空っぽな学生
えのき
1
学校なんてうんざりだ。
やりたくない事ばかりを求められ、結果が出せなければ責められる。長所などあまり関係なく、ただ総合力ばかり追求させられる。
俺はもっと興味のあることばかりをやっていたいだけなんだ。どうせ、社会に出ても求められるのは一部のことだけだ。
小学生の時、どうしてこんな勉強しないといけないんだと思ったことが多々あった。しかし、その疑問は高校生になった今でも俺に付き纏う。
古語を覚えて何になる?
微分して何が生まれる?
有機物がどうした?
アウストラロピテクス……?
ただ言いなりになってペンを持つのはもう疲れた。二週間程度しかない夏休みで自分のやりたいことをやろうにも、目の前にあるのはテキストの山。
そもそも、朝も授業中も起きれない俺は、学校に行くこと自体がつらいんだ。だが、行かなければ不適合者として扱われる。
俺は学生という操り人形。
朝早く起こされ、酸っぱい匂いのする湿った電車に乗り、おぼつかない足取りで学校へ行き、教室のドアをくぐるとすぐに笑顔を浮かべる。
休み時間は寝たいのに友人と雑談をして、終礼テストの勉強をして、授業中は子守唄ばりに眠くなるありがたい授業をうける。
これを何度も何度も何度も何度も繰り返すだけの簡単なサイクル、それが学校。
しんどくても、つらくても、このサイクルさえ繰り返してしまえば、普通の人間として生きていける。
まわせ、まわせ、まわせ。
何も言わずにただ従え。そうやって教え込まれてきただろう?
気付かぬうちに、俺の体をストレスが内側からじわじわと蝕んでいく。次第に、俺の中が空っぽになっていった。空洞になった体は瓦解して、ひび割れた部分から風化する。天へと消えゆく粒子は、ただ闇へと飲み込まれる。
もう、そこに俺はいない。
空っぽな学生 えのき @enokinok0
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます