髪ボブー。


「いや、こうだろ。あーいすぅ、こーとがぁ、カち(?)だなーんてぇ、しらなかーったぁ」


 もっかいきたサビっぽいのヘタクソ歌う。アイツカレシ、前田修。白っぽいさらさら金短髪。みんな大好きあっさり塩顔・浅黒細マッチョでー、どこでも胸揉んでくるドヘンタイケメーン。

 マナシュウやっと歌い終わった。どっちもヘタすぎー。


「ねー、今のなにー? サビからなにから聞いたことないんだけどー」

「あはは、マナもシュウもわかんなぁい。ぜんぜん知らないのかけてみたぁ・歌ってみたぁ」


 あー、それで節とか未知かー・音痴かー。


「で、それなんて曲ー・誰の曲ー?」

「誰か知らねーけど『愛すことが過ちだなんて知らなかった』だとよ。カちってなんだよ!」


 シュウが答えた・ツッコんだ。バーカ、『カち』なわけないじゃーん。……スちー?


「ほらよ萌々奈」


 マイク渡してくる・胸揉んでくる。正直イヤ――じゃない、うれしい。しかも人前ほど……。


「おまえらもランダムやってみろ。んだよこの曲・歌詞ってなっておもしれーぞ」


 ってことでケイがテキトーに選んだ。


『雨漏りしおりん/天森栞』


「ぷっ!」


 なんだよ・誰だよってみんな大爆笑! カ、カラオケにゴミ入れんなってキっツー……!

 ダっサイっタいタイトルから予想どおり、ブリブリの・ゴリゴリのアイドルソング流れだす。


「ないないないない・ムリムリムリムリ! マナー!」

「なんでマナぁ? 代わんないよぉ」


 アンタこういうのヨユーでイケるじゃん! このアバズレまなりん!


「モモナ一緒に歌う系。今日もぽたぽた、しおりん雨漏り~ん」


 アンタもこのアイドルもこんなのよく歌えるわ!

 ヤケクソで一応歌ってやった。サビがヒドい・ハズい……。


「ぽとぽと、ぴちゃぴちゃ、とぽんとぽん……私の心は穴だらけ……君の想いがしたたるの」


 ……なのにゆったり・しっとり歌いやすかった。元知らないから合ってるかわかんないけど。

 アタシ交代・ケイ継続、オトコふたりで歌いだす。


「でさぁ、黒光りももりぃん」

「く、黒光りももりん……!」


 ミナ、バカウケ。アンタも名づけてあげよっか? 青唇みなりん。


「マナまだ転校生ゆるせないしぃ、あれにひっついてるおばさんもほんとうざぁい」

「わかるわかる、あれ完全にセンセンフコク(?)っしょ。このままなんもなしってなくない?」

「あったりまえじゃーん・わかってんじゃーん。さっすが親友ー・悪友ー」


 三人でグラスかーんって乾杯する。

 シュウケイがなんか暑苦しいの歌ってる横で、すずしー・おいしーメロンソーダ飲む。

 暴言吐いた転校生はタダじゃおかないし、大嫌いなおばさんも容赦しない。

 1学期、シュウはアタシより好きなオンナいた。アタシより狙っててアタシより声かけてて、夏休み前、7月上旬にコクったんだって。けどさー、24って聞いて引いたー・ビビったーって。で、おばさんの次に惚れてたアタシにきたってわけ。だから大嫌い。24で高校来んなっつーの。

 ある意味転校生のおかげで理由できた。シュウが目移りするかもしれないおばさん攻撃の。


「マナー・ミナー。明日からアイツらイジメよっかー」


        ◎

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