第19話 見切り発車のファンタジー小説がいつの間にか恋愛ものになってた件

「アル!やっと会えましたわ。」

「ベレッタ。ここは戦場だったんだ。来ないで欲しかったが、、、。」

彼女は幼馴染兼婚約者だ。貧乏に喘いでいた時にも彼女だけは良くしてくれた。そんな彼女を守るために鍛え続けたが心配をかけてしまうとは、情けない。

「わたくしだって多少戦えますわ。それに共鳴魔法を使えばアルの魔法の効果を受け取れますし。」

「それでもだよ。」

共鳴魔法は共鳴相手との相性の良さでどこまで魔法を行使できるか変わってくる。幸い私との相性はとても良くほぼ100%の出力で創造魔法が使えるが、それは同時にその出力の力をコントロールしなければならない事を意味する。暴発した時のことなど考えたくもない。自分でさえ腕の一本を失う事態に陥ったのだから。

「でも、心配してくれてありがとう。愛してるよ。」

「!はい!わたくしもですわ。」

その笑顔をみて決心した。魔王を倒して全てが片付いたら彼女にプロポーズしようと。


仕事を抜け出して、ベンチに座る。もう何度目かもわからない位には抜け出していた。

「はあ、今日も仕事は疲れるな。」

読心魔法を使う関係上人間の醜さをまざまざと見せつけられる。情けない話22歳にもなって婚約者の一人もいたことがないのもそのせいだ。家族が癒しだったが、それもいつまでもは続かないとリストデルとシルレーナを見て思った。いや、正しくは形が変わると言うべきだが。

「こんな昼間からどうしたらのよ。」

ふと横を見ると銀髪金眼の美女が立っていた。

「うわァ!、、、、、え?」

驚きのあまり魔法を使ってしまったが何も読めなかった。

「覗き?いい趣味してるわ。」

「すみません。驚いたもので。私はアステルト・フィルハーリと申します。貴女は何者ですか?」

「私?私は魔女のカレアよ。」

「そうですか。」

仕事なら事情を聴かなければいけないが、あいにく今は抜け出している。なにも問題は無い。それに超常の存在を刺激するのも良くないのだ。

「あら?反応が薄くてつまらないわね。」

「そうですかね?これでもとても吃驚していますよ。それより、どうして私に?」

「神様がここにいる青年を助けてあげろって言った気がしたのよ。ほら私って超常の存在だからそういうの感じるのよね。」

「自分で言いますか?」

「事実だしね。それより貴方よ。何か悩んでいるのでしょう?」

悩みというか日々への鬱憤だが、解消された気がした。心が読めないからこそ、その優しさに没頭できるのだ。例え表面上のものだとしてもとても心地好く感じた。

「いえ、悩みは解消されました。ありがとうございます。」

「そう。ならいいのだけれど。じゃあ私はこれで。」

そう言い去っていく後ろ姿を見ると

「また、合えますか?」

そんな言葉が口をついて出た。

彼女は振り返り

「会えるかもしれないわね。」

と言い今度こそ行ってしまった。


本来お助けキャラのカレアが助けるはずだったのは、キーアイテムを(誰かに)奪われて困っている勇者アルロードであるが何の因果か、困っているばずの勇者は存在していなかった。むしろ当の勇者は魔王戦を前に幸せな妄想を膨らませているのだから呑気なものである。


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ここまで読んで下さり、ありがとうございます。






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